レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年12月17日
- 登録日時
- 2021/02/07 14:00
- 更新日時
- 2021/02/07 14:04
- 管理番号
- 堺-2020-088
- 質問
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解決
朱色という色、顔料が宗教にどう関わっているか知りたい。
- 回答
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1.『日本史色彩事典』(吉川弘文館 2012.5)p.11, 60, 402
古代には、死者の鎮魂と再生を祈って葬祭に赤色を用いる「施朱」が行われていたと記述あり。
六世紀ごろの古墳石室には赤い顔料で鎮魂と魔除けの文様が確認されているほか、呪術の目的を持つ原始的な化粧にも使われたことが書かれている。
中国の五行説では、朱(赤)は方位で南、仏説では火、四神の一つ朱雀(朱鳥)。
2.『赤橙黄緑青藍紫』改訂第3版(青娥書房 1986.2)p.80-84
昔の中国では朱が高位高官の名誉を表わす色で、中国の文物制度の渡来とともに、古代日本にも朱塗り、丹塗りの色彩文化が移植された。その影響は宮殿、官舎や、仏寺の堂塔伽藍、日本固有の神社建築にまで及んでいると書かれている。
3.『色に出でにけり』(大阪人権博物館 1998.10)p.49
4.『色・彩飾の日本史』(淡交社 1990.6)p.39-53
『魏志』倭人伝に、中国の顔料を使って身体を赤(朱丹)で装飾していた記述がある。神仏にかかわらず宗教の象徴的な建造物や祭器にも使われていたと記載あり。
朱色の顔料の原材料である水銀は防腐力があり、古墳時代の棺に用いられた。
5.『色彩の博物事典』(誠文堂新光社 2019.3)p.90
仏寺建立・大仏造営の際、「紺丹緑紫」という基調配色が使われた(丹=赤)。
6.伏見稲荷大社ホームページ「よくあるご質問」>「なぜ「お稲荷さん」は「朱塗り」なの?」
伏見稲荷神社の鳥居は朱色に塗られているが、稲荷大神の力である豊穣を表す色とされている。
(中央図書館)
- 回答プロセス
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①件名「色彩」+「辞典」「歴史」などで朱色の持つ意味合いについて検索。
回答1~5の資料に朱色と宗教・儀式のかかわりについての記載を発見。
②宗教と朱色の関係について調査。
鳥居の色について、レファ協事例「鳥居の起源や形、色について知りたい。稲荷神社の鳥居がなぜ赤なのか等。」を参照したほか、ホームページの関連事項を発見。
そのほか、仏教の「五色」に赤が含まれることなどが思い当たったが、朱色との関連は見つけられなかった。
- 事前調査事項
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観光ボランティアをしている方で、観光客から尋ねられたとのこと。
- NDC
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- デザイン.装飾美術 (757 8版)
- 宗教 (16 8版)
- 参考資料
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丸山伸彦 編 , 丸山, 伸彦, 1957-. 日本史色彩事典. 吉川弘文館, 2012.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023576438-00 , ISBN 9784642014670 (p.11, 60, 402) -
福田邦夫 著 , 日本色彩研究所 編 , 福田, 邦夫, 1931-2013 , 日本色彩研究所. 赤橙黄緑青藍紫 : 色の意味と文化 改訂第3版. 青娥書房, 1986.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001788627-00 , ISBN 479060103X (p.80-84) -
大阪人権博物館 編 , 大阪人権博物館. 色に出でにけり : 身分と差別. 大阪人権博物館, 1998.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002742545-00 (p.49) -
長崎盛輝 著 , 長崎, 盛輝, 1912-1995. 色・彩飾の日本史 : 日本人はいかに色に生きてきたか. 淡交社, 1990.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002047633-00 , ISBN 447301150X (p.39-53) -
城一夫 著 , 城, 一夫, 1937-. 色彩の博物事典 = Color in Art and Culture : 世界の歴史、文化、宗教、アートを色で読み解く. 誠文堂新光社, 2019.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I029559522-00 , ISBN 9784416519066 (p.90) -
伏見稲荷大社 よくあるご質問.
http://inari.jp/about/faq/ (2021年2月7日確認)
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丸山伸彦 編 , 丸山, 伸彦, 1957-. 日本史色彩事典. 吉川弘文館, 2012.
- キーワード
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- 朱色(しゅいろ)
- 色彩(しきさい)
- 宗教(しゅうきょう)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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キリスト教では、赤はキリストが流した血の色であり、救済を意味する色という意味合いを持つとのこと。また、絵画では聖母マリアの色は赤で描かれている、とある。しかし、キリスト教における朱色の意味合いは確認できなかった。
ヒンドゥー教でも「血」を象徴し、同時に春の再生を祈願する捧げものの意味を持っている。
参考文献
『色彩の歴史と文化』(明現社 1996.11)
『色彩の博物事典』(誠文堂新光社 2019.3)
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000293601