①『和の文化を発見する水とくらす日本のわざ 3』には、「天然氷とは、付近の良質な湧き水(地中から湧きでてくる水)や沢の水を、冷凍庫などを使わずに自然の温度だけでこおらせた氷のことです。日本では、およそ1300年前の奈良時代から、冬にできた氷を、「氷室」とよばれる場所に保存して、夏などに使っていました。」と記載されている。また、「天然氷ができるまで」として、「天然氷は、きれいにした氷池(氷をつくる池)に、水を流しこみ、自然の寒さを利用してつくります。氷池をきれいに掃除し、水をろ過して流しこみ、こおらせていきます。
1 日の当たらない氷池で氷が少しずつ厚くなっていく。朝から夜にかけての温度はマイナス5度くらいが理想的。
2 約2週間で14~15センチメートルまで厚くなった氷の表面に、切りだす目印の線をひく。
3 専用の電動カッターで氷を切りだす。
4 切りだした氷を、専用の道具で池からひきあげ、氷室(天然の氷を夏まで保存しておくところ)へ運ぶ。
5 氷室の中に氷をつみあげ、ヒノキのおがくずをまぶして春まで保存する。」
と記載されており、写真も掲載されている。
また、奈良県天理市福住町の氷室神社の近くにある、資料をもとに復元された氷室の写真や、復元氷室の中に氷を保存する「福住氷まつり」の写真も掲載されている。
②『日本のくらしの知恵事典』には、氷室について「天然の氷や雪を夏までたくわえておくための小屋です。温度が上がるのをふせぐため、昼間でも日の当たらない谷間や山かげなどの寒い場所を選んで穴をほり、かやなどで屋根をかけておおいました。」「気温が高くなってくると、氷室の中の氷や雪も少しずつとけていきます。そこで天然氷をオガクズに包み、とけ出した水をオガクズに吸わせる知恵が生まれました。こうすることで夏まで半分以上がとけずに残ります。湿ったオガクズから水分がゆっくりと蒸発し、気化熱をうばうので、氷がとける速度をおさえることができるのです。」と記載されており、氷室と、氷の切り出しを行っている写真も掲載されている。
また、「氷や雪のたくわえ方」として、
「[洞くつから採集] いちばん古い方法です。夏でも氷が残っている洞くつ(氷穴)を利用して、洞くつ内の氷を切り出して積み重ねておき、運び出してつかっていました。
[雪を固めて保存] 氷室の中に、きれいな雪を集めてかたく踏みしめて積み上げておき、夏に取り出してつかいました。北陸地方を中心に日本海側の地域で多くみられました。
[池の氷を切り出して保存] きれいな水が流れるせせらぎから人工の池に水を導き、氷が15~25cmぐらいの厚さになるまで数カ月かけてゆっくりと凍らせます。寒さの厳しい1月の終わりごろから2月にかけて切り出し、夏まで氷室に入れて保管しました。」と記載されており、イラストも掲載されている。
③『氷の世界』には、「氷と人びとのくらし」として、「むかしの人びとは、氷を保存するために、氷室というものをつくりました。土をほり、ススキやカヤをしいたあな倉に、草ぶきの屋根をかけ、この中に、冬の間池や湖にできた氷を切りだしてたくわえ、暑い夏になると、とりだして用いたのです。このような方法は、日本だけでなく海外でも知られています。日本で、最初に天然氷が商品として販売されたのは、一八七〇(明治三)年です。中川嘉兵衛という人が、函館の五稜廓の池の天然氷を切りだして、船で東京などに運んで販売しました。その後、全国的に池や湖の天然氷を切りだして、馬そりや船で運び、氷室に貯蔵して販売する事業が栄えました。しかし、冷凍機や電気冷蔵庫が発達した今日では、天然氷はほとんどつかわれていません。」と記載されている。また、「氷室の歴史」として、「日本では、今から1600年前の仁徳天皇の時代に、氷室が使われていたという記録が日本書紀にでています。外国では、紀元前4世紀にアレクサンドロス大王が、パレスチナのペトラというところに30のあなをほって、その中に雪を入れて保存したという記録が残っています。」と記載されている。
④『かき氷』では、埼玉県の阿左美冷蔵での天然氷づくりの様子が、手順を追ってカラー写真と文章で掲載されている。