レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年06月20日
- 登録日時
- 2023/12/28 16:18
- 更新日時
- 2023/12/28 16:19
- 管理番号
- 千県西-2023-0004
- 質問
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未解決
満鉄刀などの「製作工程が日本刀としての工程を経ていないもの」は美術刀剣類として登録ができないとする見解の初出が知りたい。法令に記載されているのか、あるいは有識者の一解釈なのか。『銃砲刀剣類等所持取締法の解説』(西川清次、加山文男 警察図書出版 1958)の135ページ目「(二)登録の対象とならない刀剣類」が探した範囲では最古だった。
- 回答
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「日本刀としての工程を経ていない」刀剣が登録できないという見解の初出について、利用者典拠の資料より古い資料は見つかった(回答プロセス3,4参照)。ただし、初出ということを裏付ける記述が見つからなかったため、参考資料として以下の資料を紹介した。
銃砲刀剣類登録規則(銃砲刀剣類等所持取締法によって規定)1958年3月10日公布
銃砲刀剣類等所持取締令(廃止法令) 1950年11月15日公布
銃砲等所持禁止令(廃止法令) 1946年6月3日公布
『銃砲刀剣類等所持取締令の解説』(小暮豊作著 港出版合作社 1951)
『警察教養』第1輯 (論説篇・法令解説篇・時報)(植松正著 協和図書出版 1948)
『日本刀鑑定必携』(福永酔剣著 雄山閣 1985)
『日本刀・刀装事典』(杉浦良幸著 里文出版 2011)
『日本刀辞典』(得能一男著 光芸出版 1973)
『日本刀ファイル』(得能一男編著 光芸出版 2015)
- 回答プロセス
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1 e-Govの法令検索(https://elaws.e-gov.go.jp/)で現行法令の銃砲刀剣類登録規則を確認。(1958年施行)刀剣類の鑑定は日本刀が対象とされているが、満鉄刀等が除外される記載はなかった。
2 日本法令索引(https://hourei.ndl.go.jp/#/)で「銃砲刀剣類等所持取締法」を検索し、前身が銃砲刀剣類取締令、そのさらに前身が銃砲刀所持禁止令であることを確認。それぞれの法について国立国会図書館デジタルコレクション『官報』のリンクをたどる。なお、各法令の審議経過が記載されていないため、法整備に至るまでの経緯は確認できなかった。
前身:銃砲刀剣類等所持取締令(廃止法令) 1950年11月15日公布
「火なわ銃式火器及び刀剣類の登録に関する規則」に、刀剣の登録基準について記載あり。年代や外装について記載されていたが、「日本刀」や「満鉄刀」という言葉は出てこなかった。
前々身:銃砲等所持禁止令(廃止法令) 1946年6月3日公布
登録の基準について記載はなかった。
3 前身の「銃砲刀剣類等所持取締令」を国立国会図書館デジタルコレクションで検索し、『銃砲刀剣類等所持取締令の解説』(小暮豊作著 港出版合作社 1951)がヒットした。85コマ「火なわ銃式火器及び刀剣類の登録に関する規則」より、
「第七條 鑑定は刀劍類が左の各号の一に該当するものであるか否かについて、行うものとする。
一 奈良、平安、鎌倉および吉野時代に製作されたもの(中略)
二 室町時代以後に有名な刀工により製作されたもの(中略)
三 室町時代以後に製作されたもので、作者が有名でなく、叉は明らかでないが、優れているもの(中略)
四 名文が貴重な研究資料であるもの
(中略)
六 前各号に掲げるものに準ずる刀劍類であつて、その外装が工芸品として高い価値を有するもの」という記述を確認。
4 「銃砲等所持禁止令」を国立国会図書館デジタルコレクションで検索し、『警察教養』第1輯 (論説篇・法令解説篇・時報)(植松正著 協和図書出版 1948)がヒット。
39コマ「(Ⅲ)刀剣類で美術品として価値のあるもの」で
「①國寶、重要美術品に既に指定されたもの竝にこれと同等の美術的及歴史的價値の認められる刀劍
②明治時代以前(明治を含まない)の各時代に於て後世迄名前の聞えた刀工の作、及び時代の如何を問わずそれほど名前の聞えていない刀工の作であつても、その製作が優れていて美術的價値を有していると認められる刀劍(後略)」という記述を確認。
5 千葉県立図書館の図書・雑誌・視聴覚資料検索で「日本刀」をキーワードに書名検索。以下の資料がヒットした。
『日本刀鑑定必携』(福永酔剣著 雄山閣 1985)
p.23「昭和十六年、大東亜戦争勃発後はおびただしい数の軍刀を必要としたので、量産時代に入った。(中略)玉鋼の不足から洋鉄を使った満鉄刀・新日本刀・野戦刀・興亜一心刀・郡水刀、果ては自動車のスプリングで作ったスプリング刀まで出現した。これらは古来の日本刀鍛法によらないものだから、日本刀とはいえない。」
『日本刀・刀装事典』(杉浦良幸著 里文出版 2011)
p.35「昭和軍国主義が台頭すると、(中略)「満鉄刀」「不錆刀」など従来の日本刀とは全く別の刀を武器として製造するようになった。」
『日本刀辞典』(得能一男著 光芸出版 1973)
p.31「~太平洋戦争へと進展し、軍刀の需要が増大したため、限られた刀匠ではこの需要に応ずることができず、末期には「昭和刀」と称する鍛錬しない軍刀が造られるようになった。」
『日本刀ファイル』(得能一男編著 光芸出版 2015)
p.35近現代 より
「~軍刀の需要が激増、限られた刀工による従来の鍛刀法では供給が間に合わないため、鍛錬を省略した刀を生産するようになった。後にこれを蔑称して「昭和刀」という。」
6 利用者への回答後に再調査。Googleで「日本刀」「登録」と検索し、以下のサイトがヒット。しかし、出典の明記がされていないため、年代の確認はできなかった。
公益財団法人 日本刀文化振興協会「日本刀発見手続き」(https://nbsk-jp.org/hakken/)
「この登録制度は戦後、戦時中に作られた無鍛錬の刀〈昭和刀・軍刀〉と歴史的価値のある美術刀剣とを区別し、戦後進駐軍による刀剣の没収から、美術品としての刀剣を守り、合法的に所持できるように出来た法律です。」
(インターネット最終アクセス:2023年12月10日)
- 事前調査事項
- NDC
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- 金工芸 (756 9版)
- 行政 (317 9版)
- 参考資料
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- 『日本刀鑑定必携』(福永酔剣著 雄山閣 1985)(9102946286)
- 『日本刀・刀装事典』(杉浦良幸著 里文出版 2011)(2102458044)
- 『日本刀辞典』(得能一男著 光芸出版 1973)(1100010520)
- 『日本刀ファイル』(得能一男編著 光芸出版 2015)(0106516151)
- 『銃砲刀剣類等所持取締法の解説』(西川清次 加山文男共著 警察図書出版 1958)国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/3001045 (参照 2023-06-07)
- 『銃砲刀剣類等所持取締令の解説』(小暮豊作著 港出版合作社 1951)国立国会図書館デジタルコレクションhttps://dl.ndl.go.jp/pid/3007399 (参照 2023-06-07)
- 『警察教養』第1輯 (論説篇・法令解説篇・時報)(植松正著 協和図書出版 1948) 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2991558 (参照 2023-06-16)
- キーワード
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- 日本刀
- 銃刀法
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000344162