レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023/12/04
- 登録日時
- 2024/01/05 00:30
- 更新日時
- 2024/03/21 13:49
- 管理番号
- 16290451
- 質問
-
未解決
江戸時代、さかなを「上魚」「中魚」「下魚」とランク分けしていた。
「下魚」は「げざかな」と辞典類に掲載されているが、「上魚」「中魚」はなんと読むのか知りたい。
できれば「下魚」を含めて、当時の書物の写しなどにフリガナのあるものがあれば、それをみたい。
- 回答
-
全文検索が可能な「国立国会図書館デジタルコレクション」や「次世代デジタルライブラリー」等をキーワード「上魚」「下魚」「中魚」に「料理」「調理」等を掛け合わせて調査しました。また、江戸時代の言葉を取り上げた辞典、魚食文化に関する資料も確認しました。
江戸時代に書かれた資料で、「上魚」等にふりがなが付いたものは見当たりませんでした。
参考までに、明治期以降に書かれた資料で「上魚」にふりがなが振られているものがありましたので、ご紹介いたします。(資料1~3)
【 】内は国立国会図書館請求記号です。書誌事項末尾に◎を付した資料は国立国会図書館デジタルコレクション(国立国会図書館内/図書館・個人送信対象)資料、☆を付した資料は同インターネット公開資料です。なお、一部旧字を新字に置き換えて表記している箇所があります。
資料1
高田義一郎 著『自然療法 : 無医無病保健の妙締』富士書房, 昭和4【60-940】☆
https://dl.ndl.go.jp/pid/1049695/1/68
pp.118-119(68コマ)「鯛よりも鮪、鮪よりも鰯」
「鯛は魚類中での上魚として」とあり、「じやうざかな」とふりがなが振られています。
資料2
石井泰次郎 著『日本料理法大成』大倉書店, 大正12【507-76】☆
https://dl.ndl.go.jp/pid/970404
pp.147-1181「第三編 古今料理法」
p.471(250コマ)に「クリアヘキス(栗和鱚)」があり、「魚は何にても上魚をあふる」とあり、「よきうを」とふりがなが振られています。
また、p.858(444コマ)に「トリノシルシウヲノシルシ(鳥の印。魚の印)」があり、「魚に二つの印とは、一つには鯛なり、上魚なり」とあり「じやうぎょ」とふりがなが振られています。
この他、新聞記事を調べることができるデータベースで検索すると、「上魚」に「じやうぎょ」とふりがなを振っている明治期の記事が見つかりました。
資料3
『朝日新聞』1891年3月27日 東京朝刊 1面【YB-2】
「魚河岸の魚」という記事で、「引続き不景気にて上魚類ハ(後略)」等と書かれており、「じやうぎょ」とふりがなが振られています。
また、江戸時代に書かれた料理本で「上魚」「下魚」等の記述がみられる資料として、以下のようなものがあります。
資料4
舟木包早『料理無言抄 [1]』写【特1-2719】☆
https://dl.ndl.go.jp/pid/2557694
なお、この資料には刊行年の記載はありませんが、「国書データベース」の「成立年」に、「享保一四序(1729)」とあります。
( https://kokusho.nijl.ac.jp/work/004252602 )
30コマ目の中央部分に「上魚」と思われる文字が書かれています。ふりがなはありません。
資料5
吉井始子 編『江戸時代料理本集成 : 翻刻 第2巻 (古今料理集.和漢精進料理抄)』臨川書店, 1978.12 (第3刷:2007.5)【EF27-J444】
pp.3-223に江戸時代の料理書である『古今料理集』が翻刻されています。
p.15「いしかれい」の項目等、一部に「上魚」と書かれていますが、ふりがなは付与されていません。
資料6
松下幸子、吉川誠次、山下光雄「古典料理の研究 (十四) : 『黒白精味集』中・下巻について」(『千葉大学教育学部研究紀要. 第2部』37 千葉大学教育学部, 1989.2 pp.221-290【Z22-372】)
前稿の「古典料理の研究(十三) : 『黒白精味集』について」によると、『黒白精味集』は延享3年頃に成立した資料で、料理技術の解説をまとめています。本論文では、その翻刻が掲載されています。
pp.273-279「黒白精味集 十」があり、魚の格付けとして一部「上魚」「下魚」等と書かれています。ふりがなはありません。
千葉大学学術成果リポジトリにて閲覧可能: https://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900025176/
この他、資料1,2の読み方を参考に江戸時代の言葉に関する辞典類を確認しましたが、関連の記述は見当たりませんでした。
三好一光 編『江戸語事典 新装版』青蛙房, 2004.7【KF124-H17】
前田勇 編『江戸語大辞典 新装版』講談社, 2003.4【KF6-H2】
潁原退蔵 著, 尾形仂 編『江戸時代語辞典』角川学芸出版, 2008.11【KF6-J3】
大久保忠国, 木下和子 編『江戸語辞典』東京堂出版, 1991.9【KF124-E30】
【その他、調査に使用した主な資料等】(国立国会図書館オンラインを、件名「料理 (魚)--歴史」等で検索)
蟻川トモ子 著『江戸の魚食文化 : 川柳を通して (雄山閣アーカイブス ; 食文化篇)』雄山閣, 2017.1【GD51-L162】
藤井克彦 著『江戸前の素顔 : 遊んだ・食べた・釣りをした (文春文庫 ; ふ39-1)』文藝春秋, 2014.6【GD51-L53】
大久保洋子 [著]『江戸の食空間 : 屋台から日本料理へ (講談社学術文庫 ; 2142)』講談社, 2012.11【GD51-J162】
金田禎之 著『江戸前のさかな : 食文化の足跡をたどる』成山堂書店, 2011.6【GD51-J117】
松浦勉[ほか]著『魚食文化の系譜』雄山閣, 2009.10【GD51-J94】
永山久夫 著『大江戸食べもの歳時記 : 江戸っ子はこんなにうまいものを食べていた?!』グラフ社, 2010.4【GD51-J84】
原田信男 編著『江戸の料理と食生活 : 日本ビジュアル生活史』小学館, 2004.6【GD51-H55】
谷内透[ほか]編『魚の科学事典』朝倉書店, 2005.11【RA2-H54】
棚橋正博, 村田裕司 編著『絵でよむ江戸のくらし風俗大事典』柏書房, 2004.10【GB371-H13】
渡辺信一郎 著『江戸の庶民生活・行事事典』東京堂出版, 2000.7【GB374-G43】
日本風俗史学会 編『図説江戸時代食生活事典』雄山閣出版, 1978.7【GB8-54】◎
https://dl.ndl.go.jp/pid/12156393
三好一光 編『江戸東京風俗語事典』青蛙房, 1959【818-M687h】◎
https://dl.ndl.go.jp/pid/2487779
【調査に使用した主なデータベース等】
・「本の万華鏡 第30回 天下タイ平~魚と人の江戸時代~ 第3章 食べタイ!」(国立国会図書館)( https://www.ndl.go.jp/kaleido/entry/30/3.html )
・皓星社 雑誌記事索引集成データベース(ざっさくプラス)(当館契約データベース)
・朝日新聞クロスサーチ(当館契約データベース)
・毎索(毎日新聞)(当館契約データベース)
・ヨミダス歴史館(読売新聞)(当館契約データベース)
インターネット情報等の最終確認日:2023年11月30日
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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「日本国語大辞典」「大辞林」「角川古語大辞典」「大漢和辞典」「江戸前魚食大全」「図説江戸料理辞典」「江戸前の魚」「全集日本の食文化(第4巻)」「江戸釣魚大全」「江戸の献立」「料理いろは庖丁」「魚の日本史」「江戸の俳諧にみる魚食文化」「江戸料理読本」
- NDC
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- 衣食住の習俗 (383)
- 音声.音韻.文字 (811)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 人文(レファレンス)
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000344254