レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022/02/16
- 登録日時
- 2022/03/02 00:30
- 更新日時
- 2022/04/27 10:39
- 管理番号
- 11411483
- 質問
-
未解決
徳川家康の側室で、忠輝の母である茶阿局(朝覚院)を題材にした講談があるらしいが、その講談台本が掲載されている資料を知りたい。
以下の『徳川妻妾記』によると、自分(茶阿局)の夫が代官に謀殺されたため、鷹狩りに来ていた徳川家康に仇討ちを直訴、家康はこの話を聞き届けると共に女を愛妾として召し出し、茶阿局と名付けて寵愛、のち忠輝の生母ともなった、というような内容のようです。
代官に謀殺されたという部分や、鷹狩に来ていた家康に直訴したという部分等、諸説あるようです。
p.47には「茶阿局ほど講談・通俗小説でその名を知られたものは他にない。」という記述があります。
(典拠)『徳川妻妾記』高柳金芳著 雄山閣 2003.8(「江戸城大奥の生活」(1965年刊)の抜粋)
pp.47-51:「家康の巻 茶阿局」
- 回答
-
茶阿局を題材にした講談の活字本は見当たりませんでした。
以下に、「阿茶」と表記されているものも含め、断片的な記載が確認できたもの等、参考情報をご紹介します。
【 】内は、国立国会図書館請求記号です。書誌事項末尾に◎を付した資料は国立国会図書館デジタルコレクションの国立国会図書館/図書館送信参加館内公開資料、☆を付した資料はインターネット公開資料です。
資料1:土居 文人「実録『播磨国書写敵討』の成立--地方実録の創作方法の一事例」(『近世文藝』(通号 74) 2001.7 pp.13-25【Z13-907】)
* 江戸時代の実録小説において、架空の人物(村井立甫)の設定付けに茶阿局が用いられた例が紹介されています。
* 「実録」は、「講釈師が語った話を詳しくした講談の丸本を整理したものが多」いということです(『日本国語大辞典』第6巻【KF3-G103】pp.872-873「実録物」より)。
* J-STAGEにて全文の閲覧が可能です: https://doi.org/10.20815/kinseibungei.74.0_13
資料2:連載講談『徳川大奥物語』(『読売新聞』1918.11.10~1919.9.20 全300回)
* 1918.12.31猫遊軒伯知講演「講談[徳川大奥物語]=51 徳川家の繁栄」:「阿茶の局が上総介忠輝公をお生み申上げた」とあります。
* 第62回(1919.1.11)と第118回(1919.3.8)も、タイトルに阿茶の局の名があり、本文にも登場しますが、詳細は利用者自身でご確認ください。
* 猫遊軒伯知は講談師です(『昭和物故人名録 : 昭和元年~54年』【GB13-113】p.413より)。
* ヨミダス歴史館(当館契約データベース)にて確認。
資料3:今三余 作『講談日本外史 第6巻 徳川家康の巻 大衆版』興文社, 大正15【特110-443】☆
* pp.564-565:松平忠輝の処遇に関する記載があり、母の阿茶局への言及もあります。
* 該当箇所のURL: https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/916096/301
[その他の主な調査済資料およびウェブサイト]
『大衆芸能資料集成 第5巻』三一書房, 1981.9【KD811-8】
* pp.312-336「解説」:明治以降の講談の普及にあたり、速記の形で新聞・雑誌に連載された旨の記載があります。『講談雑誌』、『講談倶楽部』といった雑誌類のほか、『文芸倶楽部』にも講談速記が掲載されたとのことです。
* 『文芸倶楽部』については、ジャパンナレッジ Lib(当館契約データベース:日本近代文学館『文芸倶楽部 明治篇』を収録)の目次検索にて、合理的と考えられる範囲で調査を行いました。
市古貞次 責任編集『日本文学全史 4』学灯社, 1979.5【KG12-115】
* pp.573-602「第十三章 舌耕文芸」
芸能史研究会 編『日本の古典芸能 9』平凡社, 1971【KD22-1】
* 内容細目:「寄席 : 話芸の集成」
* pp.313-318「研究の手引」、pp.319-328「研究の手引 上方編」
有竹修二 著『講談・伝統の話芸』朝日新聞社, 1973【KD831-25】
* pp.307-310「講談の参考文献について」
国立国会図書館図書部 編『国立国会図書館蔵書目録 明治期 第6編 (文学)』国立国会図書館, 1994.9【UP111-E123】
『少年小説大系 別巻 2』三一書房, 1995.3【KH6-358】
* pp.650-654「立川文庫の目録」
吉川登 編『近代大阪の出版』創元社, 2010.2【UE17-J30】
* pp.129-164:四代目旭堂南陵 第五章「明治末~大正期大阪講談本の世界-立川文庫を中心に」
『日本文芸史 : 表現の流れ 第6巻』河出書房新社, 2005.7【KG12-H81】
* pp.200-201:第二部>第五章>第一節>「Ⅲ 講談本と立川文庫」
旭堂小南陵「浪花芸人講談本収集奮戦記」(『日本古書通信』51(6)(683) pp.3-5【Z21-160】)
* 著者の書庫には、「大阪の速記講談本は、ほぼ揃った」とあります。また、筆者は講釈師・4代目旭堂南陵(1949-2020)のようですが、没後のこれらの蔵書の所在等、詳細は不明です。
『都新聞 復刻版』【Z99-258】
* (1224-5111)(別冊):1889.2.1-1901.12.25 #明治期記事・人物索引
中村孝也 著『家康の族葉』講談社, 1965【288.3-N385i】◎
* pp.282-308「朝覚院河村氏於茶阿の方」:当時の史料中の言及を中心に、茶阿局に関するエピソードがまとめられています。伝奇的との言及があるものもありますが、基本的に史実に基づく考察です。
国書刊行会 編『柳営婦女伝叢 (国書刊行会刊行書)』国書刊行会, 1917【281.09-R99-K】☆
* 「玉輿記」のpp.20-22:「一、於茶阿殿の傳」
* 該当箇所のURL: https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1879210/18
ウェブサイトの最終アクセスは2022年2月14日です。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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【調査資料一覧】
・『徳川「大奥」事典』竹内誠, 深井雅海,松尾美恵子編 東京堂出版 2015.1
pp.226-227「第二部 第8章 江戸初期の大奥-家康・秀忠・家光・家綱 朝覚院(お茶阿)」
出自の詳細は不詳なこと、家康の元へ来るまでの経緯には諸説あること、法名が朝覚院であることなどがわかりますが、講談に関する記述はありません。
・『徳川家康』河出書房新社 1983.1(河出人物読本)
pp.137-152「家康をめぐる女性たち」(山岡荘八)
このうち、p.139、pp.142-143に茶阿局のことが書かれています。p.139には「この女性は講談にも出て来る島田の宿の鋳掛屋の後家で」という記述がありますが、演目等具体的なことは記載されていません。
・『参考書誌研究』53号(2000年10月)
pp.58-96「講談本の研究について 付講談登場人物索引、講談小題・異名索引」(中込重明)
「講談登場人物索引」(pp.65-87)には、<茶阿><朝覚院>の項目はありませんでした。
・『講談作品事典 上』吉沢英明編著 講談作品事典刊行会 2008.10
『同 中』吉沢英明編著 講談作品事典刊行会 2008.10
『同 下』吉沢英明編著 講談作品事典刊行会 2008.10
『講談作品事典 続編』吉沢英明編著 「講談作品事典」刊行会 2011.3
これらの事典は講談の題名が五十音順に配列されていますが、題名がわからないため、関連しそうな<茶阿><朝覚院><家康(徳川家康)><仇討><訴人><孝女><勇婦><烈女><烈婦><鋳掛屋>で始まるものを調査しました。
該当する作品を見つけることはできませんでした。
・『講談明治期速記本集覧 付落語・浪花節』吉沢英明編著 吉沢英明 1995.4
上の事典と同様に調査しましたが、該当する作品を見つけることはできませんでした。
・『論集大奥人物研究』竹内誠[ほか]編 東京堂出版 2019.10
・『大奥列伝 ヒロインたちの「しきたり」と「おきて」』山本博文監修 世界文化社 2008.2
p.85「其の四 大奥列伝 側室茶阿局」
・『図説金谷町史』金谷町史編さん委員会編 金谷町 2005.1
pp.34-35「中世の金谷 11 金谷山田氏と茶阿局」
・『歴史読本』50巻1号通巻782号(2005年1月)
p.146「徳川将軍家婦人伝 初代徳川家康の正室側室」(楠戸義昭)
・『徳川三代と女房(おんな)たち』中島道子著 立風書房 1999.10
pp.83-86「第一章 付 側室 茶阿局(お久)=越後高田松平忠輝(六男)の母」
・『人物事典江戸城大奥の女たち』卜部典子著 新人物往来社 1988.12
p.200「大奥小伝 茶阿(朝覚院)」
・『歴史読本』28巻5号通巻364号(1983年3月臨時増刊)
p.181「家康を彩った女たち 訴人女房 茶阿の方」(阿井景子)
・『家康と女と合戦と』漆畑弥一著 静岡新聞社 1977
pp.45-74「第二章 ”権勢側室“茶阿と息子忠輝」
・『静岡県榛原郡誌 上巻』名著出版 1971(榛原郡役所編纂大正14年刊の複製)
pp.668-671「茶阿局」
・『大井川物語』武市光章著 竹田印刷 1967
pp.56-59「3 戦国時代の大井川 茶阿の局の話」
・『伝統話芸・講談のすべて』阿部主計著 雄山閣出版 1999.3
・『明治期大阪の演芸速記本基礎研究』旭堂小南陵著 たる出版 1994.8
『明治期大阪の演芸速記本基礎研究 続』旭堂小南陵著 たる出版 2000.5
『明治期大阪の演芸速記本基礎研究 続々』旭堂小南陵著 たる出版 2011.5
上記3点は目次を確認したのみ
・『講談関係文献目録 明治・大正編』吉沢英明編 吉沢英明 1976
・『定本講談名作全集 別巻』講談社編 講談社 1971
・『小説倶楽部』21巻3号(1968.2)(国立国会図書館デジタルコレクション)
pp.92-100「家康妾列伝 茶阿方」(江崎惇) ※小説
・『講談五百年』佐野孝著 鶴書房 1943
・『講談日本外史 第6巻 徳川家康の巻』今三余著 興文社 1926.3(国立国会図書館デジタルコレクション)
・『徳川家康』一竜斎貞山講演 今村次郎編 博文館 1920(長篇講談 第50編)(国立国会図書館デジタルコレクション)
【調査に用いたデータベース一覧】
・国立国会図書館オンライン https://ndlonline.ndl.go.jp/
・国立国会図書館デジタルコレクション(国立国会図書館) https://dl.ndl.go.jp/
・レファレンス協同データベース(国立国会図書館) https://crd.ndl.go.jp/reference/
・CiNii Articles(国立情報学研究所) https://ci.nii.ac.jp/
・文化デジタルライブラリー(日本文化芸術振興会) https://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/
・Google https://www.google.co.jp/
・Googleブックス https://books.google.co.jp/
・Google Scholar https://scholar.google.com/
・雑誌記事索引集成データベース ざっさくプラス(皓星社)
・聞蔵(きくぞう)II ビジュアル(朝日新聞社)
・ヨミダス歴史館(読売新聞社)
・毎索(毎日新聞社)
- NDC
-
- 小説.物語 (913 10版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 人文(レファレンス)
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000312852