レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022/10/26
- 登録日時
- 2022/12/23 00:30
- 更新日時
- 2022/12/23 00:30
- 提供館
- 宮城県図書館 (2110032)
- 管理番号
- MYG-REF-220142
- 質問
-
未解決
公共図書館に居場所としての役割が求められるようになった時期と,その背景を知りたい。
- 回答
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当館所蔵資料を確認したが,明確な時期や背景が記載されている資料はなかった。
なお,関連する資料として,下記を紹介した。
※【 】内は当館請求記号
資料1 『図書館界』63巻第4号, 日本図書館研究会, 2011年【P010/ト】
資料2 ジョン・E.ブッシュマン ; グロリア・J.レッキー編著『場としての図書館』京都大学図書館情報学研究会, 2008年【010.4/2008.9】
資料3 根本彰著『場所としての図書館・空間としての図書館』学文社, 2015年【012/2015.4】
資料4 『現代の図書館』51巻2号, 日本図書館協会, 2013年【P010/ケ】
- 回答プロセス
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下記のとおり記述あり。
資料1 『図書館界』63巻第4号, 日本図書館研究会, 2011年【P010/ト】
pp.296-313に掲載されている「「第三の場」としての学校図書館 久野和子」の論文の中に以下の記述あり。
p.299「2.3.「場としての図書館」(the library as place)研究とは」の項
「1990年代後半,アメリカ図書館界では「access vs.holdings」(アクセスか,所蔵か)という議論,もしくは図書館のトポロジーとしての「インターネット」対「建物」という議論が盛んに行われるようになり,それに続いて,デジタル・ライブラリーに対抗する理論武装の枠組みとして,「場としての図書館」という考え方が注目されるようになった。アメリカの図書館情報資源振興財団(CLIR)は2005年に『場所としての図書館:役割を再考し,空間を再考する』というタイトルの報告書を発表した。翌年には,歴史的,論理的,実践的な立場から,図書館という場に焦点をあてた先進的な論文を集めた『場としての図書館:歴史,コミュニティ・文化』が出版された。2010年は,電子書籍元年とも言われ,再び,図書館の存在意義が強く問われている。「場としての図書館」研究は,図書館はデジタル・ライブラリーや電子書籍に簡単に置き換えられるような単なる本や情報資源の集積体ではなく,人々のアクチュアルな生活と学びを支え,育み,相互交流をもたらすリアルな場であり,それを基盤とした多様な社会的・教育的機能と価値を有するということを主張している。」
なお,資料1はJ-STAGEで公開されている。
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/toshokankai/63/4/63_KJ00007629102/_article/-char/ja 最終アクセス日:2022/10/18)
また,本文中にあった資料『場としての図書館:歴史,コミュニティ・文化』は当館に所蔵あり。
資料2 ジョン・E.ブッシュマン ; グロリア・J.レッキー編著『場としての図書館』京都大学図書館情報学研究会, 2008年【010.4/2008.9】
資料3 根本彰著『場所としての図書館・空間としての図書館』学文社, 2015年【012/2015.4】
pp.4-22「第1章 場所・空間としての図書館」に以下の記述あり。
pp.10-11「1.3 「場所としての図書館」論の背景」の項
「「場所としての図書館」論は1990年代以降,電子図書館論が急速に広まり,また実態として電子図書館的な機能やサービスが開始されてきたことに対するアンチテーゼとして現れたものである。その考え方によれば,図書館はもともと物理的な実体としての書物その他の資料を収集保存し,書誌的に組織化し,その場所で閲覧・貸出しのような提供サービスを行うことで成り立っていたが,その資料がデジタル化されてデータベースサーバで管理され,インターネットを通じて遠隔でアクセス可能になることで便利になることが期待された。(中略)電子図書館が普及して当たり前のものになっていくと,従来の図書館は消えるか役割を変えるかする必要があるように受け取られがちであるが,むしろ図書館本来の役割を再確認して,その物理的な場所でサービスを行うことそのものに意味があるという主張がはっきりと姿を見せてくる。(後略)」
pp.20-21「1.7 場所としての図書館が生み出された理由」の項
「以上,おおざっぱにいって,図書館建築が資料提供や学習の場としての図書館機能をそのまま表現する器でしかなかった時代から,機能をベースにして,知識,教養,伝統,情報ネットワーク,マルチメディア,相互交流,協同性,コミュニティデザインなどの価値を,建築家の視点で独自に展開するような方向への視点の移動がみられる。これは,日本の図書館が少なくとも1960年代以降の発展としても50年の歳月がもたらす文化的な成熟を意味するものだろう。図書館が単に資料を収蔵し閲覧させる無機的な場ではなく,それが置かれた場所,外観,建築素材,内部空間,書架配置などが建築家の意匠によって組み合わせられて何か新しい価値を表現することができるようになっているのである。(中略)こうしてみてくると,日本で「場所としての図書館」が生み出されるのは,必ずしもデジタル図書館に対するアンチテーゼというわけではないことがわかる。図書館という制度がようやく人々の意識のなかで一定の位置づけをもつようになったということが大きい。1970年代から経済バブルを経て図書館の機能が共有されるようになり,それが単に貸出しの場や居場所というだけでなく,また情報フローの場としてとらえるだけでなく,地域資源のストックとしてとらえる見方が現れてくるようになった。つまり図書館は単なる資料提供の機関ではなく,コミュニティのなかで過去と現在,そして未来をつなぐ場所に変貌しようとしているのでる。ここでコミュニティとは,とりあえずは公共図書館にとっては地域コミュニティであり,大学図書館にとっては当該大学コミュニティであるが,同時に,そこから広がる知識コミュニティあるいは人間コミュニティ全般を指すものである。」
資料4 『現代の図書館』51巻2号, 日本図書館協会, 2013年【P010/ケ】
特集「場所としての図書館」の中に以下の記事あり。
pp.98-105「関係性のはぐくむ場所 地域の居場所から生まれる「つながり」と「活動」をめぐって 板倉杏介」
p.98「地域に求められる〈居場所〉」の項
「子どもから高齢者まで,地域の多様な人々が気軽に立ち寄り自由に交流できる「地域の居場所」に注目が集まっている。地域の居場所といっても決まった形があるわけではなく,名称も「地域の茶の間」,「まちの縁側」,「コミュニティカフェ」などさまざまだ。(中略)2000年代に入ってから急増している地域の居場所の特徴は,運営主体と対象者の多様化であるといってよい。すなわち,以前は地域福祉やまちづくりといった特定の分野の取り組みだった居場所づくりに,いまや多くの人が関心を持ち,主体的に参加するようになったのである。こうした動きの背景には,一般的にコミュニティの衰退があるといわれる。核家族化や個人の孤立,また本格的な少子高齢化社会の到来,地域の災害対応力への危機感などから,地域のつながりが切実に求められるようになったからだというのだ。(後略)」
pp.104-105「新たな場づくりに向けて-協働プラットフォーム設計というアプローチ」の項
「(前略)協働プラットフォームとは,まず人が集まり,そこで互いに関わり合うことで,想像もしていなかったような新たな価値が立ち上がる仕組みである(国領ら,2011)。(中略)地域の居場所という具体的な空間をプラットフォームという視点から設計するメリットは多い。一つは,来場者の相互作用を価値創出の本質として捉えることが可能になるという点である。(中略)二つ目のメリットとして,高齢者や障害者,子育て支援やまちづくりなど多様なテーマを持つ地域の居場所を,表面的な形態の違いではなく,本質的な人と人とのつながりという水準で検討できるようになる。(中略)さらに,こうした場所性の生成は,情報通信技術の発展によりデジタル化,ネットワーク化が進む図書館サービスのあり方にも,少なくない知見をもたらしてくれるのではないだろうか。スマートフォンやSNSが対面的な人間関係にとって替わるのではなく,逆に情報サービスが手軽に利用できる状況になればなるほど,素朴なコミュニケーションツールである「地域の居場所」へのニーズが高まるのと同じように,場所としての図書館への期待は今後ますます高まると思われる。従来の図書館サービスが機能設計に特化してきたのであれば,これからの図書館は場所性をどのように生成していくのが問われるだろう。(後略)」
- 事前調査事項
- NDC
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- 図書館.図書館情報学 (010 9版)
- 参考資料
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- 日本図書館研究会. 図書館界. 日本図書館研究会, 【P010/ト】:
- ジョン・E.ブッシュマン?編著 グロリア・J.レッキー?編著. 場としての図書館. 京都大学図書館情報学研究会, 2008.9【010.4/2008.9】:
- 根本/彰?著. 場所としての図書館・空間としての図書館. 学文社, 2015.4【012/2015.4】:pp.4-22
- 日本図書館協会. 現代の図書館. 日本図書館協会, 【P010/ケ】:
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000326300