レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023/09/15
- 登録日時
- 2023/10/03 00:30
- 更新日時
- 2024/01/18 15:16
- 管理番号
- 15694546
- 質問
-
未解決
金属製の鈴の起源・歴史(いつから、どのように、なぜできたのか)について調査していただきたいです。
また、金属製の鈴がいつから一般的になったのかも知りたいです。
鈴の起源について調査すると土鈴という土製の鈴が縄文時代に見つかったという記述が見つけられたのですが、土製の鈴ではなく、金属製の鈴の起源・歴史について知りたいです。
また、日本での起源や、いつ頃日本に伝わったのか、ではなく世界全体で見たときの鈴の起源・歴史について知りたいです。
楽器としての鈴の本は一通り見ましたので、それ以外の本を紹介してください。
- 回答
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金属製の鈴の起源および(一般化を含む)歴史について、以下のとおり調査いたしましたが、明記された資料は見当たりませんでした。
起源については、調査済みの内容と同様に不明とする次の資料がありました。
【 】内は国立国会図書館請求記号です。書誌事項末尾に◎を付した資料は国立国会図書館デジタルコレクションの国立国会図書館内/図書館・個人送信対象資料です。
田川郷土研究会 編『英彦山 増補』葦書房, 1978.9【GC267-61】◎
* pp.503-514境忠二郎「英彦山土鈴考」:「鈴の起源は古く、詳かでないが、古来から各国に存する原始的な楽器の一つであったことには間違なく」とあります(p.506)。
資料1~4は、考古学的な見地から金属鈴の初期例に言及しているようです。
なお、調査済みの『日本大百科全書』にあるとおり、鈴には複数の形態があるようです(辞典によっては、「割れ目のある中空の器体内部に丸を封じ込めたもの」のみで言及している場合もあります)。以下で紹介している資料1~4等にて言及されているものがどのような形態であるのかは、利用者ご自身でご確認ください。
また、「鈴」という呼称が表すものの日中の相違については、後述の『日本考古学事典』【GB8-G62】の記述もご参照ください。西洋を念頭においた同様の留意点として、『研究社新和英大辞典 第5版』【KS12-H44】において、「鈴」は「a (little) bell」とされていますが(p.1387)、『研究社新英和大辞典 第6版』【KS12-G205】において、「bell」は「1 a ベル、鈴」「1 b 鐘、釣鐘」と記載があります(p.227)。
資料1:Suspended music : chime-bells in the culture of Bronze Age China / Lothar von Falkenhausen
University of California Press, c1993【GE75-A15】
* p.132:“China seems to have produced the earliest bells anywhere in the world. We have noted in Chapter 3 that the earliest metal bells may have been derived from pottery prototypes, which seem to go back in time to the late stage of the Yangshao culture (early third millennium B.C.). ”とあります。
資料2:Encyclopedic dictionary of archaeology Second edition (Springer reference)
Barbara Ann Kipfer. Springer, [2021]【G32-D1】
* volume 1 p.153「Bell」:“The earliest bell founding(i.e., the casting of bells from molten metal) is associated with the Bronze Age. The ancient Chinese were superb founders, their craft reaching an apex during the Chou Dynasty(c 1122-221BC). ”とあります。
資料3:宮本一夫, 白雲翔 編『中国初期青銅器文化の研究』九州大学出版会, 2009.2【GE75-J6】
* pp.13-15白雲翔「第1章 中国古代初期銅器と青銅起源に関する諸問題」>「3 初期銅器の類型と特徴」>「(4)礼楽儀仗」:p.13に「鈴」の項目があります。襄汾陶寺出土の1点について言及があり、「年代は中原龍山文化陶寺類型後期で、絶対年代は紀元前2085年である」とされ、「これまでのところ、年代が最も古い銅鈴の実物であり」とあります(p.13)。
資料4:春成秀爾 著『祭りと呪術の考古学』塙書房, 2011.3【GB115-J46】
* pp.79-109「二部 農耕儀礼と青銅器」>「4 銅鐸と社会」:「中国では、鈴は最初、新石器時代の仰韶文化(6,000年前)に土製品が現れ、龍山文化末(3,900年前)に純銅製品に置きかわり、夏代(二里頭文化)(3,700年前)から青銅製品が普及する」とあります(p.80)。
田中琢, 佐原真 [ほか]編『日本考古学事典』三省堂, 2002.5【GB8-G62】
* p.454「鈴」:「中国でいう鈴には、有鈕有丸のものと、銅鐸・馬鐸・風鐸のように日本で鐸と呼ぶ有鈕有舌のものとの2種があり、日本の呼称とは違う」とあります。
[そのほかの主な調査済み資料およびウェブサイト]
森瀬雅介, 斉藤岳南 著『日本の土鈴』徳間書店, 1977.9【KB297-53】
* pp.1-2鈴木正彦「土鈴礼讃」:「鈴の起源が呪的な信仰にもとづいたものであり、その音色によって悪魔を払うものとされたことは、まず間違いがない」とあります。
* pp.3-8森瀬雅介「壱 土鈴に寄せて」:日本で一般に「すず」とよんでいるものについて、古代中国では鈴と鐸との二つを意味しているとの記載があります。また、金属製の鈴(金鈴)についても言及があり、古代中国の鈴や鐸が金属製であった旨記載があります。
Eastern Arizona College Foundation(https://eacalumni.org/home)> The Mills Collection and other Archaelogical Publications
*「Bells: Cascabeles & Tintinnabulum, John Horne」>「SOME VERY EARLY SMALL BELLS IN THE OLD WORLD 」(p.22):https://eacalumni.org/mills-collection-and-related/mills-collection-and-other-archaeological-publications
『世界考古学事典 上』平凡社, 1979.2【G32-1】◎
* p.563「鈴」:「日本固有の楽器のやまと言葉による名称」とあります。
日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編『日本国語大辞典 第7巻 第2版』小学館, 2001.7【KF3-G103】
* pp.928-929「すず【鈴・鐸】」
国史大辞典編集委員会 編『国史大辞典 第8巻 (すーたお)』吉川弘文館, 1987.10【GB8-60】
* p.100「鈴」:「金属性の鈴は、五世紀ごろ三国時代の朝鮮半島から伝来したのが最初と考えられている」との記載があります。
『年表で見るモノの歴史事典 下』ゆまに書房, 1995.11【GB9-G8】
* pp.195-199「金属」:「年代 世界の金属史」によると、「B.C.7000■自然銅の使用始まる」とあり、「B.C.3000■青銅器時代始まる」とあります。
高橋健自「論說 勾玉と鈴とに就いて」(『考古学雑誌 = Journal of the Archaeological Society of Nippon』18(7)([345]) 1928.7 pp.373-384【Z8-182】◎)
尾崎雄二郎, 竺沙雅章, 戸川芳郎 編集代表『中国文化史大事典』大修館書店, 2013.5【GE8-L2】
西谷正 編『東アジア考古学辞典』東京堂出版, 2007.5【GE8-H18】
日刊工業新聞社mook編集部 編『身近なモノの履歴書を知る事典 : アイスクリームからワンマンバスまで : 「モノづくり」誕生物語』日刊工業新聞社, 2002.11【DH358-H1】
斎藤忠 著『日本考古学文献総覧』学生社, 1997.6【GB1-G28】
J-STAGE(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja)
ジャパンナレッジ Lib(当館契約データベース)
身装文献データベース(国立民族学博物館)(https://htq.minpaku.ac.jp/databases/mcd/publications.html)
日本民俗学文献目録データベース(国立歴史民俗博物館)(https://www.rekihaku.ac.jp/up-cgi/login.pl?p=param/ni2/db_param)
ウェブサイト最終アクセス:2023年9月14日
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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鈴の起源について
鈴の起源について「鈴を打ち鳴らせば悪魔をはらう呪力があると信じられ、神事の祭具などに用いられたのが起源と思われる」と『日本大百科全書』に記載されています。しかし、『日本伝統楽器小辞典』には「鈴の発祥および歴史は不明である」との記述もあります。
金属製の鈴については、『邦楽百科辞典』に「金属製の鈴は古墳時代後期に大陸より伝来した」との記述があり、『世界大百科事典』にも「青銅のスズは、他の器物と一体につくられた付属のスズが中国では殷代に始まり、単体の独立したスズは、それより遅れるらしい」とあります。
鈴がどのようにして、いつ頃日本へ伝わったのかは分かったのですが、世界全体で見たときの金属製の鈴の起源・歴史については分かりませんでした。
主な参考資料
・世界大百科事典(平凡社、2007年出版)
・日本大百科全書(小学館、1987年出版)
・日本伝統楽器小辞典(エイデル研究所、2006年出版)
・世界の楽器百科図鑑 楽器の起源と発展(東洋新書、2002年出版)
・邦楽百科辞典 雅楽から民謡まで(音楽之友社、1984年出版)
- NDC
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- 風俗習慣.民俗学.民族学 (380)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 人文(レファレンス)
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000339256