■鉱山用電気鉄道関連資料について
以下の資料に関連の記述を確認しました。
・『栃木県史 史料編 近現代9』(栃木県史編さん委員会/編 栃木県 1980)
県史の中でも、足尾銅山関係史料を中心に編纂された資料です。
目次からは特定できなかったため精読しての調査は行っておりませんが、年代ごとの概況や経営沿革などが収録されており、電気鉄道についてもいくつか記述されているようでした。
・『古河潤吉君伝』(五日会/編、発行 1926)
p.40-43「本記 第三章 足尾佐渡見學時代 一 足尾銅山見學」の項に「明治十七年分礦業景況取調書」が掲載されており、明治十七年に抗外鉄道としてドコビール式軽便鉄道に着手した等の記述があります。
・『木村長七自伝』(茂野吉之助/編 木村豊吉 1938)
p.231-237「七十 足尾銅山の水力電氣」の項に、水力発電を開始した当時の状況とともに、自製電車の運転を始めたことが記述されています。
また、「…(前略)…本邦に於ける電車の實用は之れ亦足尾銅山が嚆矢でありませう。」との記述が確認できました。
・『名山 足尾』(塩野良作/著 1924)
p.25-27「第一編 足尾銅山 第四章 採鐄作業 第一節 坑道延長三百二十餘哩」の項に、簡易ですが、運搬坑道に単線の電車軌道があると記述されています。
p.27-30「第一編 第四章 第二節 世界の粋を蒐めた坑内機械」の項に、電気機関車の軌道距離、使用台数等が記述されています。
p.30-32「第一編 第四章 第三節 坑内見学大學生の手記」の項に、電気機関車に乗った感想や、坑内を走る様子が記述されています。
なお、残念なことに、当館所蔵資料ではp.33-36が欠落しているため、手記の全文は確認できませんでした。
また、図版のページに「本山有木地並電車坑道」の写真が掲載されています。
・『足尾ところどころ』(藤田敏雄/著 足尾町公民館 1975)
p.39-40 「Ⅰ 地域の今昔 中央地域 25 松原」の項に、明治26年に日本最初の電車が通ったと簡易な記載があります。
・『創業100年史』(日本経営史研究所/編 古河鉱業 1976)
p.132-135「第3章 足尾銅山の発展 第1節 鉱源開発と抗内設備の進歩 2.坑内諸設備の進歩 わが国最初の抗内運搬・通信設備」の項に、抗内運搬設備の整備過程が記述されており、電気機関車についても触れられています。
また、「第3-1表 抗内技術の導入」が掲載されていますが、出所として『明治工業史』と『日本鉱業発達史』が挙げられています。(p.134)
・『明治工業史 鉱業篇』(日本工学会/編、発行 1930)
p.204「第二編 明治時代金属工業の発達 第二章 採鉱の発達 第六節 運搬」の項に、明治三十年に足尾銅山に電気機関車が輸入されたことや、その特徴、使用台数等が記述されています。
・『日本鉱業発達史 上巻 1』(鉱山懇話会/編 原書房 1993)
昭和7年に出版された原本の復刻版です。
p.234-236「第二編 金属鑛業 第一 採鑛 第二章 採鑛の発達 第六節 運搬 1 明治以後に於ける運搬法の變遷の趨勢」の項に、坑外運搬の変遷について明治二十四年頃足尾で坑外電気機関車の使用が始まったことが述べられています。
また、p.246-247「第二編 第一 第二章 採鑛の発達 第六節 運搬 3 坑内運搬方法の變遷 (ロ)坑道運搬 三、機械運搬 a 電気機関車運搬」の項に、各鉱山の電車使用の沿革について記述されており、章末には「足尾に於ける運搬法の變遷」がまとめられています。
p.246には「第三十六表 各鑛山現在機関車一覧表(各山報告による)」が掲載されています。
・『足尾銅山の産業遺跡』(足尾町教育委員会/編 足尾町教育委員会 2006)
p.219-230「日本最初の電気機関車の発達」の項に、電気機関車についての記述があります。
なお、引用元として『古河潤吉君伝』、『足尾ところどころ』等があげられています。
p.337-342「足尾銅山近代化主要事項年表」に電気鉄道の記述があります。
■写真について
当館で所蔵している足尾銅山関連の写真帖等を確認したところ、以下の資料に関連する写真が掲載されていました。
・『古河鑛業會社寫真帖』
出版年や撮影時期は不明ですが、「足尾通洞坑口」という写真に電気鉄道と思われるものが写っています。
冒頭に当時の営業所等の一覧がありますので、社史等と合わせて使うことで、成立年代を予想することはできると思われます。
・『足尾銅山写真帖』(新田商店)
出版年や撮影時期は不明ですが、複数の写真に電気鉄道と思われるものや線路が写っています。
・『足尾銅山』(小野崎一徳/〔撮影〕,小野崎敏/編著 新樹社 2006)
掲載の複数の写真に電車が写っています。
また、p.72-75「新技術④運搬」の項に、簡易鉄道や電車等の写真と解説があります。
・『足尾銅山図絵』(稲葉誠太郎/著 明治文献 1972)
こちらは写真ではなく、田代古崖によって明治四十年に描かれた図絵になります。
「図2 大通洞元」、「図3 運搬用電気機関車」、「図5 通洞坑内所見と坑内の電車」に電気電車が描かれています。
あわせて、付属の解説p.107-113「運搬用電気機関車」の項に、図3を含む解説が掲載されています。
また、当時の写真に関しましては、以下のデータベース等も参考になるかと思います。
・足尾銅山・写真データベース―再甦・足尾銅山の写真―
古河鉱業の専属写真師であった小野崎一徳氏の孫にあたる、小野崎敏氏の収集・保管している写真をデータベース化したウェブサイトです。
フリーワード等で写真の検索ができ、解説サイトには写真の利用等についても記載されています。
(参考)
https://sites.google.com/a/sci-journalism.org/ashio/ (2022.12.22確認)
・栃木県立文書館
栃木県立文書館が寄託されている文書の中に、足尾銅山関係の「新井常雄氏撮影写真」があります。
(写真の内容や撮影の時期等の詳細は不明です。)
(参考)
https://www.pref.tochigi.lg.jp/m58/education/bunka/monjyokan/toppage2.html (2022.12.22確認)