レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2014/12/16 18:39
- 更新日時
- 2015/11/05 13:57
- 管理番号
- 折尾分館5
- 質問
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解決
「倉」と「蔵」とは同じ「くら」ですが、その意味にどのような違いがありますか。
- 回答
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もともとは「倉」は「穀物を入れておくところ」で、「蔵」は「大事なものをかくしてしまいこんでおくところ」といった意味合いがあったようです。
『大漢和辞典』や『新字源』、『字統』で個々の漢字を調べますと、倉は穀物を入れるくら、蔵は藏の略字でかくす、おさめる、たくわえると読み、他にひそむ、しまつする、一目につかぬようにする、おおうなどといった意味が記載されています。
『広辞苑』や『字訓』で「くら」をひくと「蔵・倉・庫」の字がまとめて充てられていて、「穀物・商品・家財などを保管・貯蔵する建物」と記載されています。さらに『広辞苑』では倉はものをしまっておく建物として広く使い、蔵は大事なものをしまっておく建物と記載され、『字訓』では倉は穀物をたくわえるところ、蔵はくさかんむりに従うことから草間に匿れる、転じてかくすという意味になったと記載されています。
また、『漢字語源辞典』では倉は納屋を表すといい、倉の形がその意味を象るとあります。蔵は中にしまいこむの意だと記載されています。
- 回答プロセス
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はじめに「くら」の意味を調べるために、自館所蔵の『広辞苑』で「くら」を引きました。「蔵・倉・庫」の3つの漢字が充てられていました。
『字訓』『大辞泉』などを見ても同じでした。その中で『広辞苑』は蔵を大事なものをしまう建物として区別していました。『字訓』では倉を穀物をしまうところと区別していました。
漢字のことはやはり『大漢和辞典』(大修館書店)だと思いましたが、自館に所蔵がなかったので他館に出向き、個々の漢字について調べました。
倉は「穀物をいれるくら、方形のくら、転じて物を入れておくところ」とあり、蔵は「藏の略字で、かくす、おさめる、たくわえる、ひそむ、物をたくわえる所など」と書いてありました。同時に『新字源』も見ることができましたので、調べると同様のことが書かれていました。
自館所蔵の『字統』でも同様のことが書かれていました。
さらに語源について調べることにしました。
他館から『漢字語源辞典』を取り寄せて調べると、『漢字語源辞典』では、倉は「食の略体であり、食は△(あつめる)+良(粮=糧の原字)である。従って、食の略体で穀物を表し、かこいを示す□印を加えて、穀物を収蔵することを示した」と記載され、蔵については「もともとは臧によるがその意味とは関係なしに、その音を借りて作られた。くさかんむりをつけたのは、麦や稲や青草を取り入れてしまいこむことを表すためである。」と記載されていました。
これらの辞典類を参照して回答を導きました。
- 事前調査事項
- NDC
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- 辞典 (813 9版)
- 音声.音韻.文字 (821 9版)
- 語源.意味[語義] (822 9版)
- 参考資料
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- 『大漢和辞典 1巻』縮刷版 諸橋轍次著 大修館書店 1976年 <R813.2/モ/1>(820頁)
- 『大漢和辞典 9巻』縮刷版 諸橋轍次著 大修館書店 1976年 <R813.2/モ/9>(895頁)
- 『角川 新字源』小川環樹等編 角川書店 1976年 <R813/オ>(182頁 871頁)
- 『新訂 字統』白川静著 平凡社 2007年 <R821.2/シ>(560頁 572頁) , ISBN 978-4-582-12813-0
- 『広辞苑 第6版』新村出編 岩波書店 2008年 <R813.1/シ>(821頁) , ISBN 978-4-00-080121-8
- 『新訂 字訓』白川静著 平凡社 2007年 <813.6/シ>(270頁) , ISBN 978-4-582-12814-7
- 『大辞泉』小学館『大辞泉』編集部編集 小学館 1995年 <R813.1/シ>(778頁) , ISBN 4-09-501211-0
- 『漢字語源辞典』藤堂明保著 学燈社 1966年 <R822/ト>(377頁)
- コトバンク(https://kotobank.jp/)
- キーワード
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- 倉
- 蔵
- 漢字
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000164692