レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015年05月27日
- 登録日時
- 2015/06/26 15:47
- 更新日時
- 2015/06/26 15:47
- 管理番号
- 企-150002
- 質問
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解決
「もじずり」の布の色柄の絵、または写真が載っている本があるか。関連資料もあれば紹介してほしい。原文は次の和歌。
河原左大臣「みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑに乱れそめにし われならなくに」
- 回答
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もじずり(もぢずり、毛地摺、文字摺、もちすり)は、現在技法が消滅し、現物も残っていないようです。絵図が掲載されている資料は何点かありました。以下詳細です。
※( )内の8けたの数字は当館の資料番号です。「常置」の資料は貸出ができません。
『福島県民百科』(10583839・常置)
p.432『信夫毛地摺と安達絹」の項目あり。
「(略)摺文・摺衣・青摺といわれて『万葉集』にもよまれ、平安時代には都の殿上人や僧侶に愛されたというが、正当な技法は鎌倉時代に入ると幻のように消滅してしまった。」
『平安時代史事典 本編 上』(20666434・常置)
p.1129~1130「信夫文字摺」の項目あり
「摺染の一種。忍草の葉や茎から抽出した色素を布帛に摺りつけて文様を染め出したもの。特に陸奥国信夫郡の忍草は有名で、これを用いて乱れた文様を表したというが、遺品が残っていないため実体は判然としない。」
『染色事典』(11737731・常置)p219や『草木染の事典』(11739380・常置)p137にも「しのぶもじずり」(表記は「忍文字摺」、「忍捩摺」)の項目があり、大きな石の上に布を広げて忍草をのせ、上からたたいて摺染する方法が記載されています。
『草木染の事典』(11739380・常置)の「摺染→摺衣」項には、『貞丈雑記』からの引用で、模様を彫った板の上に布を置き、葉や花を包んだ布で摺ることで模様を染めつける方法が紹介されています。
『染めの事典』朝日新聞社 1985年(12652889)貸出可
p.94「摺絵」の項に「型を用いて布帛などに文様を染めつける技法。古くは色土や植物の汁を使用した丹摺りや青摺りなどがあり、摺衣として用いられてきた。」とあり、正倉院の「摺絵花鳥文黄絁」の写真が掲載されています。p.104には青摺衣として山藍染めが紹介されており、それを着用した舞人の絵も掲載されています。
ただし、『正倉院染織品の研究』尾形充彦著 思文閣出版 2013年(22700264)では「染料や墨を付けた版型の上に裂地を載せて擦った」(p.31)としており、技法については論が分かれるようです。
『福島市史 第1巻』1970年(10410660)貸出可
p.272~274「信夫もぢずり」の項目あり
「もちずり絹、しのぶ草文様」(原図:『法然上人絵伝』横山玄彰【しのふもちすり】より)の絵が描かれています。
また、この和歌が使われている『伊勢物語』第1段の図版が次の資料に掲載されています。絵巻や色紙に描かれているものなので正確な模様ではないかもしれませんが、参考までに紹介します。
『日本の意匠 第6巻 伊勢物語・詩歌・能楽』京都書院 1984年(11743937)貸出可
p.4 伊勢物語絵色紙(カラー)。男性が狩衣を女性に差し出しているが、しのぶずりと思われる模様が比較的はっきりとわかる。
『伊勢物語と芦屋』片桐洋一 芦屋市立美術博物館 2000年(21392733)貸出可
p.132風流錦絵伊勢物語の絵(カラー)。
『図説日本の古典5 竹取物語・伊勢物語』片桐洋一ほか編 集英社 1988年
(11887676)貸出可
p.105伊勢物語(嵯峨本)の絵(原本がモノクロ)、p.145伊勢物語(小野家本)の絵(カラー)。
『「観る」物語』斎宮歴史博物館 2002年(21543095)貸出可
p.3 伊勢物語図色紙(カラー)とp.30伊勢物語嵯峨本の絵(モノクロ・上記のものと同じ)。
色については次の資料が参考になるかもしれません。
『草木染染料植物図鑑1~3』山崎青樹著 美術出版社 2012年(22582407・22583736・22591671)
染色に使われる植物の紹介、登場する文献、染色方法と植物の写真、色標本(染色した布の写真)が掲載されています。摺染に使われたものとして前出の事典類に記載のある植物については次のとおりです。
忍草:記載なし ムラサキ:1のp.216・217 ヤマアイ:1のp.230・231 ハンノキ:1のp.182・183 オオボウシバナ(古名:月草):3のp.46・47
また、再現されたものを次のサイトで見ることができます。
WEB「日本珍スポット百景」より 『もぢずりって何だ?疑問がやっと氷解「文知摺観音」』
http://b-spot.seesaa.net/article/392199021.html
平成19年に「かわまた織物展示館」が、再現実験した様子が載っています。
WEB「蝦夷 陸奥 枕歌」
http://www.t-aterui.jp/fukushima/f_sinobumotizuri4.html
(財)福島県文化振興事業団 福島県文化財センター白河館が再現作成した信夫染が見られます。
その他調査した資料
『図説 福島県史』(20734265)貸出可
『図説 福島市史』(10410793)貸出可
- 回答プロセス
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レファレンス協同DBの事例で紹介されていた『福島市史』等の福島県の資料、4門の染色関係、9門の和歌集関係の書籍、再現されているWEBサイトを参照する。
さらに、質問者が高校教員からであることから、出典の『伊勢物語』関連で図版を中心に探す。
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
- キーワード
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- しのぶ
- もじずり
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 書誌的事項調査 所蔵調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 団体
- 登録番号
- 1000176465