レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013年4月27日
- 登録日時
- 2013/11/28 19:52
- 更新日時
- 2021/01/14 18:00
- 管理番号
- PML20130427-01
- 質問
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ひらがな書体の種類と移り変わり
「し」の上に点が打ってある字があるが、これはいつ頃からいつ頃まで使われたのか?
- 回答
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時期・時代ではなく、書体やメーカーによる違い。
明治初期に作られ、現在でも一部で使用されている。
[資料1]にはメーカーによって字体が違う理由に言及。
[資料2~7]で、明治初期から、弘道軒清朝体、築地体など、点のつく書体が少なくなく、また官報などにも使用されていたことがわかる。
([資料8]に、第二次大戦後も使われていたとの記述あり。)
[資料9,10]で写真植字およびデジタルフォントの文字でも、行書体や毛筆楷書体、築地体の一部、勘亭流で点が付いた「し」があることを確認。
[資料1] 矢作勝美『明朝活字』(平凡社 1976)
p.38 「活版印刷のひらがなの書体は、毛筆の草書をうけつぐことからはじまっている。
「さらには、同じ印刷物のなかだけでなく、印刷物相互の字体を比較すると、いっそう顕著なものがある。その理由は、個々の活版製造所(活字メーカー)によって、ひらがなの版下の作者(書家)がそれぞれちがい、おもいおもいの字体を書いたからである。」
[資料2] 佐藤敬之輔『ひらがな 上(文字のデザインシリーズ 2)』(丸善 1973)
p.48 「本文用書体の骨組みの変化」
現在(1973年時点)使われている書体14種類のひらがなを、設計年代順に並べた一覧表がある。
そのうち一番古い書体、明治10年完成の「弘道軒清朝体」のみ、「し」の上に点がある。
(p.32 に 「弘道軒清朝体」の解説あり。書体は書家小室樵山の作、小山田宗則が鋼鉄に直彫りした。)
[資料3] 板倉雅宣『教科書体変遷史』(朗文堂 2003)
p.25 文字の統一整理-一音一字(明治33年)「文部省告示 第14号「第一号表」「官報」明治33年8月21日」
p.43 「【ひらがな書体の変遷史①】明治初年から昭和10年の教科書体活字まで」
p.64 「【ひらがな書体の変遷史②】終戦前後の教科書から検定初期教科書ひらがな書体比較。」 ※点付きの「し」は無し
[資料4】小宮山博史『日本語活字ものがたり:草創期の人と書体』(誠文堂新光社 2009年)
p.92,94 築地体見本 明治36年 ※点の無い「し」
p.96 築地体見本 明治45年 ※点のある字、無い字、続き文字のような字、「志」の字、の4種類の「し」
p.98 築地体一号太仮名 明治36年 ※点のある「し」
[資料5]「Vignette」3号(朗文堂 2002.5)和様ひらかな活字
[資料6]府川充男撰輯『聚珍録:第一篇 字体』(三省堂 2005年)
[資料7]府川充男撰輯『聚珍録:第二篇 書体』(三省堂 2005年)
[資料8]森啓ほか『書き文字から印刷文字へ:活字書体の源流をたどる(女子美術大学図書館講義録 書物を構成するもの 2)』(2008年)
p.43- 第1部第4章 日本の活字書体
p.52 弘道軒清朝 「一時期、新聞や文芸関係の雑誌などに採用され、第二次大戦後も一部で使用されていた。」
[資料9]『写植綜合見本帳』(全関東写真植字協同組合 1977年)
p.8-9 写研 35書体中 「BL行書体」 の「し」に点あり
p.52-54 モリサワ 57書体中 「行書体 行書1」 の「し」に点あり
p.83-84 リョービ 26書体中 「ミダシガナ1+トミ」の「し」に点あり
[資料10]組版工学研究会 編. 和文電子活字綜合見本帳. 朗文堂, 1999.
22社の電子書体見本掲載、イワタ、大日本スクリーン、築地電子活版など、数社に点の付いた「し」の字あり
参考:当館活版印刷工房「印刷の家」にも問い合わせ
「時代的な物ではなく、活字の会社によって点があるものとないものがある(凸版印刷(株)のは全て点無し)。
今でも点ありの活字を使っている印刷会社もある。」との回答あり。
- 回答プロセス
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「ひらがな」×「活字」で自館OPAC検索して、歴史的な記述のある資料を抽出、確認。
載っている活字見本から、点のつく「し」の書体と時期を確認。
活字 → 写植 → デジタル への過程で消えた可能性を考え、写植の見本帖とデジタルフォントの見本帖を確認。
現在でも点の付いた「し」の字があることを確認。
当館活版印刷工房「印刷の家」にも問い合わせ
時代的な物ではなく、活字の会社によって点があるものとないものがある(凸版印刷はなし)今でも点ありの活字を使っている印刷会社もある、との回答あり。
- 事前調査事項
- NDC
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- 音声.音韻.文字 (811 9版)
- 印刷 (749 9版)
- 参考資料
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[資料4]小宮山博史 著. 日本語活字ものがたり : 草創期の人と書体. 誠文堂新光社, 2009. (文字と組版ライブラリ 1)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009993594-00 , ISBN 9784416609026 (S161-Ko65) -
[資料6]府川充男 撰輯. 聚珍録 : 圖説=近世・近代日本〈文字-印刷〉文化史 第1篇(字體). 三省堂, 2005.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007685539-00 (S181-Sh99-1-1) -
[資料7]府川充男 撰輯. 聚珍録 : 圖説=近世・近代日本〈文字-印刷〉文化史 第2篇(書體). 三省堂, 2005.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007685546-00 (S181-Sh99-2) -
[資料1]矢作勝美 著. 明朝活字 : その歴史と現状. 平凡社, 1976.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001233789-00 (S161-Y16) -
[資料2]佐藤敬之輔 著. 文字のデザインシリ-ズ 2. 丸善, 1964.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I003862791-00 (S163-Se85-2) -
[資料3]板倉雅宣 著. 教科書体変遷史. 朗文堂, 2003.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004120376-00 , ISBN 494761367X (S161-I87) -
[資料5]板倉雅宣/著. 和様ひらかな活字. 朗文堂, 2002. (Vignette 3号)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I030512499-00 , ISBN 4947613610 (登録番号:60006605) -
[資料8]森啓, 高宮利行, 桑山弥三郎, 板倉雅宣 著. 書き文字から印刷文字へ : 活字書体の源流をたどる. 女子美術大学, 2008. (女子美術大学図書館講義録書物を構成するもの 2)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009310695-00 , ISBN 9784888888349 (S161-J78) - [資料9]写植総合見本帳編集委員会編著『写植綜合見本帳』(全関東写真植字協同組合 1977年) (S454-Z3)
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[資料10]組版工学研究会 編. 和文電子活字綜合見本帳. 朗文堂, 1999.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002817199-00 , ISBN 4947613475 (S173.6-Ku38)
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[資料4]小宮山博史 著. 日本語活字ものがたり : 草創期の人と書体. 誠文堂新光社, 2009. (文字と組版ライブラリ 1)
- キーワード
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- 日本語--文字
- 仮名
- 書体
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 活字
- 質問者区分
- 来館者
- 登録番号
- 1000141302