レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016年02月05日
- 登録日時
- 2022/07/31 10:36
- 更新日時
- 2023/04/23 11:23
- 管理番号
- 吹-80-2022-003
- 質問
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解決
伊呂波歌(いろはうた)の元になったことば「諸行無常、是正滅法、生滅滅巳、寂滅為楽」が涅槃第十四聖行品(しょうぎょうぼん)に載っているはず。それを確認したい。
- 回答
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『新国訳大蔵経 涅槃部2 大般涅槃経(南本)』(大蔵出版 2008.12)の索引から
p152に「諸行は無常なり 是れ生滅の法なり」
p156に「生滅は滅し巳りて 寂滅を楽と為す」
の記載を確認した。
なお、上記は同書の「大般涅槃経 巻の第十三 聖行品第十九の三」の箇所に記載されている。「巻の第十四」の箇所ではなかった。
p133註記に「『聖行品之下』を明本に拠り『聖行品第十九之三』と改める。(北)は巻第十四『聖行品第七の四』。」(北)とはいわゆる『北本』のことで、凡例には「『大般涅槃経』四十巻、北涼、曇無讖訳、大正No.374.)」とあり、質問者が事前に見ていた『広辞苑』では『北本』の巻号「第十四」で記載されていたと思われる。
『新国訳大蔵経 涅槃部1 大般涅槃経(南本)』(大蔵出版 2008.4)p38-p39「大本涅槃経の構成」の対照表には「南本 19聖行品(11-13)、北本 7聖行品(11-14)」と記載あり。
- 回答プロセス
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まず、『広辞苑 第6版[1] あ-そ』(新村 出/編 岩波書店 2008.1)p211「いろはうた」の項にて質問者の事前調査事項を確認した。
次に、当館の検索機にてキーワード「涅槃経」で検索し、『新国訳大蔵経 涅槃部 大般涅槃経(南本)』(全5巻)を確認し、下記2冊に聖行品が掲載されていることがわかった。
『新国訳大蔵経 涅槃部1 大般涅槃経(南本)』(大蔵出版 2008.4)
『新国訳大蔵経 涅槃部2 大般涅槃経(南本)』(大蔵出版 2008.4)
また、伊呂波歌と「諸行無常、是正滅法、生滅滅巳、寂滅為楽」のことばの関係について確認しておくため、当館の検索機にて件名「いろは歌」で検索し、ヒットした資料の中から下記を参考にした。
『いろはうた』(小松 英雄/著 中央公論社 1979.11)p14~p15
「平安時代末期の真言宗の僧、覚鑁(かくばん)(1143年没)があらわした『密厳諸秘釈』第8に、「以呂波釈」と題する一節があり、そこにつぎのように説明がなされている。(中略)要するに、以呂波というのは「諸行無常、是正滅法、生滅滅巳、寂滅為楽」という『大般涅槃経(だいはつねはんぎょう)』の中にある偈の意味をとって、日本語でこのように表現したものだというのである。」という記述あり。
『いろは歌の謎を解く』(光田 慶一/著 武蔵野書院 2011.4)p10~p11
いろは歌は、「大般涅槃経(だいはつねはんぎょう)聖行品に出ている四句の偈(げ)「諸行無常、是正滅法、生滅滅巳、寂滅為楽」を翻案したものと言われている。この翻案説は、平安時代末期、興教大師(こうぎょうだいし)・覚鑁(かくばん)(1095~1143)によるいろは歌の注釈書『伊呂波釈可有事等(いろはしゃくあるべきことども)』の中で、初めて唱えられたものである。」との記述あり。
同書10~p11には、偈の書き下し文も記載されている。
『いろは歌の誕生』(光田 慶一/著 武蔵野書院 2011.4)p11
「現在ではいろは歌は、仏教経典『大般涅槃経』所載の四句の偈になぞらえて、次の四つの句から成る、今様形式の同じ文字歌として理解されるのが普通である。 色は匂へど散りぬるを(諸行無常)我が世誰ぞ常ならむ(是生滅法)有為の奥山今日越えて(生滅滅已)浅き夢見し酔ひもせず(寂滅為楽)」との記述あり。
『「いろは歌」の暗号』(村上 通典/著 文藝春秋 1994.1)p17
「『涅槃経』からとった「雪山童子」(上巻、第10話)と題する物語に、「いろは歌」の解説に欠かせない漢詩が載っている。その説明のために、『大辞林』の雪山童子に関する解説を借りよう。(中略)
せっせんげ【雪山偈】涅槃経(ねはんぎょう)に出る四句の偈「諸行無常、是正滅法、生滅滅已、寂滅為楽」のこと。釈迦が雪山童子として修行していたとき、帝釈天が羅刹(らせつ)に変じて現れ、前半のみを説いた。釈迦は、後半を聞くために、身体を羅刹に与えたという。いろは歌はこの偈の意をとったものという。諸行無常偈。
真言宗の開祖=空海が「いろは歌」の作者だと、最初にいいふらしたのは、誰の仕業か分からない。だが、「いろは歌」は「雪山偈」を意訳したものだといいだしたのは、平安末期の真言宗の僧=覚鑁(1095~1143)である。」との記述あり。
- 事前調査事項
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質問者は、『広辞苑』で「いろはうた」の項に、「・・・涅槃経第十四聖行品の偈(げ)「諸行無常、是正滅法、生滅滅巳、寂滅為楽」の意を和訳したものという。・・・」との記載を確認済。
- NDC
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- 経典 (183 10版)
- 音声.音韻.文字 (811 10版)
- 参考資料
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塚本, 啓祥, 1929- , 磯田, 煕文. 新国訳大蔵経 涅槃部 2. 大蔵出版, 2008.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009985360-00 , ISBN 9784804380452 -
塚本, 啓祥, 1929- , 磯田, 煕文. 新国訳大蔵経 涅槃部 1. 大蔵出版, 2008.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009353406-00 , ISBN 9784804380421 -
新村出編 , 新村, 出(1876-1967). 広辞苑 あ-そ- 第6版. 岩波書店, 2008-01.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000074-I000542171-00 , ISBN 9784000801225 -
小松英雄著 , 小松, 英雄. いろはうた : 日本語史へのいざない. 中央公論社, 1979. (中公新書, 558)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I009115487-00 , ISBN 4121005589 -
光田慶一 著 , 光田, 慶一. いろは歌の謎を解く : 物部良名の言語遊戯 新装版. 武蔵野書院, 2011.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000011179165-00 , ISBN 9784838604289 -
光田慶一 著 , 光田, 慶一. いろは歌の誕生 : 良名仮名遣から見た舞台裏. 武蔵野書院, 2011.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000011179170-00 , ISBN 9784838604272 -
村上通典 著 , 村上, 通典, 1935-. 「いろは歌」の暗号. 文芸春秋, 1994.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002303611-00 , ISBN 4163483306
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塚本, 啓祥, 1929- , 磯田, 煕文. 新国訳大蔵経 涅槃部 2. 大蔵出版, 2008.
- キーワード
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- いろは歌
- 伊呂波歌(いろはうた)
- 涅槃経(ねはんぎょう)
- 聖行品(しょうぎょうぼん)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000319370