レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013年09月17日
- 登録日時
- 2016/12/21 10:16
- 更新日時
- 2023/05/23 13:53
- 管理番号
- 232
- 質問
-
解決
先日(2013年9月)打ち上げられた日本のロケット「イプシロン」について、名称の由来を知りたい。
- 回答
-
日本は代々の固体燃料ロケットの名称にギリシャ文字の読みを当てており、イプシロン(E,ε)は
・Evolution&Excellence(ロケット技術の革新・発展・進化)
・Exploration(宇宙の開拓)
・Education(技術者の育成)
の頭文字が由来である。
一部資料では
・「いい」という言葉の響き
も由来に含まれている。
2023.3.31追記
イプシロンロケットプロジェクトに携わった森田泰弘氏の著作『イプシロン、宇宙に飛びたつ』(宝島社 2015年)では、Evolution&Excellence、Exploration、Educationに加えて
・記号"ε"が持つ意味(「小さいが存在感がある」→「小さいことに意味がある」)
・"M"を90度回転させた文字"E""ε"(日本が過去に開発したM[ミュー]ロケットの"M"より。Mロケットの「世界の先を行くようなチャレンジ精神」を受け継ぎながらも、それらのスケールをはるかに超える)
・Endurance(不撓不屈の精神でどんなことも乗り越えていく)の頭文字
も由来としている。
ただし、Enduranceは森田氏の心情であり、公表されたものではない。
- 回答プロセス
-
書架で近年(2010~2013年)出版された宇宙開発関連書を調査。
・『宇宙と地球を視る人工衛星100』(中西貴之/著 ソフトバンククリエイティブ 2010年)
・『星のかけらを採りにいく』(矢野創/著 岩波書店 2012年)
・『宇宙開発がまるごとわかる本』(宇宙科学研究倶楽部/編 学研パブリッシング 2013年)
・『宇宙探査機』(フィリップ・セゲラ/著、川口淳一郎/監修、吉田恒雄/訳 飛鳥新社 2013年)
には掲載されていなかった。
書架で時事用語関連書を調査。
・『現代用語の基礎知識2013』(自由国民社 2013年)p.735~736項目「イプシロンロケット」…概要はあるが名前の由来には触れられていない。
・『朝日キーワード 2014』(朝日新聞出版/編 朝日新聞出版 2013年)…掲載なし。
当館契約のデータベース「ヨミダス」より、キーワード「イプシロン」+「由来」、「イプシロン」+「名前」、「イプシロン」+「意味」で検索。
①2012年1月17日朝刊31ページ[鹿児島]「[衛星の母港](5) 次世代型イプシロン期待(連載)=鹿児島」
②2013年8月2日朝刊23ページ[鹿児島]「[学校ダイアリー]肝付町立内之浦小学校=鹿児島」
③2013年9月8日朝刊06ページ「基礎からわかるイプシロン=特集」
が見つかった。
①は「K(カッパ)、L(ラムダ)、M(ミュー)と、ギリシャ文字の読み方が使われていた歴代の固体燃料ロケットの伝統を受け継ぐE(イプシロン)。『Evolution&Excellence(ロケット技術の革新・発展)』『Exploration(宇宙の開拓)』『Education(技術者の育成)』などの意味も込められている。」
②は「頭文字のEには『Evolution&Excellence(ロケット技術の革新・発展)』『Exploration(宇宙の開拓)』『Education(技術者の育成)』などの意味も込められている。」
③は「日本の固体燃料ロケットの名前は、カッパ(K)、ラムダ(L)、ミュー(M)と、代々アルファベットにギリシャ文字の読みを当てており、イプシロン(E)は、探査(Exploration)や進化(Evolution)の頭文字と、『いい』という言葉の響きから名づけられた。」
とある。
③ではExcellence,Educationが含まれておらず、「いい」という言葉の響きも名称の由来と説明している。
イプシロンを開発したJAXA(宇宙航空研究開発機構)のHPを確認。
HPの検索窓よりキーワード「イプシロン」を検索。
平成22年7月14日のプレスリリース「イプシロンロケットプロジェクトについて」(PDFファイル)が見つかった。p.2で
「本ロケットの名称を『イプシロン(E)ロケット』とし、プロジェクト名称を『イプシロン(E)プロジェクト』とする。【由来】日本が独自に開発し、世界最高レベルにまで発展させてきた固体ロケットシステム技術を継承するものとして、これまでと同様に、ギリシャ文字を冠した型式名称としたもの。
☆Evolution&Excellence ロケットシステムを革新、さらに進化・発展させる
☆Exploration 宇宙という未知を開拓し探求し続け、日本ひいては人類の発展に貢献する
☆Education M(ミュー)ロケットまでの固体ロケットが日本のロケット技術者の育成に果たした大きな役割を継承する」
と説明している。
(http://www.jaxa.jp/press/2010/07/20100714_sac_epsilon_j.html ) 2023年3月31日確認
以上より、日本は代々の固体燃料ロケットの名称にギリシャ文字の読みを当てており、イプシロン(E,ε)は
・Evolution&Excellence(ロケット技術の革新・発展・進化)
・Exploration(宇宙の開拓)
・Education(技術者の育成)
の頭文字が由来である。
一部資料では「いい」という言葉の響きも由来に含まれている。
2023.3.31追記
以下の資料にも名称の由来が記されている。
そのうち『世界にほこる日本の先端科学技術 4 宇宙・深海・極地への挑戦!』、『イプシロン、宇宙に飛びたつ』は市内の他図書館の蔵書で、調査後に出版されたものである。
・『朝日新聞縮刷版 2013-9』(朝日新聞社 2013年)p.740 2013年9月15日朝刊4面「イプシロン 地平の先に」…「イプシロンはギリシャ文字の『E』で、『革新』『開拓』『教育』などの意味が込められている。」
・『世界にほこる日本の先端科学技術 4 宇宙・深海・極地への挑戦!』(法政大学自然科学センター/監修、こどもくらぶ/編 岩崎書店 2014年)p.6…「名称は、これまでの『ラムダ(Λ)ロケット』『ミュー(M)ロケット』などと同じく、ギリシャ文字の『E(イプシロン)』の読み方となりました。『E』の文字は、英語で『E(イー)』を頭文字とするEvolution&Excellence(技術の革新・発展)、Exploration(宇宙の開拓)、Education(技術者の育成)に由来するといいます。」
・『イプシロン、宇宙に飛びたつ』(森田泰弘/著 宝島社 2015年)p.122~125…「イプシロンという名前の由来には諸説あるようだが、(中略)まず、そもそも記号としての"ε"には、小さいけれど存在感がある、という深い意味がある。つまり、小さいことに意味があるということだ。まさに、イプシロンそのものであろう。そして、イプシロン(Epsilon)のEは(中略)すなわち、Evolution&Excellence(卓越したものをさらに進化させる)、Exploration(壮大な宇宙探査時代を切り拓く)、Education(ロケット開発を通して人間性を磨く)などである。もう一つ、個人的なことなので記者会見では述べなかった意味がある。それは、Endurance(不撓不屈の精神でどんなことも乗り越えていく)。M-V(イプシロンの一代前のロケット)終了のとき、私は誓った。どんなことがあっても絶対に腐るまい。どんなことがあってもこの困難を乗り切ってみせる。そんな私の決心をイプシロンという名前に込めたのである。」
「『森田君、Mを90度回転させるとイプシロンという文字になるよ』(的川泰宣氏)。Mロケットの精神(世界の先を行くようなチャレンジ精神)をしっかり受け継ぎながらも、これまでのMロケットのスケールをはるかに超える、そんな新しい固体燃料ロケットにふさわしい名前である。」
森田氏はイプシロンロケットプロジェクトに携わっており情報に信憑性はあるが、Endurance(不撓不屈の精神でどんなことも乗り越えていく)は著者の心情で、公表されたものではない。
- 事前調査事項
- NDC
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- 航空工学.宇宙工学 (538 10版)
- 参考資料
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- 世界にほこる日本の先端科学技術 4
- イプシロン、宇宙に飛びたつ
- キーワード
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- 宇宙ロケット
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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当データベースに同様の事例あり。
「2013年9月15日の新聞に載っているイプシロンロケットのイプシロンの語源は何か知りたい。」:埼玉県立久喜図書館
(https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000158525 ) 2023年3月31日確認
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000204018