レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年11月16日
- 登録日時
- 2023/12/27 16:05
- 更新日時
- 2024/03/21 14:54
- 管理番号
- 埼久-2023-067
- 質問
-
解決
「~をしたい」を「~してー」というのは方言か。それとも、言語の性質として一般的な省略の仕方か。このような言葉遣いはいつ頃から見られるようになったのかを知りたい。
- 回答
-
学生からの質問のため、調べ方を中心に以下の資料を紹介した。
1 言語・方言関係の参考図書を調べる。
『現代日本語方言大辞典 第4巻 せ-と』(平山輝男[ほか]編集 明治書院 1993)
p2881-2883 「たい【希望】《分野18 助詞・助動詞・その他》」の項あり。
希望表現「たい」について、「親を安心させたい」「早く行きたい」の二つの文を例に、各県・各地域でのアクセントを含めた言い方について記載あり。
『日本語基本動詞用法辞典』(小泉保[ほか]編 大修館書店 1989)
p571付録の「助動詞活用表[口語]」に連用形接続の一つとして「たい」あり。
『日本語表現・文型事典』(小池清治[ほか]編 朝倉書店 2002)
凡例p7の項目一覧に助動詞関係として「希望表現」あり。
p105-108 「希望表現」に「タイ」あり。
『基礎日本語辞典』(森田良行著 角川書店 1989)
p623-627「~たい 助動」の項あり。
2 1の『現代日本語方言大辞典 第4巻 せ-と』より、質問の言い方が見られる東京都、埼玉県、群馬県の方言について調べる。
『埼玉県方言辞典』(手島良編著 桜楓社 1989)
p163〈シテー(連)〉したい。「そう-なあ」 出典文献番号あり(巻末に出典文献一覧あり)
『関東地方の方言』(飯豊毅一[ほか]編 国書刊行会 1984)
p131-167 「6 群馬県の方言」
p140「連母音は概して融合長音化し、共通語のそれに規則的に対応する。」
p140-141「(1)アイ:エー」の項に「ネー〈無い〉」「ウルセー〈うるさい〉」などの例あり。
p169-202 「7 埼玉県の方言」
p179「アイ・アエの連母音は、埼玉大部分でエー[e:]になる。」
p180「行きたい」イギテー などの例あり。
『べらんめぇ言葉を探る』(横田貢著 芦書店 1992)
p59「とりわけ、江戸後期十九世紀初め頃、「ア」と「イ」の連合による形(例、ナイ=nai→ネェ=ne:)、「ア」と「エ」の、連合による形(例、蛙=kaeru→ケエル=ke:ru)など、「エー」は花盛りとなった。」とあり。
p63「アイ/ai/がエー/e:/と、全面的にどの言葉も訛る地域として、群馬・埼玉中南部・東京下町・三多摩・新島・三宅島・八丈島・神奈川中央部、甲信越の一部および静岡伊藤・遠州・尾張と挙げている」とあり。
3 2の『関東地方の方言』で使われていたキーワード〈連母音〉で、自館目録を検索する。
『日本語音節構造史の研究』(肥爪周二著 汲古書院 2019)
p214-232「第三章 江戸語の連母音音訛」
『言語探究の領域 小泉保博士古稀記念論文集』(上田功[ほか]編 大学書林 1996)
p79-92「連母音融合に係わる音韻変化とその変異形をめぐって 上田功著」
p79「1.はじめに」
「連母音の融合もしくは母音連声は、関東系諸方言によく見られる現象であるが、静岡県でも東部地域の広範囲にわたって観察される。」とあり。
4 上記3『日本語音節構造史の研究』の「第三章 江戸語の連母音音訛」で紹介されている参考文献を確認する。
『江戸時代の国語 江戸語』(小松寿雄著 東京堂出版 1985)
江戸語の特色(上方語や現代東京語との比較等)、形成、変遷、各階層別の用法等について詳しく論じている。参考文献、索引あり。
『〈あぶない ai〉が〈あぶねえ e:〉にかわる時 日本語の変化の過程と定着』(福島直恭著 笠間書院 2002)
p40-79 第2部第2章「江戸語における連接母音の長母音化」
『江戸語東京語の研究 増補』(松村明著 東京堂出版 1998)
p209-217「2」に、『浮世風呂』『浮世床』に出てくる人物の会話のことばから挙げた例あり。
p210-211「タイ→テー」の例あり。
- 回答プロセス
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1 参考図書を確認する。
2 NDC〈815〉〈818〉の棚を確認する。
『べらんめぇ言葉を探る』(横田貢著 芦書店 1992)
3 2より、埼玉県、群馬県の方言について調べる。
4 3『関東地方の方言』より、自館目録を〈連母音〉で検索する。
『日本語音節構造史の研究』(肥爪周二著 汲古書院 2019)
『言語探究の領域 小泉保博士古稀記念論文集』(上田功〔ほか〕編 大学書林 1996)
5 4『日本語音節構造史の研究』の「第三章 江戸語の連母音音訛」で紹介されている参考文献を確認する。
『江戸時代の国語 江戸語』(小松寿雄著 東京堂出版 1985)
『〈あぶない ai〉が〈あぶねえ e:〉にかわる時 日本語の変化の過程と定着』(福島直恭著 笠間書院 2002)
『江戸語東京語の研究 増補』(松村明著 東京堂出版 1998)
6 《国立国語研究所》(https://www.ninjal.ac.jp/ 国立国語研究所)に掲載されているデータベース・コーパスを確認する。
〈その他調査済み資料〉
『日本語方言辞書 昭和・平成の生活語 中巻 か-そ』(藤原与一著 東京堂出版 1996)
『国語学原論 言語過程説の成立とその展開』(時枝誠記著 岩波書店 1941)
『日本語の類意表現』(森田良行著 オンタイム出版創拓社 1988)
『日本語文法事典』(日本語文法学会[ほか]編 大修館書店 2014)
『分類方言辞典 標準語引』(東条操編 東京堂出版 1954)
『日本方言辞典 標準語引き』(小学館辞典編集部編 佐藤亮一監修 小学館 2004)
『現代日本語方言大辞典 第3巻 け-す』(平山輝男[ほか]編集 明治書院 1992)
『日本語方言辞書 昭和・平成の生活語 下巻 た-ん』(藤原与一著 東京堂出版 1997)
ウェブサイト・データベースの最終アクセス日は2023年11月16日。
- 事前調査事項
- NDC
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- 音声.音韻.文字 (811 9版)
- 文法.語法 (815 9版)
- 方言.訛語 (818 9版)
- 参考資料
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- 『現代日本語方言大辞典 第4巻 せ~と』(平山輝男[ほか]編集 明治書院 1993) , ISBN 4-625-52140-8
- 『日本語表現・文型事典』(小池清治[ほか]編 朝倉書店 2002) , ISBN 978-4-254-51024-9
- 『埼玉県方言辞典』(手島良編著 桜楓社 1989) , ISBN 4-273-02337-7
- 『関東地方の方言』(飯豊毅一[ほか]編 国書刊行会 1984)
- 『べらんめぇ言葉を探る』(横田貢著 芦書店 1992) , ISBN 4-7556-1084-2
- 『日本語音節構造史の研究』(肥爪周二著 汲古書院 2019) , ISBN 978-4-7629-3639-5
- 『言語探究の領域 小泉保博士古稀記念論文集』(上田功[ほか]編 大学書林 1996) , ISBN 4-475-01820-X
- 『江戸時代の国語 江戸語』(小松寿雄著 東京堂出版 1985)
- 『〈あぶない ai〉が〈あぶねえ e:〉にかわる時 日本語の変化の過程と定着』(福島直恭著 笠間書院 2002) , ISBN 4-305-70246-0
- 『江戸語東京語の研究 増補』(松村明著 東京堂出版 1998) , ISBN 4-490-20360-8
- キーワード
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- 方言
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000344093