レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023/07/27
- 登録日時
- 2023/08/02 00:30
- 更新日時
- 2023/08/17 15:31
- 管理番号
- 15257694
- 質問
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解決
「江口倣吉」という人物が、シンガポール日本人会の初代会長であった可能性があり、その事実確認と事績について調べています。
- 回答
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お尋ねの江口倣吉氏の生年が元治2(1865)年であること、及び渡航は30代の頃ということから、同氏のシンガポールへの渡航は、明治33(1900)年前後の出来事と考えられます。
この範囲内で、下記の資料、データベース及びインターネット情報を確認しましたが、お尋ねの人物に関する記載は確認できませんでした。
シンガポール日本人会及び関連組織の設立や初期の代表については、以下の資料1から資料5まで及びインターネット情報1で確認しました。
【 】内は当館請求記号です。インターネットの最終アクセス日は2023年7月25日です。
末尾に「*」が付された資料は、国立国会図書館デジタルコレクションに収録されており、インターネット上で公開しています。
末尾に「**」が付された資料は、国立国会図書館デジタルコレクションに収録されており、国立国会図書館、図書館送信参加館内及び個人向けデジタル化資料送信サービスで公開しています。
資料1 シンガポール-日本人社会百年史 = 100 year history of Japanese community in Singapore : 星月夜の耀. シンガポール日本人会, 2016.12 【DC812-L204】
資料2 南洋及日本人社 編. 南洋の五十年 : シンガポールを中心に同胞活躍. 章華社, 昭13 【753-59】*
pp.679-730(369-395コマ目)に「在南邦人々名録」の掲載あり。(江口倣吉氏の記載なし)
資料3 西村点南 著. 在南三十五年. 安久社, 昭11 【718-39】**
資料4 日置黙仙 著. 南国順礼記. 平和書院, 大正5 【348-404】*
資料5 シンガポール日本人墓地 : 写真と記録. シンガポール日本人会, c1983 【GK13-921】**
p.210(214コマ目)の「シンガポール日本人墓地埋葬者氏名さくいん」【え】の箇所に江口氏の記載なし。
インターネット資料1 シンガポール日本人会 日本人墓地公園 ニュースレター
( https://www.jas.org.sg/news/the_japanese_cemetery_park_newsletter )
「2022年8 月15日 #8 二木多賀治郎と共済会」を確認しました。
新嘉坡日本人会は大正4(1915)年9月12日に設立が宣言され、10月29日にシンガポール政庁から集会法除外登録団体として認められ、正式に発足したとされています。初代会長は「鈴木重道」と記載されています。(資料1のp.56, pp.94-95、資料2のp.496(278コマ目), 500(280コマ目)、資料3のp.229(163コマ目)。ただし、資料1の典拠は資料1となっています。)
新嘉坡日本人倶楽部は大正11(1922)年2月に日本人会の附属事業として創立し、初代部長は「宇尾栄次郎」と記載されています。(資料2のp.502(281コマ目))
新嘉坡日本人会設立以前からの邦人団体としては、新嘉坡青年会倶楽部(又は青年会)と共済会に関する記載がありました。
新嘉坡青年会倶楽部は、明治42(1909)年5月又は明治41(1908)年5月に結成され、会長は林徳太郎と記載されています。(資料1のp.44では「1909(明治42)年」、資料2のp.503(281コマ目)では「明治41年」と記載)
その後、1910(明治43)年5月8日の青年会において日本人会への移行が可決され、会長は長田忠一(秋濤)が選出された旨が記載されています。
ただし、この時の日本人会はシンガポール政庁から在留外国人団体としての認可が下りず、正式な発足とはならなかったとも記載されています。(資料1のp.45, 47, 56)
共済会については、設立に関する記載は見当たりませんでしたが、資料4のpp.373-374(211-212コマ目), 379(214コマ目)及びインターネット資料1では、日本人墓地の認可を得るために活動した共済会の会長は「二木多賀次郎」(多賀治郎又は多賀二郎)と記載されています。
資料3のp.163(130コマ目)では、「二木多賀次」が共済会を組織し、日本人共同墓地を創設した旨が記載されています。
ただし、資料5のpp.8-9(12-13コマ目)では、日本人墓地の申請者であり管財者として登録された二木氏ほかが死去した後に共済会が発足、日本人会と共済会の共同で墓地の管理がされ、大正6(1917)年からは日本人会のみによる墓地の管理となった旨が記載されています。
なお、以下の有料ウェブサイトの無料部分において、西オーストラリア航路の乗客船員名簿(Western Australia, Australia, Crew and Passenger Lists, 1852-1930)中で、シンガポールを目的地として乗船していた「H.Eguchi」という氏名の掲載が確認できました。
・Ancestry( https://www.ancestry.com/ )
(First & Middle Name(s)を「Houkichi」、Last Nameを「Eguchi」で検索。)
State Library of Western AustraliaやNational Library of Australiaなどで同ウェブサイトを契約しているようです。これらの図書館に問い合わせることにより、江口氏の乗船記録の詳細に関して判明する可能性があります。参考までにご案内します。
また、幕末から昭和戦前期までの日本人の海外渡航記録を調査する場合は、以下の論文が参考になる可能性があります。
・海外渡航記録の調べ方. 外交史料館報 = Journal of the Diplomatic Archives. (33):2020.3. pp.161-174 【Z1-442】
( https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100086823.pdf )
調査済み資料及びデータベース
・戦前シンガポールの日本人社会 : 写真と記録 改訂版. シンガポール日本人会, 2004.5 【DC812-H209】
・前田清茂 訳. シンガポール事情 : 1819-現在. 天理教東南アジア研究室, 1972 【GE574-3】**
・マラヤ日本占領期史料フォーラム 編. マラヤ日本占領期文献目録 : 1941-45年 (南方軍政関係史料 ; 27). 龍溪書舎, 2007.12 【GE3-J1】
・外務省通商局 編. 海外日本実業者の調査 第1巻(明治36年-大正元年/解説). 不二出版, 2006.11 【D4-H720】
・外務省通商局 編. 海外日本実業者の調査 第2巻(大正2年-大正4年). 不二出版, 2006.11 0【D4-H721】
・外務省通商局 編. 海外日本実業者の調査 第3巻(大正7年・大正8年). 不二出版, 2006.11 【D4-H722】
・外務省通商局 編. 海外日本実業者の調査 第4巻(大正10年・大正13年). 不二出版, 2006.11 【D4-H723】
・外務省通商局 編. 海外日本実業者の調査 第5巻(昭和元年・昭和3年). 不二出版, 2007.6 【D4-H788】
・外務省通商局 編. 海外日本実業者の調査 第6巻(昭和6年・昭和10年). 不二出版, 2007.6 【D4-H789】
・青木 澄夫. 明治末期のシンガポールの日本人社会 : 幻の日本人会成立と日本語新聞掲載誌. 貿易風 : 中部大学国際関係学部論集 : Chubu international review / (9):2014.4. pp.129-151 【Z71-R432】
( https://elib.bliss.chubu.ac.jp/webopac/XC14000050 )
・伊藤友治郎 編. 南洋年鑑 第1-2回. 日南公司南洋調査部, 大正5-7【347-43】*
巻末に「興信録」又は「南洋要覽」の掲載あり。(シンガポール及び東南アジア島嶼部(除フィリピン)部分に江口倣吉氏の記載なし。)
・国立公文書館アジア歴史資料センター( https://www.jacar.go.jp/ )
・国際協力機構(JICA)海外移住資料館( https://www.jica.go.jp/domestic/jomm/index.html )
・横浜開港資料館( http://www.kaikou.city.yokohama.jp/ )
・国立国会図書館オンライン( https://ndlonline.ndl.go.jp/ )
・ディープライブラリー( https://dlib.jp/ )
・CiNii Research( https://cir.nii.ac.jp/ )
・国立国会図書館サーチ( https://iss.ndl.go.jp/ )
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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利用者からの聞き取り事項
・生まれたのは元治2年のはず。
・「倣吉」は「ほうきち」と読む。
・船員だった。
・シンガポールに渡航したのは30代の頃。
・渡航許可は大隈重信が出している。
以下の資料には記載がありませんでした。
・『シンガポールの日本人社会史』(1997年 芙蓉書房出版 )
・『シンガポールを知るための65章』(2021年 明石書店)
・『日本人出稼ぎ移民』(1992年 平凡社)
・『日本の移民研究』(1994年 日外アソシエーツ)
シンガポール日本人会公式HP(https://www.jas.org.sg/ 最終確認日2023.7.18)にある「沿革」を確認しました。
「戦前の日本人会」に、設立は1915年で「初代会長・鈴木軍医総監、副会長・中川菊三」とあります。このため、江口倣吉は「日本人会の前身」にある共済会(1889年設立)の会長だった可能性があります。
同HPにある「役員・組織図」では歴代会長が紹介されていますが、1957年以降しかありません。
- NDC
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- 人口.土地.資源 (334 10版)
- 参考資料
- キーワード
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- 江口倣吉
- シンガポール日本人会
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 経済社会(レファレンス)
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 公共図書館 図書館
- 登録番号
- 1000336780