レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022/05/31
- 登録日時
- 2022/07/13 00:30
- 更新日時
- 2022/07/14 00:30
- 管理番号
- 6001056475
- 質問
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未解決
ツクツクボウシの鳴き声について、昔の人にどう聞こえていたか知りたい。
- 回答
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以下の資料に平安時代から現代までのツクツクボウシの鳴き声に関する記述があった。
・『国語語彙史の研究 16』(国語語彙史研究会/編 和泉書院 1996.10)
p.119-138 山口仲美「ツクツクボウシの鳴く声は –擬声語の史的推移–」
「クツクツホウシ」p.120-121
平安時代の「蜻蛉日記」の記述として、「時雨だちたるに、未の時ばかりに晴れて、くつくつぼうし、いとかしがましきまで鳴くを聞くにも、「われだにものは」と言はる」を紹介し、鳴き声と名前が密接な関係にあることから、平安時代の人は「その鳴き声を「クツクツホウシ」と聞いていたことになる。」としている。
「クツクツボウシ」p.121
平安時代の「類聚名義抄」の記述として「蛁蟟 凋遼二音 クツクツボウシ」を紹介し、クツクツボウシの後半のホウシはボウシと濁音で聞くこともあったとしている。
「ウツクシヨシ」p.128-129
平安時代に源俊頼が詠んだ歌、「女郎花なまめきたてる姿をやうつくしよしと蝉の鳴くらん」を紹介し、蝉の声を「ウツクシヨーシ」と聞きなした、としている。
「ツクシヨシ」p.133
室町時代の辞書「伊京集」の記述として「蛁蟟 ツクシヨシ」を紹介し、またこれが鳴き声としても活躍していたとして江戸時代の次の落首を紹介している。
「空蝉のつくしよしとは思はねど身はもぬけつつ鳴く鳴くぞゆく」
「オシイツクツク」p.135
夏目漱石の作品「吾輩は猫である」に以下のような記述があるとしている。
「これも序だから博学なる人間に聞きたいのがあれはおしいつくつくと鳴くのか、つくつくおしいと鳴くのか、その解釈次第によっては蝉の研究上少なからざる関係があると思う。」
その他、以下の資料にも記述がある。
江戸時代、小泉八雲が聞いたツクツクボウシの鳴き声。
『日本瞥見記 下』(小泉八雲/著 恒文社 1975)
p.37
「ツクツク ウイス ツクツク ウイス ツクツク ウイス ウイオース ウイオース ウイオース ウイオース、ス、ス、ス、ス、ス、ス」
・『日本古典博物事典 動物篇』(小林祥次郎/著 勉誠出版 2009.8)
p.424
江戸時代、貝原益軒の記述として「俗につくしよしと鳴くというふものなり」が紹介されている。
・『世界大博物図鑑 1 虫類』(荒俣宏/著 平凡社 1991.8)
p.247
「古くツクツクホウシは<筑紫恋し>と鳴いているのだともいわれた。すなわち筑紫の人間が旅先で死んでこのセミと化したのだという(横井也有<百蟲譜>)。また、秋田県田辺地方では、ツクツクホウシの鳴き声を<熟柿欲―し>と聞きなした。実際この虫があらわれるとカキが熟すのだという(≪南方随筆≫)」
・『日本民俗語大辞典』(石上堅/著 桜楓社 1983.4)
p.829 つくつくぼう(ふ)し
「蜻蛉日記に「クツクツボウシ」、「散木奇謌集」に「ウツクシヨシ」と鳴くとある。横井也有の「百虫賦」には、「ツクシコイシ」と鳴くとあるが、岩手県・熊本県などで—兄が旅立ち、別れが辛くて弟は、木に登り見送って、「ツクツク・ツクシツクシ・ミルミル」と声の限り、泣いているうちに、蝉になってしまった、とか旅の人が病死し、故郷恋しく「ツクシツクシ」と泣く蝉になったとか、全て転生譚になっている」
[事例作成日:2022年5月31日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 昆虫類 (486 10版)
- 生物地理.生物誌 (462 10版)
- 参考資料
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- 国語語彙史の研究 16 国語語彙史研究会∥編 和泉書院 1996.10 (119-138)
- 日本瞥見記 下 小泉/八雲∥著 恒文社 1975 (37)
- 日本古典博物事典 動物篇 小林/祥次郎∥著 勉誠出版 2009.8 (424)
- 世界大博物図鑑 1 荒俣/宏∥著 平凡社 1991.8 (247)
- 日本民俗語大辞典 石上/堅∥著 桜楓社 1983.4 (829)
- キーワード
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- ツクツクボウシ(ツクツクボウシ)
- セミ(セミ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000318688