レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年12月24日
- 登録日時
- 2024/01/18 09:40
- 更新日時
- 2024/01/26 22:07
- 管理番号
- 県立長野-23-169
- 質問
-
解決
『青空哲学』玉村豊男、水上勉著 岩波書店 1999【914.6/ミツ】の本文に、読み方がわからない言葉があるから調べてほしい。
P.104「月、火、水、木、金、土」
P.124「十門」
P.149「『北国物語』」※鈴木牧之の著作名として
- 回答
-
1については、前後の文章から易の用語のようだが、安藤昌益の思想を説明している場面のため、安藤昌益の観点からも調査した。2についても安藤昌益に関係している。
1「月、火、水、木、金、土」の読み方
『世界占術大事典』日本占術協会 実業之日本社 1991【148.03/ニホ】の四柱推命項目のp.195中
に、五行の説明がある。フリガナがふってあり、木(もく)、火(か)、土(ど)、金(きん)、
水(すい)とあった。
ほか、『陰陽道 呪術と鬼神の世界』鈴木一馨著 講談社 2002【148.4/スイ】の五行説の説明の
p.86に、
「五行は列挙して言うとき、「木火土金水」と称される。(中略)また、用語としては紛らわ
しいのだが、五行はそれぞれ単独に「木」だとか「水」だとかを示す場合でも「行」とは言
わずに、「五行」と呼ばれる。「五行」と「木火土金水」の総称であるとともに、「木」
「火」「土」「金」「水」の単称でもあるのだ。」
と記述があり、木火土金水(もっかどこんすい)とフリガナがあった。
五行説(昌益の晩年は四行説へ移行)は、『安藤昌 益全集1』安藤昌益著 農山漁村文化協会
1982【121/325/1】にある安藤昌益の作『自然真営道』の「大序巻」の解説に出てくる。
p.60-62 五、五行説から四行説への変化の意味
「五行説から四行説への移行とは、学説の解明方式が、万物を構成する基本要素を木・火・土・
金・水の五要素と見ることから脱皮し、土を最も根源的なものとして特出し、他の木・火・
金・水の四要素で説明することに変わったことである。(後略)」
同資料の『自然真営道』の「大序巻」では八門の説明がある。(以下は現代語訳。)
p.79-80
「(前略)顔の八つの器官は、人身の気を天の八星天・列星天と海の八方へと送り出し、また
宇宙の気を受け入れて体内の腑臓へと送り込んでいる。つまり、宇宙の回日星月と、人の内
臓および神霊魂魄は、顔の八つの器官を通じて互いに対応しあっている。だから八つの器官
を通して宇宙の気を引き入れ、人身の気を宇宙に送り出すということは、大きくは宇宙、小
さくは人間男女が、進気と退気の相互関係をもつ活真の統一的な自己運動によることを示し
ている。(後略)」
p.70の注解の用語解説に「回・日・星・月」がある。
「昌益の宇宙像を象徴する語で、いわゆる「日月星辰」と同じように使われる。「回」は宇宙
の回転性、「日」は太陽、「星」は諸星一般、「月」は月を表すことがある。また「回」が
歳星(木星)を、「星」が太白星(金星)を、あるいは「回」が恒星、「星」が惑星を示す
と思われる用法もある。」
月に関しては、五行説の中には含まれていなかった。
『陰陽五行と日本の文化』吉野裕子著 大和書房 2003【148.4/ヨヒ】に、月に関する記述があった
が、フリガナはついていなかった。
第二節 陰陽五行思想の概要 p.26
「(前略)さて混沌から派生した最初の陰と陽、あるいは天と地の二元は、根本的二大元気で
ある。この二元が交感・交合し、その結果、天上では、太陽(日)と太陰(月)、そのほか
木星・火星・土星・金星・水星の五感星をはじめ、諸々の星が誕生した。太陽は陽の気の集
積、太陰(月)は陰の気の集積であるから、天上界が描かれるとき、太陽は東、月は西をそ
の正位とし、星は中央を占めることになる。
一方、地上には陰陽の二大元気の交合の結果、木・火・土・金・水の五原素、あるいは五気
が生じた。」
五行説の確立の背景に、七曜がある。
『暦と時の事典』内田正男著 雄山閣 1986【449.03/ウマ】 p.122 しちよう七曜の項目では、
「日・月と五惑星(木・火・土・金・水)を併せて七曜という。これは現代使われている週日
と同じ意味に使われているが、初めは宿曜経に基づく吉凶の判断資料としてもたらされたも
のである。(中略)太陽・月は別としてあとの五惑星は空にあまたある星の中でも特別扱い
され、西洋の占星術のもととなり、中国では五行説の確立の背景になった。(後略)」
という解説があった。
『暦学史大全』佐藤政次編 駿河台出版社 1977【449.02/サマ】
第十五章 宣明暦の暦註について 第二節 七曜と九曜について p.670
「七曜は宇宙の一部である太陽系の一部で、地球を中心として見た七つの光体に名付けたもの
である。即ち太陽・月・木星・火星・土星・金星・水星を指すのである。(後略)」
と、七曜の説明があった。
2「十門」の読み方
いくつかの漢字辞典等で、想定される読み「ジュウモン」「トオモン」などで調べたが、十門の項
目は見当たらなかった。
当館契約のデータベース「JapanKnowledgelib」で「十門」を検索したところ、収録されている『例
文仏教語大辞典』に「十門」の項目があり、読み方は「じゅうもん」。意味は「十の角度から自宗
の教理・主張を整理する仕方。」とある。(最終確認日:2023年12月24日)
『安藤昌益全集1』(既出)の『自然真営道』の「大序巻」の八門の説明について、以下のように記
述がある。
p.88
「(前略)だから儒教のように、五行説などといっても五器官となるはずはなく、三陰・三陽な
どといっても三器官であるはずはなく、六陰・六陽などといっても六器官であるものでもな
い。十干を数えても十器官になるわけではなく、十二支に分けても十二器官になりはしない。
(後略)」
また、p.92の注解の用語解説に「「六陰六陽」という言葉は昌益独自の用語か。」という記述があっ
た。
3「北国物語」の読み方
『鈴木牧之全集』上・下巻 鈴木牧之著 中央公論社 1983【918.6/255】に「北国物語」という題
名はなかった。
いくつかの文学事典で「北国物語」を題名として調べたが、掲載は確認できなかった。
- 回答プロセス
-
1 当館所蔵の『青空哲学』で該当箇所を確認。
前後の文章から、回答にある1、2については安藤昌益の思想である「八門」を説明している場
面であった。
3については鈴木牧之の『北国物語』という著作を紹介している場面であることを確認する。
2 安藤昌益に関する資料を調べる。
『安藤昌益事典 安藤昌益全集別巻』安藤昌益研究会編 農山漁村文化協会 1987
【121/325/別】p.266-267 八門(はちもん)
「人間の顔にある“まぶた・目玉・耳殻・耳穴・唇・舌・鼻・歯”の八つの器官をいう。
昌益はこれに独自の造字をして次のように記す。(変換できないため省略)
「八門」は当然にも昌益晩期の「四行・八気」説にもとづくもので、初・中期には五行
説により、
「眼・耳・鼻・口・舌ノ五根」(五145)
「眼・耳・鼻・舌・唇ハ五門ナリ」(九98)
とされ、「五根門」(一〇128 140)とも呼ばれている。
「八門」はそれぞれ「四行」の「進退」であり、それぞれを「根」とする腑臓があり、
かつそれぞれの機能により「転定」に通ずる「門」であるとされる。
「八門ハ乃チ八星天ニ人気ヲ通ジ、天気ヲ受入レ、天気・人気通感ヲ互ニスルノ門ナ
リ。此故に面部ノ八門ハ、天ノ根ニシテ人ノ根ナリ」(一五135)」
3 五行説がでてきたことから、易に関する資料を調べる。
・『図説世界占術大全』アルバート・S・ライオンズ著 原書房 2002【148/ラア】
p.182 「十二支」の説明に、五行、陰と陽の話あり。
「太陽は陽、月は陰、木星は陽、金星は陰、火星は陽、水星は陰、土星は陽である。」
・『世界占術大事典』日本占術協会 実業之日本社 1991【148.03/ニホ】 (回答記載)
・『陰陽道 呪術と鬼神の世界』鈴木一馨著 講談社 2002【148.4/スイ】(回答記載)
・『陰陽五行と日本の文化』吉野裕子著 大和書房 2003【148.4/ヨヒ】(回答記載)
七曜五行についても調べる。
・『名数数詞辞典』森睦彦編 東京堂出版 1980【031.5/モム】
・『暦学史大全』佐藤政次編 駿河台出版社 1977【449.02/サマ】(回答記載)
・『暦と時の事典』内田正男著 雄山閣 1986【449.03/ウマ】(回答記載)
・『暦入門』渡辺敏夫著 雄山閣出版 1994【449.3/ワト】
4 十門について、いくつかの辞典類で調べるが、「十門」の項目を見つけることができなかった。
当館契約当館契約のデータベース「JapanKnowledgelib」で、収録されている『例文仏教語大辞
典』に「十門」の項目があり、読み方は「じゅうもん」とあった。(回答記載)
(最終確認日:2023年12月24日)
5 鈴木牧之の著作について『鈴木牧之全集』上・下巻 鈴木牧之著 中央公論社 1983
【918.6/255】で調べるが、「北国物語」という著作は確認できなかった。
類似の著作名として、『北越雪譜』を見つける。
『図説北越雪譜事典』角川書店 1982【382/187】を確認すると、刊行されるまでに題名を決め
かねていた経緯があった。
p.116『北越雪譜』のできるまで
「家譜と日記をつづった『永世記録帖』(内題は「永代記録帖」)文化四年(一八〇七)
の条に『北越雪譜』刊行についての経過の概要が記されている。」
p.118
「外題については「北越雪中図会」は図会物のすたれているただ今おもしろからず、また
「北越雪話」では軽く思われて損であるし、北越の二字は先年板行の『北越奇談』に先
を越されて人まねのように思われる。だから雪中の二字が落ち着かない感はあるが、し
ばらく「越後国雪中奇観」とし、なおよく考えた上、『玄同放言』目録にも掲載して予
告をしたいと報じた。しかし七月の書簡ではすでに掲記した同書の目録には書名を「越
後雪譜」としており結局最終案はこれに落ち着いたもので、天保十二年(一八四一)の
馬琴の書簡にまでこの名が用いられている。」
<調査資料>
・『五行循環』吉野裕子著 人文書院 1992【148/117】
・『安藤昌益』尾藤正英編著 光芒社 2002【121.59/ビマ】
・『安藤昌益の実像』山崎庸男著 農山漁村文化協会 2016【121.59/ヤノ】
・『安藤昌益全集 15』安藤昌益著 農山漁村文化協会 1986 【121/325/15】
・『安藤昌益の思想』和田耕作貯 甲陽書房 1989【121.59/ワコ】
・『暦』広瀬秀雄著 東京堂出版 1993【449.81/ヒヒ】
・『暦の百科事典』暦の会編 新人物往来社 1986【449.03/コヨ】
・『日本国語大辞典 第2巻』小学館国語辞典編集部編 小学館 2001【813.1/シヨ/2】
・『日本国語大辞典 第6巻』小学館国語辞典編集部編 小学館 2001【813.1/シヨ/6】
・『広辞苑』新村出編 岩波書店 2018【813.1/シイ/1】
・『大辞林』松村明編 三省堂 2019【813.1/マア】
・『大漢和辞典 巻2』諸橋轍次著 大修館書店 1956【813/60/2】
・『大漢語林』鎌田正著 大修館書店 1992【813.2/カタ】
・『鈴木牧之資料集』新潟県教育委員会編・刊 1961【289.1/941】
・『日本古典文学大辞典 第6巻』日本古典文学大辞典編集委員会編 岩波書店 1985【910.2/ニホ6】
・『日本古典文学大事典』大曾根章介編 明治書院 1998【910.2/オシ】
・『明治大正期文芸書総目録』日外アソシエーツ編・刊 2007【903.1/ニチ】
・『国書総目録 第9巻』岩波書店 1977【025/39/9】
・『古典籍総合目録 第3巻』国文学研究資料館編 岩波書店 1990【025/302/3】
・『国書人名辞典 第2巻』一古貞次編 岩波書店 1995【281.03/244/2】
- 事前調査事項
- NDC
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- 小説.物語 (913 10版)
- 言語 (800 10版)
- 参考資料
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- 日本占術協会. 世界占術大事典. 実業之日本社, 1991.
- 鈴木一馨. 陰陽道 呪術と鬼神の世界. 講談社, 2002.
- 安藤昌益. 安藤昌 益全集1. 農山漁村文化協会, 1982.
- 鈴木牧之. 鈴木牧之全集 上巻. 中央公論社, 1983.
- 鈴木牧之. 鈴木牧之全集 下巻. 中央公論社, 1983.
- キーワード
-
- 安藤昌益
- 鈴木牧之
- 語句
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 団体
- 登録番号
- 1000344846