レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018.3.11
- 登録日時
- 2018/03/11 16:06
- 更新日時
- 2022/05/19 09:52
- 管理番号
- 00077
- 質問
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解決
東広島の婚礼に関する習俗について、「嫁いじめ」のような習俗の記録はありませんか?
- 回答
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・「広島県川上村史」(第5編:生活と文化)より一部抜粋
婚礼の夜、その式が行われている頃、部落の青年は石地蔵をかついで来てその家にわからぬよう縁に据える。これは石地蔵のようにどっかと腰を据えよと言う善意のもので、いたづらばかりとは言えないが、それでも青年には結婚した日頃の友人が、翌る朝この石地蔵を見て困るさまが愉快であるし、また、家にはこれを早く気がつくと祝って来た青年に酒を出すから、これが一つは目的でもある。酒を出されると石地蔵を元の場所へもどすのは青年の役割であるが、家にうっかりしていると朝処置に困るのである。
石地蔵も近くのものならよいが、遠くから持って来るからである。しかし、今はあまりやらない。
・「お年よりの伝承集 平岩の知恵」(嫁入りと地蔵様)より一部抜粋
昔は結婚式はほとんど婿家でおこなっていました。
嫁いできた翌朝は、庭にたくさんのお地蔵様が置いてあり驚きました。
地域の若者衆が「お地蔵様のように腰を据えてつらいことがあっても我慢して、実家に
戻らぬように」と願いを込めて、あちこちから運んできたものでした。
置かれたお地蔵様は、元の場所に戻さなければなりませんが、どこのお地蔵様か分かりませんので、若い男衆に酒を持っていき、場所を聞かなければなりません。
酒が飲める口実にもなるのでしょうが、おおらかなよき時代の風習でした。
・「広島県民俗資料5 冠婚葬祭と家の問題」(その4嫁入り婚の諸儀礼)より一部抜粋
式の始まるまで―全県に知られているのは石地蔵類の重い物のかつぎ込みの風である。
(中略)高屋町造賀では軒先(中略)翌日その地蔵に新しい赤いよだれかけを着せて返さねばならぬ。
・「志和町史」(結婚)より一部抜粋
終戦前頃までは婚礼の夜、土地の若者などが道辻に集まって大火を炊き、新婦の顔をのぞいたり、石地蔵を婚家に持っていって椽に据え(これは石地蔵のようにどんと腰を据えよという善意のもの)たり、藁で菜をくわえさせた犬(イヌナの意)を作って宴席に入れたり、蛙を婚礼の席上に投げ込んだり(これはカエルの意で悪意)するなどの悪風習もあったが今は全くない。
・「賀茂郡志」(風俗―婚姻)より一部抜粋
因に往時は婚禮の夜土地の靑年輩路頭に集りて新婦の面を覗き或は石地蔵を門前に据
え(元は良縁の固結を祈る意に出づ)蛙を婚礼の席上に投ず(歸るの義を示す)る等の
悪戯をなす風習存せしも今は絶えて是の如き蠻風なく宴席に於ては祝詞演説萬歳乾杯
等をなす者あるに至れり、
・「豊栄町史」(第3章:豊栄の民俗)より一部抜粋
披露宴―(中略)以前は、祝言がある晩には、若い衆が竹筒の「ほらがい」を吹いて、花
嫁さんの到着を知らせ、披露宴たけなわの頃には、石地蔵を縁側に並べたり、肥担(こえた)桶(ご)を
天秤棒で擦って、音を立てたり、犬に菜っ葉を結えつけて座敷に追い込んだりといろい
ろ乱暴に祝う風習があった。それに対して当家では、酒一升と酒の肴を用意して振舞う
しきたりであった。
・「黒瀬町史」より一部抜粋
(結婚式のときの風習)
「よそは、よう『地蔵さんかついでくる』とかどうとかいう話が出ましょう。
ここら辺は、その代わりに火を焚く。嫁さんもらう家は、火を焚くだけの薪を
用意しとらんにゃあいけんのよ。」
(中略)
この話のなかにもあるように他の地区では結婚式のときに若い者が地蔵をかつい
でその家に置いたなどのことが言われる。
かなり後のことになるが、保田地区の網川実歳さん(昭和28年3月14日生)も
それを経験している。かなり後年まで残った風習であったのである。
(結婚式と地藏さん)
「私らが小学校の低学年のときに、地藏さんのところに再三行ったというのは憶
えとるんですよ。それでも私の友達が結婚したときにね、前から風習でもあるんですよ。
結婚式に地藏さんを持って行ったら、嫁は帰らんとかね。私らの友達が結婚式を2回やったんですが、
その時は持って行ったことがあるんですがね。もう14~15年も経っとらんでしょう。
昔は道路がなかったけえ、大変だったんですよ。それで同級の者2人が取りに行ったんですがね、大変じゃったです。
- 回答プロセス
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東広島の冠婚葬祭に関する昔の習慣について、検索。
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
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川上村(広島県賀茂郡)/編 , 川上村. 年表西条盆地 : 広島県川上村史抜刷. 飯田米秋, 1960.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I074686654-00 -
志和町史編纂委員会編纂 , 志和町史編纂委員会(広島県). 志和町史. 広島県賀茂郡志和町, 1970.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I007335005-00 -
賀茂郡私立教育会 編纂 , 賀茂郡私立教育会. 賀茂郡志. 臨川書店, 1985. (広島県郷土誌叢刊)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001785621-00 , ISBN 4653013144 -
東広島市豊栄町史編さん委員会, 東広島市教育委員会 編 , 東広島市 , 東広島市教育委員会. 豊栄町史 通史編. 東広島市, 2008.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010439219-00 -
黒瀬町史編さん委員会 編 , 東広島市. 黒瀬町史 通史編. 広島県東広島市, 2008.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010439194-00 -
[平岩まちづくり協議会 編] , 平岩まちづくり協議会. 平岩の知恵 : お年よりの伝承集. 平岩まちづくり協議会, 2001.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I074238065-00 -
村岡浅夫編 , 村岡, 浅夫. 冠婚葬祭と家の問題. ひろしま・みんぞくの会, 1972. (広島県民俗資料 / 村岡浅夫編, 5 . 生活と民俗||セイカツ ト ミンゾク ; 2)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I004370709-00
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川上村(広島県賀茂郡)/編 , 川上村. 年表西条盆地 : 広島県川上村史抜刷. 飯田米秋, 1960.
- キーワード
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- 東広島
- 婚礼
- 石地蔵
- 嫁いじめ
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 団体
- 登録番号
- 1000232411