1)この昔話が山形地方のものかどうかについて
・『日本昔話通観』全29巻(同朋社 1990年)
「貧乏神」「福の神」の項目、6巻(山形)、2~5、7巻(東北地方)を調べたが、該当なし。
・『松谷みよこ全エッセイ 2:わたしの風土記』(筑摩書房 1989年)
p155-166「貧乏神」(初出:読売新聞1979.1)に「私はこの話を聞いたのは六年前、山形県最上郡鮭川村の土田マサエさんからだった」という記述あり。
・『びんぼうがみとふくのかみ』(富安陽子/文・飯野和好/絵 小学館 2009年)に松谷みよ子がよせた解説において「(この話は)日本各地で語られている話とは違い、山形地方だけで語り継がれてきた話ではないかと思われます」と記述。
・上記資料の解説で紹介されていた『五分次郎 最上・鮭川の昔話』(臼田甚五郎/監修桜楓社 1971)に「貧乏神」(p139~140)というタイトルで、同内容の話が掲載されている。
※『五分次郎』大阪府立中央図書館所蔵 館外貸出可(請求記号:388.1/38 )
以上のことからも、この話は山形地方のお話であると推測される。
2)このお話に原話の部分と創作の部分があるのかどうかについて
前述の『五分次郎 最上・鮭川の昔話』に、語り手の話が方言のまま収録されている。
また、松谷みよこ著作による同じ素材の別作品があり、以下のとおり。
『びんぼうがみとふくのかみ(ワンダー民話館)』(松谷みよ子/文 西村達馬/絵 世界文化社 2005年)
『民話の絵本』(松谷みよ子/編著 すばる書房 1977)p86~p94「相撲に勝った貧乏神」※東北地方・昔話という記述あり。
他にも同じ内容で、タイトル違い・著者違いの作品として以下を確認。
『びんぼうがみとふくのかみ(子どもがはじめてであう民話9)』(大川悦生/作 長谷川知子/絵 ポプラ社 1980年)
※「はじめに」によると“山形県の最上地方の昔話“。
『びんぼう神とふくの神』(木暮正夫/ぶん 梶山俊夫/え 佼成出版社 1992年)
※巻末に、西本鶏介による解説があり、“山形県の昔話”という記述あり。
『はっけよいのびんぼうがみ(むかしばなし20)』(松谷みよ子/文 長野ヒデ子/絵 フレーベル館 1994年)
昔話の「原話」を正確に断定することができないことと再話と創作の境についてはどこからを創作とみなすか判断が難しいため、原話の部分と創作の部分について明確にお答えすることができませんが、以上の資料を実際に見ていただきましてご自身でご確認いただくのがよいかと存じます。