レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年04月18日
- 登録日時
- 2022/12/09 15:04
- 更新日時
- 2023/07/11 10:40
- 管理番号
- ASN2022-04
- 質問
-
未解決
イレイズム(illeism)という現象について解説した情報がほしい。
(イレイズムとは何か、中高生以上の女性がイレイズムの状態になる心理や実態)
- 回答
-
Illeismの「自分の名前を一人称として使用する」という用例にあたる解説をしている資料は発見できませんでした。
関連すると考えられる図書や論文を検索例とともに示しました。
- 回答プロセス
-
1.基本事項の確認
1-1.JapanKnowledge[契約データベース]
<キーワード:人称、自称、自称詞、人称代名詞、イレイズム、イレイスト、illeism、illeist など>
「人称」(『日本大百科全書(ニッポニカ)』)
代名詞や動詞に現れる文法範疇 (はんちゅう) の一種。次の三つの人称が区別される。
(1)一人称。話し手「私」または話し手を含む人たち「私たち」。
(2)二人称。聞き手「あなた」または聞き手を含む人たち(話し手を除いて)「あなた方」。
(3)三人称。一人称、二人称以外の人や物。「彼」「彼女」「彼ら」「彼女ら」など。
この三つの人称の区別は、世界のほとんどすべての言語にあるらしい。
「自称」(『日本国語大辞典』)
(1)(─する)自ら称すること。実際はそうでないのに、あるいは、世間ではそう認めていないのに、ある身分、肩書、名前を持っていると自分で称すること。
(2)(─する)自分のことをさして呼ぶこと。
「人称代名詞」(『日本国語大辞典』)
代名詞の一つ。人物についてさし示す代名詞をいう。
話し手(または書き手)自身をさす自称(一人称、「わたくし」「ぼく」「おれ」など)、
相手をさす対称(二人称、「あなた」「きみ」「おまえ」など)、
話し手や相手以外の第三者をさす他称(三人称、「このかた」「そのかた」「あいつ」「かれ」など)、
不特定または未定の人物をさす不定称(「どなた」「どいつ」など)に分けられる。
1-2.レファレンス資料 <分類:140(心理学)、8103(日本語学)、801(言語学)>
○次の資料では、該当する記述を確認できなかった。
『日本語大辞典 上下』(佐藤武義, 前田富祺編集代表; 工藤真由美 [ほか] 編集委員 朝倉書店 2014 8103/S85/*)
p.1611「人称」、p.1612「人称代名詞」などで呼称の解説はあるが、回答につながる記述なし
『国語学研究事典』(佐藤喜代治編 明治書院 1977 8103/KO472/C)
p.125「人称」、p.131「代名詞」などで呼称の解説はあるが、回答につながる記述なし
『応用言語学事典』(小池生夫編集主幹 研究社 2003 803/KO31)
p.193「呼称の性差」回答につながる記述なし
『発達心理学事典』(日本発達心理学会編 丸善出版 2013.5 143/N771-1)
『新・発達心理学ハンドブック』(田島信元, 岩立志津夫, 長崎勤編集 福村出版 2016.7 143/TA26-1)
『発達心理学辞典, [初版2刷]』(岩田純一 [ほか] 編集 ミネルヴァ書房 1996.11 143/I97/ア)
『発達心理学用語辞典』(山本多喜司監修; 山内光哉[ほか]編集 北大路書房 1991.9 143/H433)
『日本語学キーワード事典』(小池清治 [ほか] 編 朝倉書店 1997 8103/N774 )
『日本語学大辞典』(日本語学会編 東京堂出版 2018 8103/N77)
『日本語百科大事典』(金田一春彦, 林大, 柴田武編 大修館書店 1995 8103/KI42/ア)
『APA dictionary of psychology』(Gary R. VandenBos, editor in chief American Psychological Association 2007 140/A59)
『The Corsini encyclopedia of psychology and behavioral science 3rd ed.』(John Wiley & Sons 2001 140/C88/*)
『Encyclopedia of human behavior』(editor-in-chief, V.S. Ramachandran Academic Press 1994 140/E581/*)
『Encyclopedia of psychology』(Alan E. Kazdin, editor in chief American Psychological Association, Oxford University Press 2000 140/E582/*)
『Child psychology in practice, 5th ed』(Irving E. Sigel and K. Ann Renninger, volume editors John Wiley 1998 143/H294/*)
『International encyclopedia of psychology』(edited by Frank N. Magill Fitzroy Dearborn 1996 140/I57/*)
『Psychology basics』(edited by Frank N. Magill Salem Press 1998 140/P951/*)
『Encyclopedia of statistics in behavioral science』(editors-in-chief, Brian S. Everitt, David C. Howell Wiley 2005 1407/E58/*)
『Encyclopedia of human development』(Sage 2006 143/E58/*)
『Encyclopedia of applied developmental science』(editors, Celia B. Fisher, Richard M. Lerner Sage 2005 143/E581/*)
『Handbook of psycholinguistics』(edited by Morton Ann Gernsbacher Academic Press 1994 801/H293 )
『An encyclopaedia of language』(edited by N.E. Collinge Routledge 1990 801/E58/A)
『The linguistics encyclopedia』(edited by Kirsten Malmkjar Routledge 1991 803/L641)
『Encyclopedia of language & linguistics 2nd ed.』(Elsevier 2006 803/E581/ア1~803/E581/ア14)
『The Cambridge dictionary of linguistics』(Keith Brown and Jim Miller Cambridge University Press 2013 803/B77 )
2.図書
2-1.本学図書館所蔵資料から探す
2-1-1.本学図書館OPAC https://cat.lib.aasa.ac.jp/drupal/
<キーワード:人称、自称詞 など>
【★1】『世界をつなぐことば : ことばとジェンダー/日本語教育/中国女文字』
p.170-174「小学生の言語意識」(三枝優子)
小学5年生の男女を対象とした、一人称についてのアンケートやインタビューの結果の掲載あり。
○次の資料は、回答に繋がる記述はなかったが、人称や呼称に関する記載がある。
『日本語人称詞の不思議 : モノ・コト・ヒト・キミ・カミ』(三輪正著 法律文化社 2010.10 8153/MI68)
イレイズム、イレイストについては確認できなかったが、日本語の人称詞について触れている。
『話しことばへのアプローチ : 創発的・学際的談話研究への新たなる挑戦』(鈴木亮子, 秦かおり, 横森大輔編 ひつじ書房 2017.12 801/SU961)
p.145「語りにおけるインタビュイーの自称詞使用」
○次の資料では、該当する記述を確認できなかった。
『児童文化の中に見られる言語表現』(三宅光一編著 大学教育出版 2014.10 376158/MI76)
『乳幼児期のことばの発達とその遅れ : 保育・発達を学ぶ人のための基礎知識』(小椋たみ子, 小山正, 水野久美著 ミネルヴァ書房 2015.10 3785/O26)
2-1-2.ブラウジング(棚を見て探す)
<分類:80*(言語)、81*(日本語)>
【★2】『日本語の男女差』
p.207-228 「第十章 一人称詞、二人称詞、呼称」
幼児・少年期・大学生の3つにわけ、呼称の調査結果が掲載されている。
○次の資料は、回答に直接つながらないが、参考になる可能性がある。
『日本語は「空気」が決める : 社会言語学入門』(石黒圭著 光文社 2013.5 80103/I73)
p.152-182 「第七章 日本語の人称表現」
日本語の人称表現の特徴について記載あり。
「話し手のアイデンティティに根ざす」では、成長によって一人称が変化することについて触れている。
『『言語』セレクション, 第2巻』(大修館書店月刊『言語』編集部編 大修館書店 2012.5 804/TA24/2)
p.67-73 「呼称のポライトネス -”人を呼ぶこと”の語用論-」(滝浦真人)
対人的距離によって呼称が変わることについて、論じられている。
○次の資料は、回答に繋がる記述はなかったが、人称や呼称に関する記載がある。
『日本語学研究事典』(飛田良文[ほか]編 明治書院 2007.1 8103/H54)
p.190「人称」、p.200,467-468「代名詞」
『日本語教のすすめ』(鈴木孝夫著 新潮社 2009.10 8104/SU96-1)
p.157-212 「第4章日本語に人称代名詞は存在しない」
『鈴木孝夫の曼荼羅的世界 : 言語生態学への歴程』(鈴木孝夫著 冨山房インターナショナル 2015.7 804/SU96-1)
p.115-121 「日本語の自称詞 対人関係における自己規定の問題」
『ことばと文化』(鈴木孝夫著 岩波書店 1973.5 801/SU96)
p.129-206 「六 人を表すことば」
『知っているようで知らない日本語のルール』(佐々木瑞枝著 東京堂出版 2018.1 810/S75)
p.22-25「「私」「僕」「俺」「あたし」「わし」自分のことを何と言う?」
『ことばの社会心理学, 第4版』(岡本真一郎 ナカニシヤ出版 2010 80104/O42/イ)
p.55-64「2 人の呼び方」
自称詞に関して、特に下位者が年少の子どもの場合、下位者から上位者へは名前が用いられることがある。
『子どもの発達とことば』(伊藤崇著 ひつじ書房 2018.5 80104/I892)
p.82-86「9章 3 言語イデオロギーを利用する」
○次の資料では、該当する記述を確認できなかった。
『日本語百科大事典, 縮刷版』(金田一春彦, 林大, 柴田武編 大修館書店 1995.5 8103/KI42/ア)
『日本語の歴史 : 青信号はなぜアオなのか』(小松英雄著 笠間書院 2001.10 8102/KO61-4)
『鈴木孝夫言語文化学ノート』(鈴木孝夫著 大修館書店 1998.4 804/SU96-2)
『『言語』セレクション, 第1巻、第3巻』(大修館書店月刊『言語』編集部編 大修館書店 2012.5 804/TA24/1,3)
『日英語に見るもののとらえ方』(嶋村誠著 関西学院大学出版会 2014.3 801/SH39)
『「役割語」小辞典』(金水敏編 研究社 2014.9 8149/KI46-2)
2-2.出版されている図書から探す(本学図書館の所蔵問わず)
2-2-1.WebCat Plus http://webcatplus.nii.ac.jp/
<キーワード:人称 名前呼び、一人称 名前、呼称 名前、呼称 名前呼び など>
●次の資料は、当館所蔵なし。
『一人称二人称と対話』(三輪正著 人文書院 2005.2)
『日本語学 17(9)』(明治書院[編] 明治書院 1998)*雑誌
特集 人の呼び方
〇次の資料では、該当する記述を確認できなかった。
『自己意識の発達心理学』(梶田叡一編著 金子書房 1989.5 14193/KA23-4)
3.論文
3-1.【★3】CiNii Research
<タブ:論文/キーワード:自称詞、一人称 幼児、一人称 女性、一人称 学生 など>
長田 瑞恵 "自称詞の獲得と使い分けの発達的変化~幼児期3年間にわたる縦断的検討~"
日本心理学会大会発表論文集 84 PO-011-PO-011 2020/09/08 [PDF] *抄録
長田 瑞恵 "自分の呼称の変化の縦断的検討"
十文字学園女子大学紀要 51 p.143-157 2021/03/28 [PDF]
幼児期から中学生の三人称(自分の名前やニックネーム)と一般的自称詞の使用について。
西川 由紀子 "子どもの自称詞の使い分け : 「オレ」という自称詞に着目して"
発達心理学研究 14 (1) p.25-38 2003 [PDF]
小嶋 玲子 "女子大学生の自称詞使用の変化―2001年と2011年を比較して―"
桜花学園大学保育学部研究紀要 16 p.65-77 2017/10/31 [PDF]
西川 由紀子 "女子学生の自称詞の使い分け : わたし・うち・名前"
研究紀要(京都華頂大学・華頂短期大学図書館委員会 編) (56) p.91-99 2011 [本学所蔵なし]
有松 しづよ, 皆川 晶 "キャンパス内における女子大学生の使用自称詞とその選択基準 : 日本語教育における自称詞の提示に係る基盤研究として"
かやのもり : 近畿大学産業理工学部研究報告 (15) p.37-41 2011 [PDF]
宮崎 あゆみ "日本の中学生のジェンダー一人称を巡るメタ語用的解釈―変容するジェンダー言語イデオロギー―"
社会言語科学 19 (1) p.135-150 2016 [PDF]
p.144「名前を一人称として使用する非人称自称(Non-Pronominal Self-Reference; NPSR)」という記述あり。また、NPSRの使用についての中学生へのインタビューを掲載している。
郡 千寿子, 成田 久美子 "一人称代名詞の使用実態と使用意識について : 弘前の小学生の場合"
弘前大学教育学部紀要 89 p.1-8 2003/03/31 [PDF]
河崎 道夫, 黒太 綾乃 "自分の名を言うこととはどういうことか?"
心理科学 26 (1) p.41-55 2006 [PDF]
宮崎 あゆみ "権力交渉を浮き彫りにする言語実践 日本の女子中学生が紡ぐジェンダー指標性のエスノグラフィ"
文化人類学 84(4) p.522-531 2020 [PDF]
※CiNii Researchでは、論文以外にも研究プロジェクトなども検索できます。
<タブ:プロジェクト、キーワード:自称詞>
長田瑞恵 “自称詞の獲得と使い分けの発達:自己概念と心的用語との関連から”
KAKENへのリンクへアクセスすると、研究成果の概要、研究成果報告書を確認できる。
また、研究経過の学会発表、研究成果のリンクも確認できる。
など
3-2.【★4】MAGAZINE PLUS <キーワード:自称詞>
本間 美奈子 "首都圏方言若年層話者の人称詞の使い分け―自称を中心に"
首都圏方言の研究 1(10) p.59-68 2019/03 [本学所蔵なし]
三樹 陽介 "自称詞の場面による使い分け―首都圏の大学に通う大学生への調査から"
首都圏方言の研究 (4) p.6-12 2013/03 [本学所蔵なし]
など
3-3.【★5】Google Scholar <キーワード:自分のことを名前で呼ぶ>
高橋美奈子 "沖縄県における女子大学生の人称表現"
ことば (22) p.78-90 2001/12 [PDF]
「名前を自称詞とすることは、幼稚化現象である」とある。
など
○次のデータベースでは、該当する文献を確認できませんでした。
EBSCOhost[契約データベース]
<キーワード:illeism、illeist、Non-Pronominal Self-Reference>
次のデータベースの横断検索。
MLA international bibliography with full text, MLA Directory of Periodicals,
APA PsycInfo, ERIC, TRC, LISTA with full text, Ebook collection
4.ウェブ情報
<キーワード:イレイズム、イレイスト、illeism、illeist など>
4-1.Wikipedia(日本語) https://ja.wikipedia.org/wiki/
「三人称」
"イリイズム"の項目あり。
参考文献[2]に「元は誰を指すかにかかわらず代名詞 heを使いすぎることを意味した」
とある。その出典として次が挙げられている。
→Internet Archive. https://archive.org/
『A new English dictionary on historical principles Vol.5 Part.2』
(founded mainly on the materials collected by the Philological Society ; edited by James A.H. Murray, Clarendon Press, 1888-1933)
URL:https://archive.org/details/newenglishdicpt205murruoft/
p.42 「Illeism」、「Illeist」の項目あり。
トップ>「三人称」で検索
以上
<Web最終確認日:2022/04/27>
- 事前調査事項
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津田 恭充“日本の青年期女性における自己愛とファーストネームイレイズム”日本心理学会大会発表論文集 84 p.50 2020
- NDC
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- 日本語 (810 10版)
- 言語学 (801 10版)
- 参考資料
-
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【★1】遠藤織枝, 小林美恵子, 桜井隆 編著 , 遠藤, 織枝, 1938- , 小林, 美恵子, 1951- , 桜井, 隆, 1948-. 世界をつなぐことば : ことばとジェンダー/日本語教育/中国女文字. 三元社, 2010.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010942416-00 , ISBN 9784883032693 (当館請求記号:8104/E59) -
【★2】F.C.パン 編 , 堀素子 [ほか]著 , Peng, Fred C. C , 堀, 素子. 日本語の男女差. 東西手話学会, 1981.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001571343-00 , ISBN 4924688010 (当館請求記号:814/P15) - 【★3】CiNii Research <https://cir.nii.ac.jp/> (図書や論文、外部連携機関、機関リポジトリ等の研究データ、KAKENの研究プロジェクト情報などを横断検索できるデータベース)
- 【★4】Magazine Plus[契約DB] (一般誌から専門誌、大学紀要、海外誌紙まで収録した雑誌記事(書誌)データベース)
- 【★5】Google Scholar <https://scholar.google.co.jp/> (ウェブ検索サイトのGoogleの提供する検索サービスの一つ。主に学術用途での検索を対象としている。)
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【★1】遠藤織枝, 小林美恵子, 桜井隆 編著 , 遠藤, 織枝, 1938- , 小林, 美恵子, 1951- , 桜井, 隆, 1948-. 世界をつなぐことば : ことばとジェンダー/日本語教育/中国女文字. 三元社, 2010.
- キーワード
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- イレイズム
- イリイズム
- illeism
- 一人称
- 自称詞
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000325284