レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年06月26日
- 登録日時
- 2023/01/24 15:17
- 更新日時
- 2023/07/10 18:51
- 管理番号
- ASN2020-34
- 質問
-
解決
日本において、設計図や表など、図的情報を複製するために、青写真(サイアノタイプ)、青焼き(ジアゾ複写)など安価・小ロット用途の複写技術は、どのように導入、普及し、使われ方が変遷してきたか。
【全体の問いの概要】
歴史的(特に明治維新からゼロックスコピーの普及以前までの期間)に、日本において、資料保存や公文書管理のために、「アナログ的な複製技術」がいつ頃どのように導入され活用されてきたのかを知りたい。
【関連質問】
ASN2020-31 https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000327783
ASN2020-32 https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000327790
ASN2020-33 https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000327791
ASN2020-35 https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000327852
ASN2020-36 https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000327903
ASN2020-37 https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000328000
- 回答
-
安価・小ロット用途の複写技術の変遷の概要については、主に次の資料で確認できます。
【★5】『アーカイブ事典』
その他、論文などでも関連する情報を確認できました。
詳細は回答プロセスを参照ください。
- 回答プロセス
-
1. 図書から探す
1-1.OPAC検索 <キーワード:印刷、建築△じてん など>、分類749(印刷)の棚をブラウジング
次の資料では確認できなかった。
『印刷機械と印刷製品』(小矢野皓夫著 印刷朝陽会 2005.7 749/KO97)
『文化財の現在過去・未来』(彬子女王編 宮帯出版社 2013.7 7091/A34)
『文化財アーカイブの現場 : 前夜と現在、そのゆくえ』(福森大二郎著 勉誠出版 2010.4 709/F77)
『建築実務大事典』(エクスナレッジ 2011.3 520/KE4113)
『図解建築・大工用語ノート』(佐藤守男著 井上書院 2011.8 520/S85)
など
2. 論文・雑誌記事から探す
2-1.CiNii Articles https://ci.nii.ac.jp/ ※2022年4月~CiNii Researchに移行
<キーワード:複写技術、ジアゾ複写、図面△保存、ガリ版、設計図△複写 など>
【★1】松田 泰典,小谷 尚子 "写真と文化財の関わり(その3)感光性物質を用いた複写図面・文字資料
の現状と保存について" [PDF]
・シアノタイプは、明治中期あたりから戦前まで図面の複写に用いられていた。シアノタイプに
代わり普及したジアゾタイプは、図面の他、文書等の複写にも多く使われ、現在も減ってはい
るが利用が続いている。
・シアノタイプは、日本では明治時代には利用されていた。初期では感光剤を刷毛で紙に塗布す
るところから行っていたようである。後に、シアノタイプの印画紙の発売や印刷機の生産が行
われた。
・ジアゾタイプは、日本では昭和26(1951)年に初期のジアゾ複写機が開発され、法務省が戸籍謄
本・抄本類での使用を認定したこともあって普及していった。
【★2】日下田 茂 "ジアゾ作像技術" [PDF]
・ジアゾ感光材料について、国内では1929年に理化学研究所から湿式タイプのジアゾ感光紙が陽
画感光紙として商品化されたのがはじめ。
・1951年、国内で初めてコピア(現キャノンファインテック)から小型湿式事務用ジアゾ複写機
「M型」が発売された。それまでは、カーボン紙を使って手書きで複写するか、和文タイプで
複写浄書するかであった。
・1951年、法務省はそれまで和紙で手書き複写していた戸籍謄本・抄本を、ジアゾ複写機でコピー
したものを正式文書として交付することを法的に認めた。
・1955-1975年頃、経済成長に伴い、設計図等の大量複写用途に、安価で操作が簡単という利点
からジアゾ複写機の開発と普及が進んだ。
・1971年、Xerox社の「セレンドラム感光体」に関する基本特許の有効期間満了に伴い、PPCの
急速な普及が始まる。1975年頃から、PPCの時代へとなっていった。
【★3】小島 浩之[他] “蒟蒻版と青焼(ジアゾ)のデジタル処理による情報の保存について” [PDF]
・蒟蒻版や青焼の特徴と共に、用途や使用された年代について述べられている。
【★4】長塚 誠治“設計部門における図面管理と複写について” [PDF]
・造船の際に用いられる図面の複写や保管について述べられている。
・造船コピー研究会…複写図面を能率的に処理するため、図面の製図、複製、出図、保管、マイ
クロフィルムを含めた図面管理全般について改善研究を実施している。
・「戦前の技術図面はほとんど青写真として複製されていたが、最近はほとんどが白写真(陽画
ジアゾ)図面」
・マイクロフィルムによる図面の複製や保管がクローズアップされてきた。
・第二原図あるいは現場への縮小図面の作成用としてのマイクロフィルム化を促進が必要。
3. 【★1】の参考文献より
【★5】『アーカイブ事典』
p.192 「明治から大正にかけての『こんにゃく版』『ガリ刷り』『青写真(青図)』の普及を経て、
昭和二〇年代後半から三〇年代にはいると、原書の複写方法が多様化してくる。」
p.216 複写の変遷として、こんにゃく版やカーボン紙、謄写版(ガリ版)、コピー機による複写が
使用された年代や用途について記載がある。
*参考文献として次の文献が挙げられている。[本学所蔵なし]
【★6】新田 和幸“わが国における 「蒟蒻版」 印写法の発生と 「蒟蒻版」 公文書の存在意義-教育史料 (と
りわけ行政文書) 調査と保存によせて”
大西愛 “こんにゃく版の話” 大阪あーかいぶず特集号 2 1990
4.【★2】で挙げられた企業の社史から探す
4-1.図書
『キヤノン史 : 技術と製品の50年』(キヤノン史編集委員会編 キヤノン 1987.12 535/KY1)
p.82 電子複写方式には、PPC方式とEF方式がある。PPC方式は、ゼロックス社が多数の特許を
持ち、独占していた。EF方式はRCA社が特許を持っていたが、特許供与に応じていたため、
世界のいくつかのメーカーが製品化を始めていた。キヤノンは、EF機の開発やPPCの研究を
進め、新しいNP方式を開発した。
1950年代の複写機業界では、ジアゾ複写機が主流であった。1960年にアメリカのゼロックス社が
電子式の世界初の全自動乾式複写機を発売し、日本でもシェアを伸ばした。
4-2.ウェブ情報
リコー https://jp.ricoh.com/
・1955年 ジアゾ複写機「リコピー101」を発売 など
TOP > リコーについて > リコーのあゆみ
富士ゼロックス https://www.fujixerox.co.jp/ (2023/1/23時点 アクセス不可)
・1962年 業界初の普通紙複写機「富士ゼロックス914」発売 など
TOP > 企業情報 > 沿革 > 商品・サービスの歩み
→2021年4月より、富士フイルムビジネスイノベーションへ社名変更。 https://www.fujifilm.com/fb/
(2023/1/24時点 TOP > 企業情報「富士フイルムビジネスイノベーション」
> 沿革 > 商品・サービスの歩み)
次のサイトでは、製品に関する沿革は確認できなかった。
キヤノンファインテックニスカ株式会社 https://ftn.canon/ja/index.html
5.情報収集のヒントを探す
5-1. レファレンス協同データベース https://crd.ndl.go.jp/reference/
【★7】「謄写版とはどのような技術で、どの位普及していたか。手軽だったのか?」
○本学所蔵あり
【★8】『昭和堂月報の時代 : 戦前戦後「ガリ版」年代記』
・ガリ版の機材販売と印刷請負をしていた昭和謄写堂(現株式会社ショーワ)発行の『昭和堂月報』
の主要記事を翻刻した資料。
○国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧可 https://dl.ndl.go.jp/
【★9】『軽印刷と事務印刷』
・軽印刷は、①必要部数が少ない②期日が急がれる③外部に秘密にする必要がある④少ない経費・
製品の良否は問わない、といった場合に利用される。
・主に各印刷方法の仕組みについて述べているが、発生や利用された場面についても記述がある。
○本学所蔵なし
『軽印刷全史:日軽印30周年記念』(日軽印30周年記念誌編纂委員会編 日本軽印刷工業会 1989)
『ガリ版文化史 : 手づくりメディアの物語』(田村紀雄,志村章子編著 新宿書房 1985.3)
『ガリ版文化を歩く : 謄写版の百年』(志村章子著 新宿書房 1995.1)
→レビュー記事あり 国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧可(送信参加限定)
斉藤修“「ガリ版文化を歩く」” エルネオス 1(6)(6) p.78-79 1995-05
(書誌ID:000000094605)
6. [5]で得たキーワードから探す
6-1. CiNii Articles https://ci.nii.ac.jp/ ※2022年4月~CiNii Researchに移行
<キーワード:軽印刷>
【★10】石井 重徳,池嶋 昭一 ”感熱孔版印刷” [PDF]
・謄写印刷についての記述がある。
7. 関連質問の調査より
7-1.国立公文書館 http://www.archives.go.jp/
【★11】「国立公文書館所蔵資料保存対策マニュアル(平成14年3月)」 [PDF]
p.28-34 こんにゃく版、青図(青写真) 、青焼き(ジアゾコピー) 、湿式コピー 、電子コピー 、
写真(紙焼き) 、ガリ刷り(謄写版)・ボールペンについて、年代や用途等の記述あり。
ホーム > 画面下「報告書・資料等」> 「◎調査研究報告書-保存・修復」項目内
以上
<Web最終確認日:2023/01/23>
- 事前調査事項
- NDC
-
- 専門図書館 (018 10版)
- 印刷 (749 10版)
- 参考資料
-
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【★1】松田 泰典 , 小谷 尚子. 写真と文化財の関わり (その3) 感光性物質を用いた複写図面・文字資料の現状と保存について. 2004. 日本写真学会誌 67(2) p. 113-118
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000016-I004230353-00 (PDF) -
【★2】日下田 茂. ジアゾ作像技術. 2012. 日本画像学会誌 51(1) p. 81-91
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000016-I004282343-00 (PDF) -
【★3】小島, 浩之 , 矢野, 正隆 , 内田, 麻里奈 , 小島, 浩之 , 矢野, 正隆 , 内田, 麻里奈. 蒟蒻版と青焼(ジアゾ)のデジタル処理による情報の保存について. 東京大学経済学部資料室, 2011-03-31. 東京大学経済学部資料室年報 1 p. 63-68
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000025-I005819398-00 (PDF) -
【★4】長塚 誠治. 設計部門における図面管理と複写について. 1968. 日本造船学会誌 464(0) p. 68-76
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000016-I006651890-00 (PDF) -
【★5】小川千代子, 高橋実, 大西愛 編著 , 小川, 千代子 , 高橋, 実, 1946- , 大西, 愛. アーカイブ事典. 大阪大学出版会, 2003.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004283750-00 , ISBN 4872591747 (当館請求記号:01809/O24) -
【★6】新田 和幸 , 新田 和幸. わが国における 「蒟蒻版」 印写法の発生と 「蒟蒻版」 公文書の存在意義-教育史料 (とりわけ行政文書) 調査と保存によせて. 1990-01-29. 教育史・比較教育論考 14 p. 41-50
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000024-I004986522-00 -
【★7】謄写版とはどのような技術で、どの位普及していたか。手軽だったのか?(凸版印刷株式会社印刷博物館ライブラリー).
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000166424 -
【★8】須永襄編 , 須永, 襄. 昭和堂月報の時代 : 戦前戦後「ガリ版」年代記. 大日本印刷, 2000. (HONCOレアブックス, 2)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I007779397-00 , ISBN 4887521278 (当館請求記号:749/SU73) -
【★9】本間一郎 著 , 本間, 一郎, 1904-. 軽印刷と事務印刷. 印刷学会出版部, 1961.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I000802590-00 (送信参加限定) -
【★10】石井 重徳 , 池嶋 昭一. 感熱孔版印刷. 2012. 日本画像学会誌 51(1) p. 42-48
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000016-I004282282-00 (PDF) -
【★11】国立公文書館所蔵資料保存対策マニュアル(平成14年3月)[PDF].
https://www.archives.go.jp/about/report/pdf/hourei3_09.pdf (公文書館においての所蔵資料の保存対策について書かれた手引き)
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【★1】松田 泰典 , 小谷 尚子. 写真と文化財の関わり (その3) 感光性物質を用いた複写図面・文字資料の現状と保存について. 2004. 日本写真学会誌 67(2) p. 113-118
- キーワード
-
- 資料保存
- 複製
- 青写真
- 青焼き
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 資料保存
- 質問者区分
- 教員
- 登録番号
- 1000327796