レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年10月06日
- 登録日時
- 2023/10/13 11:34
- 更新日時
- 2023/10/28 09:26
- 管理番号
- 県立長野-23-101
- 質問
-
未解決
ドラマの中で失恋後に海に行くシーンがあったが、失恋後に海に行く理由や起源があれば知りたい。
- 回答
-
失恋後に海に行くことについて、具体的に記述のある資料は確認できなかった。関連資料として、日本における海のイメージについて記述のある以下の資料を紹介した。
・『海辺の恋と日本人 ひと夏の物語と近代』瀬崎圭二著 青弓社 2013【365.7/セケ】
明治時代以降の海辺のイメージについて、文学作品を中心に論じている。
p.53「第2章 明治後期の海辺の物語」のp.54に、近代以降の海辺の持つイメージについて「明治三十年代は、海水浴がレジャーへと化していく時期であり、夏の海辺で男女が出会う物語がステレオタイプなものとして生産/再生産され始める時期である」とある。また同章で、海辺のイメージ形成に影響を与えた可能性のあるものとして、この時期に人気を得た尾崎紅葉の『金色夜叉』や徳富蘆花の『不如帰』などを挙げている。
戦後の海辺のイメージはp.153「第5章 不良から太陽族へ」で、昭和30年発表の湘南を舞台とした石原慎太郎の小説『太陽の季節』とその映画化、当時の流行語となった「太陽族」を挙げている。
「太陽族」以後の1970-80年代の海のイメージは、p.183「第6章 カリフォルニアと南の島」の中のp.212に「(前略)明るく乾いたカリフォルニアの海辺のイメージや、やや寂れたノスタルジックなイメージ、あるいは都市生活の疲弊を癒す南国のリゾートのイメージだ。」とある。また、このイメージが見られるものとして昭和51年創刊の青年男性向け雑誌「POPEYE」を中心に、『パッシング・スルー』などの片岡義男の小説、わたせせいぞうの漫画『ハートカクテル』などの作品を挙げている。
なお、「太陽族」は『日本国語大辞典 第8巻』(小学館国語辞典編集部編 小学館 2001【813.1/シヨ/8】p.759)によると「昭和三〇年(一九五五)に発表された石原慎太郎の小説「太陽の季節」が広く読まれて流行した語。既成の秩序にとらわれないで、奔放に行動する戦後派青年の典型の一つ。」と説明がある。また、その外見については『明治・大正・昭和の新語・流行語辞典』(米川明彦編著 三省堂 2002【814.7/ヨア】)のp.186に「彼らの特徴はマンボズボンに襟の大きく開いたシャツ、GIカットのような「慎太郎刈り」である。」とある。
・『族の系譜学 ユースサブカルチャーズの戦後史』難波功士著 青弓社 2007【361.5/ナコ】
p.110「第3章 太陽族の季節」
上の資料で参考文献として引用されている資料。第3章で「太陽族」について取り上げている。
p.122「4 太陽族のその後」の中に「(前略)太陽族のスタイルはビーチ・ファッションとして定着し、その行動様式も若者全般へと拡散していった。」とある。
・『浜辺の文学史』鈴木健一編 三弥井書店 2017【910.2/スケ】
p.4 鈴村健一「浜辺の文学史」 <ニ 美意識>
p.42 松本真奈美「平安和歌と浜辺の景物」
浜辺の景物を詠んだ恋の和歌が紹介されている。p.275の杉本元明「伊豆半島と文学」で尾崎紅葉の『金色夜叉』について触れられているが、恋愛や海のイメージとの関連については言及がない。
・『現代日本の場面設定辞典』ライブ編著 カンゼン 2018【901.3/ライ】
p.40「海水浴」の項目にこの場面で見えるもの・聞こえる音・感じるにおいや味・感じる感覚・想定される状況が具体的に列挙されている。恋愛に関わるものには「楽しそうに談笑する家族やカップル」「「水着すごく似合ってるね」「ありがとう」というカップルの会話」「「日焼け止め塗って」「いいよ」というカップルの会話」「好きな子と海水浴に行き、水着姿を見ることができた時のうれしさ」「彼氏に水着姿を褒められた時のうれしさ」が挙げられている。
・『今と未来がわかる色彩心理』南涼子著 ナツメ社 2023【141.21/ミリ】
p.123「第4章 色のイメージと心理的効果」<青のイメージと青がもたらす心理的効果>
海ではなく色のイメージだが、「青の具体的連想物」として列挙されているものの中に「海」があり、その下に「青が象徴する物事」が列挙されている。
以下の資料は失恋について記述があるものの、海に行くこととの関係について具体的な記述はなかった。
・『意思決定の心理学 脳とこころの傾向と対策』阿部修士著 講談社 2017【141.5/アノ】
p.111「第四章「人間関係」にまつわる意思決定―恋愛と復讐のメカニズム」<恋愛をコントロールする?>に「失恋の痛手から回復すること」について言及があるが、海との関わりには言及がなかった。
・『喪失学「ロス後」をどう生きるか?』坂口幸弘著 光文社 2019【141.6/サユ】
p.19に喪失の例として「失恋」が挙げられているが、喪失後の行動や向き合い方の中で海に関することについては言及がなかった。
また、インターネット上の資料として以下の論文が見つかったが、主に撮影技法について述べられており、恋愛や失恋の場面と海の風景の演出との起源については触れられていなかった。
・照沼博康・横内憲久・岡田智秀著「日本映画にみる海の風景の意味と演出方法に関する研究」
『景観・デザイン研究講演集 no.3』2007(令和5年10月13日最終確認)
(土木学会>土木図書館>学術論文等公開ページ>景観・デザイン研究講演集>2007.12 第3回)
- 回答プロセス
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1 当館OPACで「海」「失恋」「海 恋愛」などで全項目検索し、関連しそうな資料の内容を確認する。
2 CiNii Researchで「失恋」「恋愛」「海 表現」「海 イメージ」などでフリーワード検索。
3 レファレンス協同データベースで「恋愛」「失恋」「海 イメージ」などで検索し、類似の事例がないか確認。
4 近代以降の流行語辞典で関連するものがないか確認。
5 「心理学」「文化」「映画」「文学史」などの書架で関連がありそうな資料を探す。
6 海のイメージに関わる資料を参照する。
<その他調査資料>
『朝倉実践心理学講座 3』海保博之監修 朝倉書店 2013【140.8/アサ/3】
『朝倉実践心理学講座 7』海保博之監修 朝倉書店 2013【140.8/アサ/7】
『朝倉実践心理学講座 8』海保博之監修 朝倉書店 2013【140.8/アサ/8】
『恋の悩みの科学 データに基づく身近な心理の分析』松井豊編著 福村出版 2023【141.62/マユ】
『風景構成法「枠組」のなかの心象』 伊集院清一著 金剛出版 2013【146.8/イセ】
『芸術療法』飯森眞喜雄編 日本評論社 2019【146.8/イマ】
『大切な人を亡くしたあなたに 悲しみを乗り越えず、受け入れる』ジュリア・サミュエル著 辰巳出版 2018【146.8/サジ】
『私たちはなぜ傷つけ合いながら助け合うのか 心理学ビジュアル百科 社会心理学編』越智啓太編 創元社 2022【361.4/オケ】
『図説世界シンボル事典』ハンス・ビーダーマン著 八坂書房 2000【389.03/ビハ】
『海から見た日本人 海人で読む日本の歴史』後藤明著 講談社 2010【389.1/ゴア】
『ストレスの科学と健康』二木鋭雄編著 共立出版 2008【493.49/ニエ】
『海洋図の歴史 人は海をどのようにイメージしてきたか』ピーター・ウィットフィールド著 ミュージアム図書 1998【557.78/ウピ】
『昭和歌謡 流行歌からみえてくる昭和の世相』長田暁二著 敬文舎 2017【767.8/オギ】
『早引き類語連想辞典』米谷晴彦編著 ぎょうせい 2001【813.5/マハ】
『明治大正の新語・流行語』槌田満文著 角川書店 1983【814.7/ツミ】
『感情類語辞典』アンジェラ・アッカーマン著 フィルムアート社 2020【901.3/アア】
『海の文学史』鈴木健一著 三弥井書店 2016【910.2/スケ】
『日本近代文学大事典 第4巻』日本近代文学館編 講談社 1977【910.26/ニホ/4】
『日本現代文学大事典 人名・事項編』三好行雄[ほか]編 明治書院 1994【910.26/ミユ】
『絵でわかる!脳っておもしろい 2』川島隆太監修 岩崎書店【491/エ/2】
『喪失感 からっぽな心をだいて…』アイリーン・キューン著 大月書店 2005【141/キ】
- 事前調査事項
- NDC
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- 普通心理学.心理各論 (141 10版)
- 映画 (778 10版)
- 文学理論.作法 (901 10版)
- 参考資料
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瀬崎圭二 著 , 瀬崎, 圭二. 海辺の恋と日本人 : ひと夏の物語と近代. 青弓社, 2013. (青弓社ライブラリー ; 77)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I024693639-00 , ISBN 9784787233615 -
難波功士 著 , 難波, 功士, 1961-. 族の系譜学 : ユース・サブカルチャーズの戦後史. 青弓社, 2007.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008571672-00 , ISBN 9784787232731 -
日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編 , 小学館. 日本国語大辞典 第8巻 第2版. 小学館, 2001.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003023983-00 , ISBN 4095210087 -
米川明彦 編著 , 米川, 明彦, 1955-. 明治・大正・昭和の新語・流行語辞典. 三省堂, 2002.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003682531-00 , ISBN 4385360669 -
鈴木健一 編 , 鈴木, 健一, 1960-. 浜辺の文学史. 三弥井書店, 2017.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I027981299-00 , ISBN 9784838233151 -
ライブ 編著 , ライブ. 現代日本の場面設定辞典 = Dictionary of Contemporary Japanese Scene Setting. カンゼン, 2018.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I029331049-00 , ISBN 9784862554833 -
南涼子 著 , 南, 涼子, 1972-. 今と未来がわかる色彩心理. ナツメ社, 2023. (ビジュアル図鑑)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I032523158-00 , ISBN 9784816373015
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瀬崎圭二 著 , 瀬崎, 圭二. 海辺の恋と日本人 : ひと夏の物語と近代. 青弓社, 2013. (青弓社ライブラリー ; 77)
- キーワード
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- 失恋
- 恋愛
- 海
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000339704