レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021/2/4
- 登録日時
- 2022/04/07 00:30
- 更新日時
- 2022/06/03 10:41
- 管理番号
- 6000007161
- 質問
-
解決
万葉集4516大伴家持の歌「新しき年の始の初春の今日降る雪のいや重け吉事」という歌があるが、なぜ新年の雪は縁起が良いのか?
雪が降ると豊作になるという理由があるが、なぜ雪が降ると豊作になるのかの根拠は?
- 回答
-
1『新*日本古典文学大系 4 萬葉集 』(佐竹昭広/校注 岩波書店)
(P491)4516番の歌の解説に「新年の降雪を瑞兆として詠むことはひとつの伝統であった」とある。
2『大伴家持 5 万葉歌人の歌と生涯 望郷幻想』(中西進/著 角川書店)
(P244)新年の雪についての説明あり
「雪は豊年のしるしで雪が降ると害虫が死んで豊作になるという話を聞いたこともある。雪は豊作をあらわす瑞祥だから高く積もれば積もるほどありがたいということになろう」
雪が豊作をあらわす瑞兆というのはことわざにもでている
3『故事俗信ことわざ大辞典』(北村 孝一/監修 小学館)
(P1178)「雪は豊年の瑞(しるし)」の項目に「雪が多く降ればその年は豊作になるということ。雪は五穀の精」と記述あり。
また「詩経?小雅・信南山」の「上天同雲、雨雪雰雰」の毛伝(漢の毛公による詩経の注釈)に「豊年之冬、必有積雪」とある。
4『万葉集入門』(久松潜一/著 講談社)
(P13)「文選や詩経の影響を受けて」の項目
「万葉集の成立したころには詩経だけでなく文選もすでに伝来されていて、その影響をも受けております」と記述があり、詩経、文選など中国での考え方が奈良時代にすでに一般的であった可能性がある。
5『鑑賞*中国の古典 11 詩経 』 (牧角悦子/共著 福島吉彦/共著 角川書店)
(P111) 信南山(小雅・谷風之什)
雪の雨ること雰雰たり
之れを益すに??を以てし
既に優に既に渥し
既に霑い既に足り
我が百穀を生ず
とあり、雪がたっぷりと水を大地に含ませ、多くの穀物が育つという記述あり。
6「新釈漢文大系 81 文選 」 (高橋忠彦/著 明治書院)
(P87)「雪賦」にも詩経の小雅 信南山の詩の引用がある。また
盈尺則呈瑞於豊年…
「雪が一尺も降り積もると、豊年の吉兆となるが、一丈に及べば陰気が強すぎることを示す。雪の持つ時に応じた意義は何と遠大であることか」
中国の雪に対する考え方として
7『中国気象学史研究 3 気象観』 (国会デジタルで閲覧可)
(P561)
寡婦に余穂をのこしておけるほどの豊作も、雨がもたらしたものであり、同じく小雅の信南山・‘谷風之什’の詩に「上天同雲、雨雪雰雰・・・」
冬の積雪と春の小雨が百穀を育てるという記述あり
(P91)
「降水量の少い中国に於いては、雪は供水源として大切なものであるから、かような思想の発見は農耕の歴史と共に古いに違いない。そこで、ここから雪の効用が観念的に展開し、穀物の種を雪汁を貯蔵しておいた水にひたして蒔くと収穫が多いとする思想へ移っていったのであり、後に記するように雪を豊年の兆ともしたのである」
この考えは日本にも入ってきている。
8『日本思想大系 62 近世科学思想 上 』 (古島敏雄/著 岩波書店)
(P96)「農業全書」巻の一 農事総論 種子
「雪は五穀の精にて雪汁にひたしうゆれば、虫の喰ざるのみならず、旱にも痛まず、みのりよきものなり。寒の中に雪をつぼに入、日かげの所土中に埋をき、用に随ひて汲
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
-
-
佐竹昭広 [ほか]編 , 佐竹, 昭広, 1927-2008. 新日本古典文学大系 4. 岩波書店, 2003.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004272601-00 , ISBN 4002400042 -
中西進 著 , 中西, 進, 1929-. 大伴家持 : 万葉歌人の歌と生涯 第5巻 (望郷幻想). 角川書店, 1995.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002405086-00 , ISBN 4045810056 -
佐竹秀雄, 武田勝昭, 伊藤高雄 編 , 北村孝一 監修 , 佐竹, 秀雄, 1947- , 武田, 勝昭, 1944- , 伊藤, 高雄, 1958- , 北村, 孝一, 1946-. 故事俗信ことわざ大辞典 第2版. 小学館, 2012.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023386278-00 , ISBN 9784095011028 -
久松潜一 著 , 久松, 潜一, 1894-1976. 万葉集入門 : 人間と風土. 講談社, 1965. (現代新書)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001064979-00 -
牧角, 悦子, 1958- , 福島, 吉彦, 1935-. 鑑賞中国の古典 第11巻. 角川書店, 1989.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002001934-00 , ISBN 4045909117 -
高橋, 忠彦, 1952-. 新釈漢文大系 81. 明治書院, 2001.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003023969-00 -
古島 敏雄 , 安芸 皎一 , 古島 敏雄 , 安芸 皎一. 近世科学思想 上. 岩波書店, 1972. (日本思想大系)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I065277536-00 -
市川健夫 著 , 市川, 健夫, 1927-2016. 雪国文化誌. 日本放送出版協会, 1980. (NHKブックス ; 361)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001448130-00 -
田村 専之助/著. 中国気象学史研究 3. 中国気象学史研究刊行会, 1977. (東洋気象学史論叢)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I053629014-00
-
佐竹昭広 [ほか]編 , 佐竹, 昭広, 1927-2008. 新日本古典文学大系 4. 岩波書店, 2003.
- キーワード
-
- 万葉集,大伴家持,新年,豊作,中国,詩経,文選
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000314795