レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023/06/08
- 登録日時
- 2023/07/02 00:30
- 更新日時
- 2023/07/20 18:29
- 管理番号
- 14856928
- 質問
-
未解決
帝から「夜のお召し」等があり、殿舎から殿舎へ渡るときに顔をどのように隠して移動したのか知りたい。
- 回答
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以下のとおり調査いたしましたが、平安時代において、帝のお召し時などにどのように顔を隠して移動していたのかについて記載のある資料は見当たりませんでした。
【 】内は国立国会図書館請求記号です。書誌事項末尾に◎を付した資料は国立国会図書館デジタルコレクションの国立国会図書館内/図書館・個人送信対象開資料、☆を付した資料は同インターネット公開資料です。
以下を参考情報としてお知らせします。
資料1、4、5には、平安時代における女性の顔隠しの習慣についての言及があります。
資料2-3には、後宮・内裏内で女性が移動する様子が描かれた絵図の掲載があります。ただし、正確な時代・状況の詳細は不明であり、ご照会の状況に合致・類似したものかは不確実です。
資料1:大和勇三 著『顔 (市民文庫 ; 第112)』河出書房, 1952【141.6-Y459k-k】◎
* pp.38-45「第三章 古代の顏>第一節 神秘のヴェールをかぶる古代女性の顏」:「平安朝女性の顔かくし」という項に「室から別の室へ移るときにはあるときは几帳を從者にもたせそのかげに隱れて歩き、これを差几帳といつた。その上檜扇がいつも大切に面かくしのために用意された」(p.41)とあります。
資料2:角田文衛 著『日本の後宮 本編』学燈社, 1973【YP5-78】
* pp.87-145「第三章 平安の春」、pp.147-193「第四章 後宮の変貌」、pp.195-255「第五章 後宮の栄耀」、pp.257-333「第六章 後宮の残映」
* p.328図333「嫉視」:「荏柄天神縁起絵巻」より絵巻物の一部が引用されています。解説に「《荏柄(えがら)天神縁起絵巻》(尊経閣文庫所蔵)は、十四世紀の作で(略)そこには上御局に参り上る妃妾を、嫉妬と好奇心の眼ざしで眺めたり、隙見したりする光景が描かれている」とあります。図において、解説中に妃妾とされる女性は衣を頭にかぶっているように描かれています。
資料3:増田美子 編, 梅谷知世, 大久保尚子, 能澤慧子, 増田美子, 山岸裕美子 執筆『図説日本服飾史事典 = Illustrated Encyclopedia of History of Japanese Costume』東京堂出版, 2017.9【GD64-L49】
* pp.54-81「第4章 国風化の時代<平安時代中期~後期>」:p.72図4-2-22「汗衫姿(鎌倉時代)」として中宮たちに水を運ぶ童女の姿が描かれており、扇で顔を隠しています(出典は「枕草子絵巻」です)。
資料4:増田 美子「日本女性の顔隠しと被衣の意味--古代~中世を中心に」(『風俗史学』(38) 2009.1 pp.2-22【Z71-B350】)
* 平安時代の上流層の女性について、「顔を人前に見せるということは考えられないことであり、外に出る時や急な来訪者の時等は扇や袖で顔を隠すのを常としていた」(p.12)とあります。
資料5:谷川孝博「美意識の変遷と開発工学」(『開発工学』Vol.12 No.2 1993 pp.17-23【Z14-1711】)
* pp.17-18「1.平安時代の顔隠し三つの現象」
* J-STAGEにて閲覧可能:https://doi.org/10.11363/kaihatsukogaku1984.12.2_17
[そのほかの主な調査済み資料およびウェブサイト]
倉田 実「『うつほ物語』にみる差几帳」(『大妻女子大学紀要. 文系 = Otsuma Women's University annual report. Humanities and social sciences』(51):2019.3 pp.15-25【Z22-627】)
* pp.17-18「二 邸内での差几帳」
* 大妻女子大学学術情報リポジトリにて閲覧可能:http://id.nii.ac.jp/1114/00006711/
倉田 実「『源氏物語』の几帳」(『大妻女子大学紀要. 文系 = Otsuma Women's University annual report. Humanities and social sciences』(47):2015.3 pp.1-14【Z22-627】)
* 大妻女子大学学術情報リポジトリにて閲覧可能: http://id.nii.ac.jp/1114/00006011/
野村忠夫 著『後宮と女官 (教育社歴史新書. 日本史 ; 11)』教育社, 1978.7【GB161-144】◎
増田美子 編『花嫁はなぜ顔を隠すのか』悠書館, 2010.5【GD24-J34】
* pp.2-43「第一章 花嫁はなぜ角隠しをつけるのか」>「第一節 日本女性の顔隠しの始まりと被衣(増田美子)」
村澤 博人「正面顔文化と横顔文化」(『繊維製品消費科学』1989年 30巻6号 pp.241-246【Z17-199】)
* J-STAGEにて閲覧可能:https://doi.org/10.11419/senshoshi1960.30.241
大津透, 池田尚隆 編『藤原道長事典 : 御堂関白記からみる貴族社会』思文閣出版, 2017.9【GK2-L23】
* pp.362-390「衣食住」
あかね会 編『平安朝服飾百科辞典』講談社, 1975【GB8-44】◎
村沢博人, 津田紀代 編『化粧史文献資料年表 増補改訂 (化粧文化シリーズ)』ポーラ文化研究所, 2001.12【GD68-G40】
『日本史小百科 2』近藤出版社, 1977.11【GB71-88】◎
* 内容は「女性 赤木志津子 著」です。
『日本史小百科 17』近藤出版社, 1980.3【GB71-88】◎
* 内容は「家具 小泉和子 著」です。
* pp.28-29「帳」
小泉和子 編著.『図説日本インテリアの歴史 : 室内でみる日本住宅 古代から近代まで (ふくろうの本)』河出書房新社, 2015.5【KA175-L19】
平井聖 著『図説日本住宅の歴史 改訂版』学芸出版社, 2021.11【KA224-M23】
* pp.32-33「支配階層の住宅>寝殿造>寝殿の生活」
古代学協会・古代学研究所 編『平安時代史事典』角川書店, 1994.4【GB8-E91】
* 上pp.807-808「後宮」
* 資料・索引編
J-STAGE(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja)
ジャパンナレッジ Lib(当館契約データベース)
ウェブサイト最終アクセス:2023年6月7日
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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後宮に関する資料をあたってみたが、どのように顔を隠して移動したのかわかる資料はなかった。
ただ『ざ・ちぇんじ』2巻(氷室冴子原作/山内直美画)には渡殿に几帳のようなものを置きながら移動している絵があった。
その他、CiNiiで「渡殿」「渡廊」で検索をかけて出てきた論文をほとんど読んだが、見つからなかった。
【その他、調査に使用した資料】(タイトル 著者名 出版社 出版年)
日本建築を作った職人たち 浜島一成/著 吉川弘文館 2022.5
紫式部すまいを語る 西和夫/著 TOTO出版 1989.11
王朝文学入門 川村裕子/著 角川学芸出版 2011.5
王朝びとの生活誌 川嶋菜温子/編 森話社 2013.3
王朝の雅源氏物語の世界 鈴木日出男/監修・執筆 平凡社 2006.4
平安時代大全 山中裕/著 ロングセラーズ 2016.11
源氏物語の平安京 加納重文/著 青簡舎 2011.9
源氏物語事典 林田孝和/編集 大和書房 2002.5
源氏物語六条院の生活 風俗博物館/編集 宗教文化研究所風俗博物館 1998.1
源氏物語入門 『源氏物語大辞典』編集委員会/編 角川学芸出版 2008.7
源氏物語の世界 日向一雅/著 岩波書店 2004.3
京都千二百年 上 西川幸治/著 草思社 2014.8
源氏物語解剖図鑑 佐藤晃子/文 エクスナレッジ 2021.12
寝殿造の研究 太田静六/著 吉川弘文館 1987.2
平安貴族の住まい 藤田勝也/著 吉川弘文館 2021.4
図説日本建築の歴史 玉井哲雄/著 河出書房新社 2020.1
伝達と変容の日本建築史 野村俊一/編 勉誠出版(発売) 2022.7
ビジュアル日本の住まいの歴史 小泉和子/監修 ゆまに書房 2020.3
平安時代の儀礼と歳事 山中裕/編集 至文堂 1994.2
平安時代後宮及び女司の研究 須田春子/著 千代田書房 1982.5
平安貴族の生活 有精堂編集部/編 有精堂 1985.11
豪華<源氏絵>の世界源氏物語 学研 1997.4
源氏物語と平安京 日向一雅/編 青簡社 2008.7
王朝人と婚姻と信仰 倉田実/編 森話社 2010.5
「垣間見」る源氏物語 吉海直人/編 笠間書院 2008.7
王朝物語を学ぶ人のために 片桐洋一/編 世界思想社 1992.11
王朝生活の基礎知識 川村裕子/著 角川書店 2005.3
平安貴族 嫉妬と寵愛の作法 繁田信一/監修 株式会社G・B 2020.6
六条院へ出かけよう 五島邦治/監修 宗教文化研究所 2005.1
絵巻物の建築を読む 小泉和子/【ほか】編 東京大学出版会 1996.11
平安時代史事典 本篇 下 角田文衛/監修 角川書店 1994.4
平安大事典 倉田実/編 朝日新聞出版 2015.4
- NDC
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- 社会.家庭生活の習俗 (384)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 人文(レファレンス)
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000335225