レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2019年2月21日
- 登録日時
- 2019/02/27 09:49
- 更新日時
- 2022/05/13 16:05
- 管理番号
- 2018-108
- 質問
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解決
昭和18年ごろ、虚弱体質の人を2ヶ月ほど収容する「健民修練所」があった。
その概要を知りたい。また大阪市内の天王寺の辺りではどこにあったかを知りたい。
- 回答
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「健民修練所」について、概要がわかる資料が見つかりました。
また、『保健局事業概要:昭和十八年度』(大阪市保健局, 昭和19年刊)に、健民修練所の所在地が記載されています。
天王寺の辺りにあたる所在地としては、「四天王寺外二ヶ所」とあります。
詳しくは回答プロセスをご確認ください。
- 回答プロセス
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1.参考図書の確認
『アジア・太平洋戦争辞典』(吉川弘文館, 2015)
事項索引に「健民修練」「健民修練事業」「健民修練所」あり。
p.191「健民修練」
「アジア・太平洋戦争期、体力的「弱者」を対象に実施された特別訓練。・・・四二年八月には、小泉親彦厚相の主唱により「結核対策要綱」が閣議決定された。・・・体力検査の結果「弱者」・・・と判定された者に対して、・・・健民修練を実施するため、一九四三年には全国約二千ヵ所にのぼる健民修練所が寺院・道場などを利用して開設され、約四十万人にのぼる青年「弱者」が二ヶ月間に及ぶ訓練を受けた。・・・」「四四年になると、国民体力検査の一環に体力章検定が組み込まれ、(成績が一定以下の者は)健民修練の対象とされるようになったほか、徴兵検査において(下位の種別だった者も)健民修練が義務付けられるなど、兵員確保のための特別訓練としての性格はいっそう明確となった。」
そのほか、p.222「国民体力法」p.389「体力章検定」にも関連の記述あり。
→参考文献を確認。
①高岡裕之「戦争と「体力」―戦時厚生行政と青年男子―」(阿部恒久, 大日方純夫, 天野正子編『モダニズムから総力戦へ』p.176-202, 日本経済評論社, 2006)
「健民修練」の項目の内容について、さらに詳しく書かれている。
②厚生省五十年史編纂委員会編『厚生省五十年史』(厚生問題研究会, 1988)
p.446「国民修練所の設置と保健所網の整備」に健民修練所の設置の要領、大日本体育会への委嘱事業などについて以下のことが書かれている。
・昭和17年8月21日「結核対策要綱」が閣議決定され、「筋骨薄弱者、軽症又は回復期の結核患者と判定された弱者に対する看護措置として健民修練所を設け、これらの弱者をおおむね二か月間ここに収容し、生活修練及び療養指導を実施することとした。」
・健民修練所は昭和18年8月から開設された
・「修練所は各種の道場、集会所、寺院等の活用を主とし、療養及び修練の指導員には民間の適格者を委嘱すること。」
・「一般人の修練は道府県及び六大都市を経営主体とする修練所において行い、労務者の修練は事業主の責任において行い、学生、生徒の修練は学校長の責任で行い」
・健民修練所は全国で約1400箇所設置された
・昭和18年、大日本体育会に委嘱助成して健民修練体操の要目の作成を行うとともに指導員の資質向上に当たった
2.大阪の健民修練所について、論文を検索
キーワード:「健民修練所 大阪」など
CiNii Articlesなどを検索するが、参考になりそうな資料は見当たらず。
Web検索により下記論文が見つかる。
樋上恵美子「大阪市における保健婦養成事業の展開 : 大阪市立大学医学部看護学科の前身、大阪市立厚生女学院の形成期を中心に」(『大阪市立大学史紀要』3, p.1-21, 2010-10)
http://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/il/meta_pub/G0000438repository_KJ00006657339 [参照2019-02-26]
p.9に、1942年に国民体力法が改正されて厚生省から「国民保健指導方策要綱」が出され、保健所の体力検査により修練を受ける者が決められたこと、「津守及び千里山修練所」「富田林など郊外の健民修練所」で修練を受けたことが書かれている。
典拠として次の資料があげられている。
「大阪市保健局「健民修練所」『昭和十八年保健局事業概要』、1944年、46~51ページ」
→本学OPACで「保健局事業概要 大阪市」を検索すると次の資料が見つかる。
近現代資料刊行会企画編集『衛生・保健』近代都市環境研究資料叢書;1 . 近代都市の衛生環境 ; 大阪編 ; 20-32(近現代資料刊行会, 2007)
第7巻に「保健局事業概要:昭和十八年度(大阪市保健局 昭和19年刊)」の収録あり。
>第5章 国民体力管理施設>第二節 健民修練所(p.368-)
健民修練の目的と、大阪市の事業内容が詳細に記録されている。
p.369「健民修練所所在地」に住所の記載あり。
また「筋骨薄弱者の修練」と「結核発病の虞ある者の修練」に記載の「実施人員表」にも修練所名の記載あり。
「筋骨薄弱者の修練」の「実施人員表」(p.370)には「四天王寺外二ヶ所」とあり。
3.国立国会図書館サーチを検索
(1)キーワード:健民修練所
『教育』11(12)がヒット。目次を確認すると下記が見つかる。
扇谷正造「健民修練所の成果」(『教育』11(12), p.45-47, 1943-12)
健民修練所の制度概要、修練の内容、検定の結果運動能力が向上したなどのことが書かれている。
(2)キーワード:健民修練
『職場の実践』がヒット。第36冊が「事業場における健民修練実施要綱」。
国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧できる。
「事業場における健民修練実施要綱」(『職場の実践』第36冊. 労働科学研究所, 昭和18-19)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1450940 [参照 2019-03-14]
主旨、修練所の概要(対象、期間など)、「修練方針」、「修練方法」など詳細な説明あり。
4.大阪の歴史から調査
『昭和大阪市史』(大阪市, 1951.7-1969.3)
第8巻附篇の件名索引「健民修練所」より下記ページが見つかる。
・第2巻行政篇p.222「十八年度には厚生省の指示に基き、各区に健民修練所を設置したが、府下ならびに近県の景勝地を選んで、夫々三百名内外を収容し得る大規模の健民修練所を建てた。(橿原・私市・丹波市・汐ノ宮・白浜等)」
・第6巻社会篇p.513-514「健民修練所」に、さらに浜寺、富田林、千里山、信太山の地名も挙げられている。
5.国立公文書館デジタルアーカイブを検索
https://www.digital.archives.go.jp/ [参照 2019-02-27]
キーワード「健民修練所」で指導要領などの資料が7件見つかる。閲覧可能。
例えば次の資料から、カリキュラムや制度についての情報が得られる。
「健民修練所勤労指導要領健民修練所栄養指導要領並ニ健民修練所日課例等ニ関スル件」(昭和18年08月05日)
https://www.digital.archives.go.jp/das/meta/M0000000000000304944 [参照 2019-02-27]
6.新聞記事を検索
本学契約データベースヨミダス歴史館(読売新聞)、朝日新聞記事データベース聞蔵Ⅱビジュアルでキーワード「健民修練所」で検索。
1942年~1945年当時の記事が見つかる。
「減収にも親心 強兵へ鍛え直す42万人 1日から 健民修練所開く」(『読売新聞』1943年7月30日, 朝刊, p.3)など。
- 事前調査事項
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『国史大辞典』『日本国語大辞典』には記載がなかった。
- NDC
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- 日本史 (210 9版)
- 衛生学.公衆衛生.予防医学 (498 9版)
- 参考資料
-
-
吉田裕, 森武麿, 伊香俊哉, 高岡裕之 編 , 吉田, 裕, 1954- , 森, 武麿, 1945- , 伊香, 俊哉, 1960-. アジア・太平洋戦争辞典. 吉川弘文館, 2015.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I026804660-00 , ISBN 9784642014731 (NCID:BB19834242) -
阿部恒久, 大日方純夫, 天野正子 編 , 阿部, 恒久, 1948- , 大日方, 純夫, 1950- , 天野, 正子, 1938-2015 , 阿部, 恒久, 1948- , 大日方, 純夫, 1950- , 天野, 正子, 1938-2015. モダニズムから総力戦へ. 日本経済評論社, 2006. (男性史 ; 2)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008402152-00 , ISBN 4818818852 (高岡裕之「戦争と「体力」―戦時厚生行政と青年男子―」p.176-202. NCID:BA7971503X) -
厚生省五十年史編集委員会 編 , 厚生問題研究会. 厚生省五十年史. 厚生問題研究会, 1988.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001924517-00 , ISBN 4805804475 (記述篇. NCID:BN02351078) -
樋上 惠美子 , 樋上 惠美子. 大阪市における保健婦養成事業の展開 : 大阪市立大学医学部看護学科の前身、大阪市立厚生女学院の形成期を中心に. 2010-10. 大阪市立大学史紀要 3 p. 1-21
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000024-I004430093-00 -
近現代資料刊行会 企画編集 , 近現代資料刊行会. 近代都市の衛生環境 大阪編 26(衛生・保健 7). 近現代資料刊行会, 2007. (近代都市環境研究資料叢書 ; 1)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009287597-00 , ISBN 9784877428860 (NCID:BA84912867) -
岩波書店. 教育 11(12). 岩波書店, 1943-12.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I000404779-00 (扇谷正造「健民修練所の成果」p.45-47) -
大阪市. 昭和大阪市史 第8巻 (附篇). 大阪市, 1954.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000872064-00 (NCID:BN08172413) -
大阪市 編 , 大阪市. 昭和大阪市史 第2巻 (行政篇). 大阪市, 1952.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000872058-00 (NCID:BN08172413) -
大阪市. 昭和大阪市史 第6巻 (社会篇). 大阪市, 1953.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000872062-00 (NCID:BN08172413) -
国立公文書館デジタルアーカイブ
https://www.digital.archives.go.jp/ [参照 2019-02-27] -
健民修練所勤労指導要領健民修練所栄養指導要領並ニ健民修練所日課例等ニ関スル件. 昭和18年08月05日.
https://www.digital.archives.go.jp/das/meta/M0000000000000304944 [参照 2019-02-27] - ヨミダス歴史館 [参照 2019-02-21]
- 朝日新聞記事データベース聞蔵Ⅱビジュアル [参照 2019-02-21]
- 減収にも親心 強兵へ鍛え直す42万人 1日から 健民修練所開く. 読売新聞. 1943年7月30日, 朝刊, p.3. ヨミダス歴史館. [参照 2019-02-21]
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労働科学研究所 編 , 労働科学研究所. 職場の実践 第36冊. 労働科学研究所, 1944.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001518984-00
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吉田裕, 森武麿, 伊香俊哉, 高岡裕之 編 , 吉田, 裕, 1954- , 森, 武麿, 1945- , 伊香, 俊哉, 1960-. アジア・太平洋戦争辞典. 吉川弘文館, 2015.
- キーワード
-
- 健民修練所
- 健民修練
- 大阪市
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 日本史
- 質問者区分
- 教員
- 登録番号
- 1000252235