レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2010/04/19
- 登録日時
- 2010/09/11 02:00
- 更新日時
- 2010/09/21 12:33
- 管理番号
- 埼熊-2010-018
- 質問
-
未解決
「御用簗(やな)」の起源について知りたい。いつ、どこで「御用簗」という語を使って行われるようになったのか。全国的なものと、利根川流域についてそれぞれ知りたい。
- 回答
-
「御用簗」そのものについて明快に記述されている資料は見つからず。
調査した文献に「御用簗」という語自体がほとんど見られないことから、御簗所(おんやなしょ)(『広島藩における近世用語の概説』より)や御用鮎(『福生市史資料編 近世2』より)のように、将軍や大名に献上する際に称される「御用○○」という呼称の一種ではあるものの、使用した地域が限定された言葉の可能性がある。
- 回答プロセス
-
(漁法に関する資料の調査)
『明治前日本漁業技術史 新訂版』(野間科学医学研究資料館 1982)
p620-635「梁漁技術史」の章あり。梁漁の起源から時代ごとの解説が詳しい。
p626 「江戸時代に入るや、河川の交通も盛となり、且又各種の漁業も発達し、勢ひ簗は制限乃至禁止された所が多かったやうである。併し乍ら猶少なからぬ簗が、各地に行はれたものの如く、その巨大なものに至っては、藩営の形を採ったものも少なくない。」との記述あり。ただし、そのあとに各地の簗が紹介されるが藩営の具体的な名前はない。
(鮎に関する資料の調査)
『アユと日本人』(松井魁著 法政大学出版局 1986)
p50、p107、p188 「簗漁」についての記述はあるが「御用簗」ということばは見つからず。
ただし、p109の簗をめぐる取り決めや争論の事例紹介中に「御料場」という言葉が出てくる。
「島根県の旧浜田藩では、高津川の流域にある安富村と虫追村という二つの村境にある場所を禁漁区とし、そこで高津村とヨコタ村の二人の代官や両方の村の庄屋がたちあってアユ漁がおこなわれた。川の上下に張網を設置し、そのなかでウをつかってアユをとらせるノメドリ漁がおこなわれた。その場所は代官川とよばれ、御料場とされていた。」
(藩主等が作った(藩主等のための)簗についての資料の調査)
『羽村町史』(羽村町史編さん委員会編 羽村町 1983)
p370 御用鮎の項目あり。ここには代官がいたので江戸に送る鮎を御用鮎と呼んだようだ。ここでは簗との関係は不明。
『福生市史 上』(福生市史編さん委員会編 福生市 1993)
p619「鮎唄と上納方法」の項あり。こちらも代官がおり、江戸城御賄所へ届けるのを御用鮎と呼んでいる。この鮎を取るための方法として簗・しら場・網張り場があげられている。
p624「御用しら」という名称あり。
「8月に掛け渡す」という表現があるので、その時期だけ御用のためにしら場として使われるものと考えられる。
御用鮎 (代官支配地にあっては)江戸城に送る鮎のことらしい。
『福生市史資料編 近世2』(福生市史編さん委員会編 福生市 1990)
p289 「第一節 御用鮎」に、「幕府は、近世前期より玉川付きの特定の村々に将軍家御召上り料の御菜肴として、鮎の上納を命じていた。それらの村々は、諸役の一つとして御菜鮎上納御用役を負担することによって、漁場の占有利用権を得ることができた」
『日本農書全集 59 漁業2 玉川鮎御用中日記(武蔵)』(佐藤常雄編集 農山漁村文化協会 1997)
p12 玉川鮎御用中日記に「今日は雨天ではあるが、御用しらを張るように村の漁師に言いつけた。」とあり。
p14の解説によれば、鮎を捕獲するために設置した簗を「しら」といい、上納鮎を捕獲するためのしらを「御用しら」という。
『可部町史』(広島市役所編 広島市 1976)
p379-382 将軍献上用の鮎およびうるかを藩営の御簗所で捕獲をしていた。御簗所の管理等の説明あり。
雑誌『多摩のあゆみ 110号』(平成15年5月15日発行)たましん地域文化財団
p74 図3に「道志川簗ノ図」(『新編相模國風土記稿』)あり。
(「御用」についての調査)
『日本国語大辞典 5』(日本国語大辞典第二版編集委員会 小学館 2001)
p1106 〈御用〉の項あり。
②天皇・宮中・幕府・大名・政府などの用事、入用をいう語。
御用簗と同じ用途で使われるか。御用+名詞は、江戸時代に使われたことばが多い。
「御用絵師」「御用窯」など。
(その他の調査済み資料)
『国史大辞典』(吉川弘文館) 簗の項あるが関連する記述なし。
『古事類苑 産業部1』(吉川弘文館 1984) p397に魚梁の項あるが関連する記述なし
『事物起源選集 4 日本文化史事物起源辞典』(クレス出版 2004)
p177に「梁の始」の項あるが、御用簗については記述なし。
『事物起源選集 7 日本事物起原誌』(クレス出版 2004)
『事物起源選集 8 日本文化事物起源考』(クレス出版 2004)
『日本漁具・漁法図説』(成山堂書店)
『荒川の漁具 漁・祖おやの譜録 特別展』(埼玉県立博物館 1984)
p1-4に河川の漁法に関する参考文献について解説あり。
『埼玉県の漁具・漁法』(埼玉県蚕糸特産課編 〔埼玉県立浦和図書館(製作)〕 1989)
p93に簗の項あるが関連する記述はなし。
『戸田市の伝統漁法』(戸田市教育委員会 1975)
『戸田市の伝統漁法 補』(埼玉県戸田市教育委員会 1076)
『荒川水系の伝統漁撈 平成19年度企画展』(戸田市立郷土博物館 2007)
『荒川 人文 荒川総合調査報告書 4』(埼玉県 1987)
第1章 荒川の伝統漁撈に簗の記述(p15、27)、簗の写真(p18、38)あり。御用については記述なし。
『江戸・水の生活誌』(新草出版 1987)
『日本水産捕採誌 復刻版』(農商務省水産局 岩崎美術社 1983) 索引に「簗」あり。下p174-187がいわゆる「簗」の章で、各地(安芸・越中・肥後・加賀)の簗を紹介しているが、御用にかかわる記述はなし。
『関東の生業 2 漁業・諸職』(明玄書房 1981) 「埼玉県の漁業・諸職」(小林茂著)を収録している。。
簗の記述はあるが、御用はなし
『利根川流域の自然と文化 民俗・考古・美術』(関東地区博物館協会編 茨城新聞 1983)
『利根川随歩』(添田知道著 崙書房 1974)
『利根川・荒川流域の生活と文化』(利根川文化研究会編 国書刊行会 1995)
『利根川読本』(流山市立博物館友の会編 流山市立博物館友の会 1992)
『大利根百話』(関東建設弘済会 1987)
『新・利根川図志 源流・奥利根水上から関宿へ 上・下』(山本鉱太郎著 崙書房出版 1997-8)
上巻p118「利根川の落ちアユと観光簗」御用簗の記事なし。
『香魚の話 日田の鮎押し』(桜木敏光著 みずき書房 1985)
p196に簗に関する記述あるが御用簗については記述なし。
『アユ 日本の美しい魚』(内山りゅう著 平凡社 1998)
『アユの生態 中公新書 505』(小山長雄著 中央公論社 1978)
『アユの博物誌』(川那部浩哉著 平凡社 1982)
『ここまでわかったアユの本 変化する川と鮎、天然アユはどこにいる?』(高橋勇夫著 築地書館 2006)
『アユの話 同時代ライブラリー192』(宮地伝三郎著 岩波書店 1994)
(インターネット情報)
《Google》を〈御用簗 or 御用やな〉で検索する。
《洛北史学会》 大洲藩(伊予国)の事例
藩が御用簗を設置。藩主、藩士が漁の見物や鮎の捕獲を行った。
(http://www2.kpu.ac.jp/letters/hist_studies/rakuhoku/11thmeeting.htm 2010/05/20最終確認)
《上小出町》
南端の一角に、簗場という場所がある。ここは、江戸時代の初めに厩橋城主平岩親吉の作った御用簗のあった場所である。
※「御用簗」という名称はあまり一般的ではなく、「藩主等が作った(または藩主等のための)簗」、という意味だと思われる。
(http://www.momokawa-es.menet.ed.jp/mukasi/koide.htm 前橋市立桃川小学校 2010/05/20最終確認)
《Google》を〈藩御用 & 簗〉で検索する。
《柳瀬八幡宮》
「柳瀬の地名の由来は、幕府へ献上する鮎の広島藩御用の「簗(やな)漁」の場所であった ことで地名となった。」
(http://www.hitomachi.city.hiroshima.jp/kameyama-k/machi/yanasehatiman.html 広島市 2010/05/20最終確認)
《Google》を〈藩直営 & 簗〉で検索する。
《近世文書用語用例ノート(広島版)》 広島地方の近世古文書の中から、用語用例を集めたもの
「簗 やな」 川の瀬などで魚をとるための仕掛け。木を打ち並べて水を堰(せ)き一ヵ所に流すようにし、そこに流れて来る魚を梁簀(やなす)に落し入れてとるもの。
「御簗所」 藩直営の鮎の捕獲場のこと。一時期深川村に移されていたが、元文3年(1738)再び可部河戸に移された。(郷土史メモ)引用文献に『相田地区辺の郷土史メモ』(横山雅昭)とあり。
(http://www.geocities.jp/tak10172/index.html 2010/05/20最終確認)
- 事前調査事項
- NDC
-
- 漁労.漁業各論 (664 9版)
- 参考資料
- キーワード
-
- アユ
- 漁法
- 簗(やな)-御用簗
- 江戸時代-語彙
- 利根川
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000071181