レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023/02/01
- 登録日時
- 2023/03/09 00:31
- 更新日時
- 2023/03/09 00:31
- 管理番号
- 6001059692
- 質問
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解決
「セトロの海」という児童書に、マッコウクジラが食べたダイオウイカのからすとんびが体内でアンバーグリス(龍涎香)という結石状になり苦痛をもたらすという場面があった。
実際にアンバーグリスがマッコウクジラに対してどういう影響をもたらすものなのか知りたい。
- 回答
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以下の資料に記述があった。
・『海棲哺乳類大全:彼らの体と生き方に迫る』(田島木綿子/総監修 山田格/総監修 緑書房 2021.3)
p.176-181 トピック「クジラの糞はいい香り?~龍涎香の解明~」より
p.176 「現在でもマッコウクジラの腸管で発見される結石ということしかわかっておらず、その正確な形成メカニズムは未だに不明である」
p.176-177 「捕鯨開始初期はオスのみからしか得られないと考えられていたが、メスからも発見されたため龍涎香の形成に雌雄の関係はない。龍涎香の発生頻度は0.5~3%とかなり低く、調子が悪そうな変な泳ぎ方をしているマッコウクジラを捕獲すると高い確率で龍涎香を得られるという記述もある。」
p.177 「表面にはマッコウクジラの大好物であるイカのくちばしや甲、寄生虫の角皮が張りついており(以下、外層および内層の説明)」
これに対応した図2「龍涎香の横断面」がある。
p.177 「マッコウクジラの腸で発見された時、胃から肛門側に細くなっていることが多い。液状の糞便が龍涎香の核に当たってその表面が落ち込み、平らで浅いくぼみを形成する。その後直腸壁の間を通り抜ける際に肛門側の端が削られ、丸細い卵型になる。」
これに対応した図3「クジラの腸内における龍涎香と糞便の対流」がある。
p.177-178 龍涎香形成の仮説を述べており、さらに「マッコウクジラの糞便は液状のため、彼らの肛門は大きな固形物を排出できない構造になっている。」「実際に龍涎香の周りの腸は充血し、肥大化しているらしい」「小さい龍涎香なら排出することも可能であるが、大きな龍涎香は排出することはなかなかできず、この仮説が正しいならばどんどん大きくなってしまい、いずれマッコウクジラは死んでしまうだろう。」という記述がある。
・『マッコウクジラの自然誌:<大マッコウ>てんまつ記』(加藤秀弘/[著] 平凡社 1995.4)
p.136-139 トピックス「龍涎香物語」より
p.138 「マッコウクジラの腸内に龍涎香が発見できるのは1%にも満たない」
p.138 「龍涎香の大きさは、握りこぶし大からひと抱えもある大きなものもある。記録上もっとも重いものは、東インド会社が1880年に扱った928ポンド(421.3kg)の龍涎香だが、100年以上も前のことなので写真などは存在しない。」
p.139 龍涎香形成の仮説が複数紹介されているが、「それともまったく別の原因があるのか、いまだによくわかっていない」とされている。
p.139 「どういうわけか雄のマッコウクジラからしか発見されていない。」*前述資料にメスからの発見の記述あり。
p.139 捕鯨直後の龍涎香の記述。「周囲にはびっしりとイカの口器が取りまいていた。」「削ってみると、中心にいくにしたがってイカの口器がまるで溶けこむようになっていた。」
・『クジラの海をゆく探究者たち:『白鯨』でひもとく海の自然史 下』(リチャード・J.キング/著 坪子理美/訳 慶應義塾大学出版会 2022.10)
p.36-42 「第18章 龍涎香 ―海に隠された香りの秘密」より
p.39 (英国人生物学者ロバート・クラークは)「竜涎香がマッコウクジラ(もしかするとコマッコウも)の直腸内でのみ形成されると説明し、マッコウクジラの性別を問わずおよそ一〇〇頭あたり一頭に竜涎香が見つかると推定した。」
p.39 「マッコウクジラは一日に一トンのイカを食べることがある。普通、顎板などの消化できない硬い部分は口から吐き出すが(中略)、時にそうした物体が何室にも分かれたマッコウクジラの胃をすべて通過してしまうこともある。腸内での炎症を抑えようとして、マッコウクジラの体が難消化性の顎板の周りにコレステロールを多く含む保護物質を何層にも重ねて玉状の凝固物を形成する」
p.39 「その玉が長い年月をかけて厚みを増し、形を変えていく」
p.39 「鯨の腸を塞ぐ竜涎香の塊は、時に肛門から平穏に排出されることもある。」
p.40 「クラークや現在の生物学者は竜涎香が必ずしも病気の症状だとは考えていない。ただ、腸の下部が完全に詰まってしまえば、最終的に鯨の死につながることもありうる。」
[事例作成日:2023年2月1日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 哺乳類 (489 10版)
- 参考資料
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- 海棲哺乳類大全 田島/木綿子‖総監修 緑書房 2021.3 (176-178)
- マッコウクジラの自然誌 加藤/秀弘∥[著] 平凡社 1995.4 (138-139)
- クジラの海をゆく探究者たち 下 リチャード・J.キング‖著 慶應義塾大学出版会 2022.10 (39-40)
- キーワード
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- アンバーグリス(アンバーグリス)
- 龍涎香(リュウゼンコウ)
- りゅうぜんこう(リュウゼンコウ)
- マッコウクジラ(マッコウクジラ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000330021