レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016年06月24日
- 登録日時
- 2016/12/21 16:47
- 更新日時
- 2023/07/25 13:38
- 管理番号
- 305
- 質問
-
解決
「トロイオンス」という金属の重さの単位があるらしい。
1トロイオンスは何gか。
- 回答
-
ヤード・ポンド法では
1トロイオンスの質量…(正確に)31.1034768g
計量する物…貴金属、宝石など
記号…oz trやoz t
日本の計量単位令、計量単位規則では
1トロイオンスの質量…31.1035g
計量する物…金貨のみ
記号…oz
- 回答プロセス
-
書架、書庫で単位や数詞の関連書、科学参考書、百科事典を調査。
下記の資料1~9に1トロイオンスの質量(g)が掲載されていた。
1.『丸善単位の辞典』(二村隆夫/監修 丸善 2002年)p.246項目「トロイオンス」…31.103481g
2.『数える・はかる・単位の事典』(武藤徹/編著、三浦基弘/編著 東京堂出版 2017年)p.56~57項目「オンス」…31.103481g。「なお、計量単位令(2013[平成25]年9月26日)では(略)薬用オンス(トロイオンス)は31.034768g」とも記されている。
3.『図解単位の歴史辞典』(小泉袈裟勝/編著 柏書房 1989年)p.198項目「トロイポンド」…31.1g
4.『単位と記号』(白鳥敬/著 学研教育出版 2013年)p.67図「ヤード・ポンド法の質量の単位」1(トロイ)オンス金貨(の絵)…31.1034768g
5.『科学大辞典 第2版』(国際科学振興財団/編 丸善 2005年)p.193項目「オンス」…約31.103g
6.『化学便覧 基礎編1 改訂4版』(日本化学会/編 丸善 1993年)p.I-9「表1・13 非SI単位からSI単位への換算係数(2)」質量項目「オンス(トロイ)」…≈31.1035g
7.『数え方の辞典』(飯田朝子/著、町田健/監修 小学館 2004年)p.331~332項目「オンス」…約31.1g
8.『世界大百科事典 4 改訂新版 オ-カイ』(平凡社 2007年)p.455項目「オンス」…約31.103g
9.『日本大百科全書 4 おおつ-かき』(小学館 1985年)p.498項目「オンス」…31.10g
各資料の値をまとめると
31.1034768g(資料2,4)
31.103481g(資料1,2)
(近似値)31.1035g(資料6)
(約)31.103g(資料5,8)
(約)31.1(0)g(資料3,7,9)
桁数の違いはあるが、「≈(近似値)」「約」といった表現も見られることから、各値の差異は端数処理によるものか。
また、資料1~9にはトロイオンスに関する以下の情報も掲載されていた。
・ヤード・ポンド法における単位(非SI単位)で、貴金属、宝石などの計量に用いる(資料1~5,7~9)
・1トロイオンス=1/12トロイポンド=20ペニーウェート=480グレーン(資料1,3,4,8,9 資料7では1トロイオンス=1/12ポンドとなっている)
・記号はoz tr,oz t(資料1,4,8)
・(質量)オンスは一般に用いられる常用オンス、貴金属や宝石などの計量に用いるトロイオンス、薬品などの計量などに用いる薬用オンスの3種類がある(資料1,2,4,8,9)
・質量オンスとは別に液体用の液量オンスも存在する(資料2,8,9)
資料2で触れられていた「計量単位令」について、インターネット上の「e-Gov法令検索」より確認。
「計量法」に関連する政令で、別表第六(第五条[特殊の計量に用いる計量単位]関係)に「特殊の計量:五 金貨の質量の計量、計量単位:トロイオンス、定義:キログラムの〇.〇三一一〇三五倍」とある。
同じく計量法に関連した「計量単位規則」の別表第四(第二条[記号]関係)でも「特殊の計量:金貨の質量の計量、計量単位:トロイオンス、記号:oz」となっている。
同令、同規則より日本の法律上のトロイオンスは
・金貨の質量のみに用いられる、特殊な計量単位
・記号はoz
・質量31.1035g
である。
なお、計量単位令の別表第七(第八条[ヤードポンド法による計量単位]関係)には「物象の状態の量:二 質量、計量単位:ポンド、定義:キログラムの〇・四五三五九二三七倍」「計量単位:グレーン、定義:ポンドの七千分の一」とある。
資料2の「なお、計量単位令(2013[平成25]年9月26日)では(略)薬用オンス(トロイオンス)は31.034768g」はこれらの定義をもとに算出した値(453.59237/7000*480=31.1034768g 資料1,3,4,8,9より)と思われる。
*e-Gov法令検索(https://elaws.e-gov.go.jp/ )
*同上HP内計量法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=404AC0000000051 )
*同上HP内計量単位令(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=404CO0000000357 )
*同上HP内計量単位規則(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=404M50000400080 )
資料1~5,7~9でトロイオンスはヤード・ポンド法における単位と説明されていたため、同法で値も定義されていると推測。同法について調査。
資料1のp.326項目「ポンド」やp.358項目「ヤード・ポンド単位系」のほか
10.『世界大百科事典 28 改訂新版 メ-ユウ』(平凡社 2007年)p.427項目「ヤード・ポンド法」
11.『日本大百科全書 23 もね-りこ』(小学館 1988年)p.190項目「ヤード・ポンド法」
に、ヤード・ポンド法に関する以下の情報が掲載されていた。
・長さの単位ヤード、質量の単位常用ポンド、時間の単位セカンド(秒)を基本単位として構成された、英語圏諸国の計量単位系。(資料1,10,11)
・かつてはイギリスとアメリカで値が異なっていた。(資料1,10,11)
・1958年にイギリス、アメリカ、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、南アフリカ共和国の標準機関で協定を結び、値を共通化することに。(資料1,10,11)
・(1958年以後、)アメリカの国立標準局(National Bureau of Standards[NBS])が、協定値を用いた科学用の各種ヤード・ポンド系単位の新しい表を作る。(資料1)
・1963年、イギリスが度量衡法を改正。協定値(0.45359237kg)どおりにポンドの定義を改める。(資料1)
アメリカ国立標準局のヤード・ポンド系単位の表を確認。
Googleでキーワード"National Bureau of Standards"を検索すると、結果一覧で「アメリカ国立標準技術研究所」(National Institute of Standards and Technology[NIST])のHPが表示された。
Wikipedia項目「アメリカ国立標準技術研究所」によれば、同所の前身が国立標準局とのこと。
次に、アメリカ国立標準技術研究所HP右上の検索窓からキーワード"yard"+"pound"+"1958"または"1959"を検索。
"U.S. Survey Foot: Federal Register Notices"ページのPDFファイル"1959 Federal Register Notice(June 30, 1959, Volume 24, Number 128, Page 5348) - Refinement of values for the yard and pound"(1959年アメリカ連邦政府公報告示[1959年6月30日、第24巻、第128号、5348 ページ]-ヤード・ポンドの値の精緻化)が見つかった。
PDFは表ではなく文書だったが、1959年7月1日より国立標準局が"1 pound (avoirdupois)= 0.453 592 37 kilogram""1 grain = 0.06479891 gram"(1ポンド[常用]=0.45359237kg、1グレーン=0.06479891g)と定める旨が記されている。
トロイオンスの定義は文書内に見当たらず。ただ、1トロイオンス=480グレーン(資料1,3,4,8,9)であるから、その質量は0.06479891*480=31.1034768gと計算できる。
*アメリカ国立標準技術研究所HP(https://www.nist.gov/ )
*同上HP内"1959 Federal Register Notice (June 30, 1959, Volume 24, Number 128, Page 5348) - Refinement of values for the yard and pound" (PDF)(https://geodesy.noaa.gov/PUBS_LIB/FedRegister/FRdoc59-5442.pdf )
*Wikipedia項目「アメリカ国立標準技術研究所」(https://w.wiki/6oEc )
イギリスの度量衡法を確認。
国立国会図書館リサーチ・ナビの「イギリス-法令・判例」ページでNational Archives(英国公文書館)HPの"legislation.gov.uk"が紹介されており、貼られたリンクを辿る。
legislation.gov.ukの検索窓からTitle:Weights and Measures(度量衡)+Year:1963で検索。PDFファイル"Weights and Measures Act 1963" (1963年度量衡法)が見つかった。
7コマ目のPART I-1-(1)で"the pound shall be 0.453 592 37 kilogramme exactly." (ポンドは正確に0.45359237kg)と定義している。
また、70コマ目のSCHEDULE 1(別表1)-PART Vには"POUND = 0.453 592 37 kilogramme.""Grain = 1/7000 pound.""Ounce troy = 480 grains." (ポンド=0.45359237kg、グレーン=1/7000ポンド、トロイオンス=480グレーン)とある。
1トロイオンスの質量は453.59237/7000*480=(正確に)31.1034768gと定義されていることがわかる。
*国立国会図書館リサーチ・ナビ「イギリス-法令・判例」(https://rnavi.ndl.go.jp/jp/politics/UK.html )
*legislation.gov.uk(https://www.legislation.gov.uk/ )
*同上HP内" Weights and Measures Act 1963" (PDF)( https://www.legislation.gov.uk/ukpga/1963/31/pdfs/ukpga_19630031_en.pdf )
以上より、1トロイオンスの質量はヤード・ポンド法では(正確に)31.1034768g、日本の計量単位令、計量単位規則では31.1035gである。
※英語の翻訳は『ジーニアス英和辞典 第5版』(南出康世/編集主幹 大修館書店 2014年)、『プログレッシブ和英中辞典 第4版』(近藤いね子/編集主幹、高野フミ/編集主幹 小学館 2011年)や翻訳サイト「DeepL」を利用。
*翻訳サイトDeepL(https://www.deepl.com/ja/translator )
インターネットのリンク確認日:2023年6月20日
- 事前調査事項
- NDC
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- 度量衡.計量法 (609 10版)
- 化学 (430 10版)
- 文法.語法 (815 10版)
- 参考資料
-
- 丸善単位の辞典
- 数える・はかる・単位の事典
- 図解単位の歴史辞典
- 単位と記号
- 科学大辞典 第2版
- 化学便覧 基礎編1 改訂4版
- 数え方の辞典
- 世界大百科事典 4 改訂新版 オ-カイ
- 世界大百科事典 28 改訂新版 メ-ユウ
- 日本大百科全書 4 おおつ-かき
- 日本大百科全書 23 もね-りこ
- ジーニアス英和辞典 第5版
- プログレッシブ和英中辞典 第4版
- キーワード
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- 度量衡
- 単位
- ヤード・ポンド法
- 計量法
- 計量単位令
- 計量単位規則
- 日本語-数詞
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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資料6は新版が刊行されている。
・『化学便覧 基礎編』(日本化学会/編 丸善 2021年)p.14「表1.3-1 非SI単位からSI単位への換算係数」の質量項目「オンス(トロイ)」…31.1034768g
旧版では(近似値)31.1035gだった。
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000204143