田川は本県を流れる河川ですが、『栃木県大百科事典』(栃木県大百科事典刊行会/編、発行 1980)によれば、日光市七里が源流で、宇都宮市と河内郡南部を貫流して茨城県に入り、鬼怒川に合流しているとあります。
今回は地域のご指定がなかったため、広く県内の田川流域の氾濫として調査しましたが、残念ながら室町時代の記録が書かれた資料は確認できませんでした。
わずかですが、以下の資料に関連の記述を確認しましたので、参考までにお知らせします。
■近世の記述を確認できた資料
・『南河内町史 通史編 近世』(南河内町史編さん委員会/編 南河内町 1997)
p.154-157「第3章 村の成り立ちと地域景観 小字にみる田川の濫流」の項、
「田川流域の村々には濫流に関係する小字も多い(略)人々は田川の氾濫と闘い、濫流を制御しながら開発を前進させていった。」とあります。
p.243-247「吉田用水と絹板新田の形成」の項、本文中に「田川の氾濫は毎年のように年中行事化した。」とあります。
p.432「第6章 民衆のくらしと地域社会の形成」に「図2 近世中期の田川流路図」が掲載されており、田川の流れとともに堤防の位置等が記されています。
p.435-438「田川の氾濫とのたたかい」の項、
「町田村の本田は(略)田川の濫流にしばしば襲われる危険ととなりあわせの生活をしてきた。」、
「古代中世以来、開発→耕地化→洪水→荒地化、そして再開発の歴史が繰り返されてきた」とあります。
・『全国の伝承江戸時代人づくり風土記 聞き書きによる知恵シリーズ 9』(加藤秀俊〔ほか〕/編纂 農山漁村文化協会 1989)
p.29-31「田川の氾濫と四カ村の対策」の項、「田川は(略)数年に一度は襲う洪水から耕地や生活を守らなければならない河川」とあります。また、洪水の被害にあい、河原の名のつく小字となった地名についての記述や、明徳二年(1391)の、福田河原の地における、水害のため住居の集団的移転を余儀なくされた例などの記述があります。
■江戸~明治時代の記述を確認できた資料
・『栃木県史 史料編 近世1』(栃木県史編さん委員会/編 栃木県 1974)
p.843「三. 災異 15. 延宝八年七月 宇都宮田川洪水の事」(『宇都宮志料』巻之四 抜粋)が掲載されています。
・『宇都宮市史・宇都宮誌』(田代善吉/著 歴史図書社 1977)
p.132 延宝8(1680)年の田川の洪水について記述があります。
・『昔日の宇都宮 石井敏夫コレクションより』(塙静夫/解説,石川健/解説,随想舎/編 随想舎 1997)
p.44-45 「田川と宮の橋」の項があり、明治時代の氾濫について短い記述があります。
・『日本歴史地名大系 9』(平凡社 1988)
p.383「田川」の項があり、1766年の洪水について記述があります。
■昭和の記述を確認できた資料
・『洪水との闘い』(栃木県土木部河川課/編、発行 2004)
p.33-52「洪水の歴史」の項があり、1728年以降に起きた栃木県内の洪水の記録が掲載されています。昭和22年に田川の記載を確認しました。
・『宇都宮市 東地区の歴史と展望』(宇都宮市東地区まちづくり推進協議会/編、発行 2016)
p.159「田川の氾濫、大水の想い出」の項があります。
・『平ケ崎のあゆみ』(平ケ崎自治会/編、発行 2005)
p.186-187「第八章 平ヶ崎地区と災害 (1)田川の氾濫」の項があります。
・『角川日本地名大辞典 9』(角川書店 1984)
p.559「田川」の項があり、洪水についての短い記述があります。
・『栃木県政史 戦後篇 第1巻』(栃木県総務部/編 栃木県 1956)
p.287「第五節 災害発生状況と救助概況」の項があり、昭和12年の田川の洪水について記載があります。
・『うつのみやの歴史』(宇都宮市/編、発行 1984)
p.315「田川の氾濫」氾濫についての記述や氾濫時の写真が掲載されています。
以下の資料はお調べしましたが、関連の記述を確認できませんでした。
・『宇都宮市史 別巻 年表補遺』(宇都宮市史編さん委員会/編 宇都宮市 1981)
・『宇都宮市史 第6巻 近世通史編』(宇都宮市史編さん委員会/編 宇都宮市 1982)
・『宇都宮市案内』(荒川清次郎/編 国書刊行会 1982)
・『栃木県の気象 明治24年-昭和35年(1891-1960)』(宇都宮地方気象台/編 気象協会関東中部本部 1963)
・『栃木縣史 第1巻(地理編)』(田代善吉/著 臨川書店 1972)
・『栃木県史 通史編4』(栃木県史編さん委員会/編 栃木県 1981)
・『氏家町史 上』(氏家町史作成委員会/編 氏家町 1983)
・『小山市史 通史編2』(小山市史編さん委員会/編 小山市 1986)
・『上三川町史 通史編 上』(上三川町史編さん委員会/編 上三川町 1981)
・『上三川町史 史料編 近世』(上三川町史編さん委員会/編 上三川町 1979)
・『栃木風土記』(大島延次郎/著 大島延次郎 1960) ※「山脈」第11巻第11号より 自館複製
・『郷土風俗 栃木風土記』(古川清彦/著、発行 出版年不明)
・『下野国の古代文化』(塙静夫/著 第一法規出版 1981)
・『栃木県警察史 上巻』(栃木県警察史編さん委員会/編 栃木県警察本部 1977)
・『利根の変遷と江戸の歴史地理』(吉田東伍/著 崙書房 1974)
・『鬼怒川小貝川 自然文化歴史』(鬼怒川・小貝川読本編纂会議、編集委員会 鬼怒川・小貝川サミット会議 1993)
・『日本災害史事典』(日外アソシエーツ編集部/編 日外アソシエーツ 2010)
・『日本歴史災害事典』(北原糸子/編,松浦律子/編,木村玲欧/編 吉川弘文館 2012)
・『災害史に学ぶ 風水害・火災編』(中央防災会議「災害教訓の継承に関する専門調査会」/編 内閣府(防災担当)災害予防担当 2011)
・『理科年表 机上版』(国立天文台/編)
・『日本天災地変誌』(東京府学務部社会課/編 海路書院 2004)
・栃木県ホームページ「過去における主な災害一覧」
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http://www.pref.tochigi.lg.jp/c08/prevent/kakosaigai/jyouhou/kako.html>(2021年7月3日最終アクセス)