①『壁絵のある家4』には、丹羽洋介著「イタリアの壁絵の歴史と技法」の記載があり、「ルネッサンスは、壁画の時代で、外壁・内壁共にフレスコなどで埋め尽くされた。外壁の装飾ではグラッフィートが広く行われた。この技法はフレスコから派生したもので、黒や赤茶色で着色した漆喰の上に、白色の石灰ノロ(石灰クリーム)を薄く塗り、生乾きのうちに図柄に沿って表面を削り取る」と説明されている。「グラッフィートは極めて耐久性が強いので、ルネッサンスの頃のものが今でも当時のままに残っている」とも記述されている。また、グラッフィートが施された陶板や外壁など、イタリアで見られる壁の写真がカラーで紹介されている。
②『デザイン発見 壁絵のある家2』では、スイスやオーストリアで見られるスグラッフィートが施された壁の写真がカラーで紹介されている。
③『フレスコ画のルネサンス』には、「第10章 芸術論の中のフレスコ画 ヴァザーリのフレスコ画論」の項があり、「ズグラッフィート法」の中で、「ズグラッフィート(あるいはグラッフィート)は、いわば『掻き落とし』の壁画技法です」と書かれている。そして、「まず、燃焼して炭化した麦藁を石灰に混ぜたものをアッリッチョ(下塗り漆喰)として、その上にイントーナコ(上塗り漆喰)の白い石灰を塗り重ねます。そして、図柄の輪郭線を先の鋭い錐で引っ掻き、その周囲のイントーナコをすべて削り取ってしまうと、黒地に線刻された白い図柄が浮き上がって見えてきます。この技法を『掻き落とし法』といった意味合いの『ズグラッフィート』(sgraffito)あるいは『グラッフィート』(graffito)と呼んでいます」と説明されている。また、実際にズグラッフィートが施された壁面のモノクロ写真や、ズグラッフィートの断面図が掲載されている。
④『フレスコ画の技法』には、「2 フレスコ画の技法入門」の項があり、「各種技法」の中に「グラフィート」として、「グラフィート(graffito)またはズグラフィート(sgraffito)は引っ掻くという意味で、文字通り壁面を引き掻いて描く方法です」と書かれている。描き方について、「方法として、先ず下地として色壁を塗り、それが乾いたら、白の上塗りを行います。その上塗り壁を引っ掻いて、あるいは削って下の色を出します」と説明されており、使用する道具や手順についてモノクロ写真付きで紹介されている。
⑤『中世の都市』には、「第二章 都市を描く」の項があり、「5 史料からデザインへ」の「復元と史料」の中で、キアラヴァッレ修道院の司教座聖堂参事会室にある掻き絵が挙げられており、「描き絵とは、イタリア語で『グラッフィート graffito』と呼ばれる装飾技法で、ルネサンス・パラッツォの外壁や中庭に施された作例が数多い。漆喰壁面を引っ掻くようにして模様を描き、通常は引っ掻いた部分のみ漆喰下の黒い下地が浮き上がって見える」と記述されている。また、キアラヴァッレ修道院の掻き絵のモノクロ写真も掲載されている。
⑥『美術手帖』1978年10月増刊号では、「絵を描くための道具と材料」という特集が組まれており、「油彩」の項にある「テンペラ画」の中に「卵テンペラの技法と用具」として、「⑤金地を利用して色彩を組み合わせる文様の描き方の代表的な方法として、グラッフィート(引っかき法)と呼ばれるものがある。卵黄と混合した顔料で、ある色面を金地上につくり、乾いた後に、先の尖った木の棒で色をかき落とすことによって金地を露出させ、色彩と金を対比させて文様をつくる方法である」と記述されている。
⑦『横浜国立大学教育人間科学部紀要 4 自然科学』第10集に掲載されている、赤木範陸著「チェンニーノ・チェンニーニによる金地背景及び卵黄テンペラ画の処方―使用可能な現代的処方へ―」の中で、「金箔上の描画」として「スグラッフィート」の項があり、「金の上に描画した部分を、尖らした割り箸などで引っ掻くと、下の金が現れて模様なども描く事が出来る」と書かれている。
⑧『るるぶウィーン・プラハ・ブダペスト’24』には、「プラハ」の項があり、チェスキー・クルムロフ城の写真スポットとして、「漆喰に彩色するスグラッフィートという装飾が特徴の塔」とその説明文がカラー写真とともに紹介されている。
⑨『世界の家の窓から』は、自宅の窓からの風景を写した写真を投稿するWebサービスを書籍化したもので、「Chapter1 View From My Window 私の窓からの眺め」の項があり、スペインのバルセロナから投稿されたカラー写真と「この壁は1770年代のものといわれています。カタルーニャ風のズグラッフィートという技法で描かれてるんですよ」という投稿文が掲載されている。