レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2019/02/23
- 登録日時
- 2019/03/25 00:30
- 更新日時
- 2019/03/25 00:30
- 管理番号
- 6001037397
- 質問
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解決
黒田如水、長政親子により、大分県中津市の合元寺において謀殺された宇都宮鎮房の娘・鶴姫の最期については諸説あると聞いた。それについて知りたい。
- 回答
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以下で紹介する資料に、豊前宇都宮氏滅亡後の鶴姫について書かれている。
鶴姫の最期に関しては、詳しい史料はほとんど残っていないようで、後世に書かれた宇都宮(城井)氏の遺臣らによる実録や、軍記物語などが出典となっている。鶴姫のその後については、大きく次の2つの説に分かれている。
(1)殺された(火あぶり、磔。もしくは黒田家家臣による殺害,自死など)
(2)許されて尼僧となり一門の冥福を弔った
基本的には(1)とされている。(2)の説もあるが、後年の創作であるとする資料が多い。
■『豊前宇都宮興亡史』(小川武志/著 海鳥社 1988.2)
p183鶴姫についての記述があり、諸説について簡潔に記載している。短いので引用する。
「長政に嫁していた鎮房の娘鶴姫もこの時捕らえられて、一室に閉じ込められた。窓の外で磔柱を作る音を聞き、番士に「何の音か」と尋ねられたのに「磔(はたもの)を作り侍る」との答えを聞いて、
なかなかに きい(城井)て果てなん 唐衣
たがためにおる はたものの音
と詠まれた。鶴姫はこの歌を辞世に、広津河原で刑死した(一説には、この歌に感じた黒田家で助命したともいわれている)。」
※この資料には付録として『城井軍記実録』(p191-264)の翻刻が収録されている。これは江戸期に宇都宮(城井)氏の遺臣が書いたもの。巻の下「朝房肥後国に誅せらるる事」の後半p248-249に鶴姫の最期についての記載があり、ここでは鶴姫が助命されたとしている。
もう少し諸説について詳しく知りたい場合は、次の2冊が情報の出典等も含めてわかりやすい。
■『戦国九州の女たち』(吉永正春/著 西日本新聞社 1997.1
p257-286「宇都宮氏滅亡と鶴姫(千代)」のうち「鶴姫(別名千代姫)の最期と三代の墓」(p280-286)
■『呪詛の時空:宇都宮怨霊伝説と筑前黒田家』(則松弘明/著 海鳥社 1999.5
「宇賀貴神社の白蛇伝説」(p89-91) 「城井息女、鶴姫」(p91-92)
出典となった記録や物語をいくつかまとめて読みたい場合は、次の資料が参考になる。
■『豊前宇都宮氏歴史資料集:文献資料と城館の調査』(築上町教育委員会 2016.3)
第五章に文献集として、黒田氏と宇都宮氏関連の部分を翻刻し、収録。鶴姫の最期についての出典とされているものもあり。
・『川閣太閤記(抄)』「紀伊娘を炙刑、世評」(p68)
・『陰徳太平記(抄)』「宇都ノ宮鎮房降参附生害ノ事」のp152下段に鶴姫についての記述あり。
・『城井闘諍記(岡為造氏筆写資料)』p166付録に鶴姫の記述があり、助命されたことになっている。下段に現代語訳もあり。参考までに引用する。
「一 又曰く鎮房の息女中津にて獄屋にこめ置しに、大工の物を切る音を聞何やらんと、番の者に聞給へば、磔物木を作り侍ると云ひければ
中々に きゐて果なん から衣 我ためにおる はた物のおと
此歌を如何聞給ひてか哀に思はれ重き罪に行ひ給はずと也」
※『城井闘諍記』(渡辺本)では、p187で上記の話が「宇都宮朝房妻女の歌」の逸話として描かれており、助命はなされていない。この本では鶴姫は登場しない。
・『城井一乱実録』「長政妻の歌」(p210)において磔を許されたが、自死を命じられたことになっている。
※p216で「鎮房息女の歌」として、複数の出典資料とともに、そこに書かれた歌を一覧できる。
[事例作成日:2019年2月23日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 九州地方 (219 10版)
- 参考資料
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- 豊前宇都宮興亡史 小川/武志∥著 海鳥社 1988.2 (p183,248-249)
- 戦国九州の女たち 吉永/正春∥著 西日本新聞社 1997.1 (p280-286)
- 呪詛の時空 則松/弘明∥著 海鳥社 1999.5 (p89-92)
- 豊前宇都宮氏歴史資料集 築上町教育委員会 2016.3 (p68,152,166,210,216)
- キーワード
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- 宇都宮氏(ウツノミヤシ)
- 辞世(ジセイ)
- 伝記(デンキ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 人物・団体
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000253663