レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年01月24日
- 登録日時
- 2023/06/15 13:06
- 更新日時
- 2024/03/20 13:45
- 管理番号
- 2022-0128
- 質問
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解決
戦時中に使用されていた以下の物について、どういうものなのか知りたい。
①ハンディタイプのサイレン
空襲警報や火事などで使用したものと思うが、なぜハンディなのか。即時性重視で、手元へ置けるようにということか。
握る部分が左右に広がるようになっていて、固定できそう。名称も「サイレン」という英語で当時も読んでいたのか。
②盃
「野戦砲兵」と盃の中に記載されており、中央には星マークがある。
これは出征時に祝いのために作ったもので、祝宴に出た人々が持ち帰った?
③防毒マスク
軍事用だけでなく民間用も配布されていたようだが、配布された地域や人々は特定の方々ではないかと思う。
写真の物は将校の家族親戚用で一般民衆は配布されなかったのか。
④時計
円形、厚さ5cm、皮バンドで吊るせるようになっていて文字盤は直径4cmくらい。重さが1kgほど。
なぜこのように重い時計を作ったのか。それとも、時計以外の用途があったのか。
- 回答
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①ハンディタイプのサイレン
【ハンディな理由・設置方法】
『防空 第5巻第10号(昭和18年10月)』矢萩製作所が発売している「特許矢萩式サイレン 警防團用最新式レビードサイレン」の広告あり。特長として「操作軽快・板付簡易」と記されている。サイレンを手に持つ写真あり。
『防空 第6巻第4号(昭和19年5月)』p12「サイレンの活用に就て」で「送信不能に陥った場合の警報装置」の項で「小型の手動サイレンを自転車に多数裝置し・・・」と提案している。
『ポピュラーサイエンスの時代』p204 アメリカの例になるが、板に打ち付けられた手回しサイレンの写真あり。
『消防博物館 収蔵品図録』p32~「消防自動車の変遷」運転席前にサイレンが設置されているが、形が異なる。
『東京の消防百年の歩み』口絵「ポンプ車の変遷」運転席前にサイレンが設置されているが、形が異なる。
『昭和館 常設展示ガイドブック』p39 2種類のサイレン(据置型)の写真がある。
【サイレンの名称】
『防空 第5巻第4号(昭和18年4月)』隅田手動サイレン工業組合共販所が発売している「規格手動サイレン」の広告あり。サイレンの詳細なイラストあり。
『防空 第5巻第10号(昭和18年10月)』矢萩製作所が発売している「特許矢萩式サイレン 警防團用最新式レビードサイレン」の広告あり。サイレンを手に持つ写真あり。
『大日本帝国陸海軍 2』p286「286-5 携帯用警報機サイレン」写真あり
②盃
『「戦争の民俗展」図録』p6「除隊記念杯」写真あり。星マークのものはなし。
『戦争と庶民のくらし 3』p79 「292 「歩兵第4連隊紀念盃(木製)1組」」の写真あり。星マークあり。
『東村山地域をめぐる銃後と前線』p9 「資料紹介 出征・除隊の記念杯」にて、出征壮行会や祝賀会では「出征兵士へ餞別の贈られることが通例だったため、帰還した際にはその返礼として杯などが配られた。」と書かれている。
『食の民具たち』P70,71「除隊記念の盃」写真とともに詳細リストあり。
③防毒マスク
配布、購入、手作りが混在していた模様。地域、階級などの条件は見つけられず。
【所持を推奨されていたとする資料】
『日本軍の毒ガス兵器』p118「市民用ガスマスクの生産」
『東京大空襲・戦災誌 第3巻』p579「中央防空計画」のうち、p587「第十二章 防毒」「第百三条 防空重要都市に於ける満三歳以上の市民に対し防空用防毒面甲型を整備すること…」
『国民防空読本』p127「防毒面は出來得るだけ多く普及することが望ましい。」p134防毒マスクについての詳細。
【配布】
『今こそ伝えたい子どもたちの戦中・戦後』p89「私たちは神妙な顔をして、大人から鉄兜と防毒面を一個ずつもらった。」
『十六年式防空用防毒面(甲型)ノ取扱ニ就テ』「この防毒面ノ配給ヲ受ケタ方ハ、…」
『民防空政策における国民保護』p257「(イ)防毒マスク」「個人防護である防毒マスクは、防空法の下に配布された。」等。
『銃後の記憶』p64「防毒マスク」「どこの家にも、戦時の非常事態に備えて一つずつ配給があり、保管されていた。」
【購入】
『懐かし新聞広告批評』p48 昭和13年の新聞広告。一般販売していたもよう。
『平和を考える戦争遺物 3』p38「日本本土への空襲が始まると、大都市では各家庭に鉄かぶとと防毒マスクが有料で配られました。」
『写真でみる 太平洋戦争とくらし・道具事典』p54「各家庭に常備することが推奨されましたが、高価だったこともあり、購入できない家庭も多かったようです。」
『防空の知識と救護』p86「近く代用品の簡易「マスク」が市場に出ると聞いて居る。」
『市民防毒面取扱並に保存法』市民防毒面団体用・家庭用などの価格表あり。メーカーの取説のもよう。
『生い立ちの記』p99「近所の各戸に配られたという話を聞いたこともなかったので、父が、勤め先で独自に入手したものらしい。」
『マスク屋60年』p54「一九三五(昭和十二)年頃は、空襲時の毒ガス攻撃に備えるため、非戦闘員用のマスクを購入する人が少なくありませんでした。父は、国民マスクと銘打った新製品を、一個五円で発売しました。」
【手作り】
『小学生新聞に見る戦時下の子供たち 第1巻』p160「防毒マスクは戦争ごっこの小道具か」昭和12年10月の新聞記事。簡易防毒マスクについて。
『戦時下写真ニュース 第2巻』p437「お手製の防毒面をつけ銃後女学生たちの防空演習」
『小学校に於ける廃材利用の手工』p284 防毒マスクの作り方。
④時計
参考に頂いた写真データがあったので国会図書館の次世代デジタルライブラリーで画像検索すると『日本紳士録 34版』内の「番人監督時計」という名称で似た時計あり。
日本紳士録 - 次世代デジタルライブラリー (ndl.go.jp)
https://lab.ndl.go.jp/dl/book/2127189?page=42
国税庁公式サイトで解説あり。
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/sozei/network/150.htm
『玉屋型録』p391 番人監督時計の図、説明あり。時計の裏面には「時刻紙」というものが入っている。時計は巡回の時に携帯し、印字鍵は巡回重要箇所に取り付けて置き、用紙は監督者が毎日取りかえる。
『大日本帝国陸海軍』p203 実物写真。革バンドはないが、時計の盤面が小さいのに対し本体が大きく、お問い合わせのものに似ていると思われるが説明文なし。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 衣食住の習俗 (383 8版)
- 日本史 (210 8版)
- 国防.軍事 (390 8版)
- 参考資料
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- 『防空 第5巻第10号(昭和18年10月)』大日本防空協会 1943.10 (393.6/B63/5-10 閉架雑誌 100029139)
- 『防空 第6巻第4号(昭和19年5月)』大日本防空協会 1944.05 (393.6/B63/6-4 閉架雑誌 100028743)
- 『ポピュラーサイエンスの時代』原克著 柏書房 2006.03 (502/H31 閉架一般 000048592)
- 『消防博物館 収蔵品図録』[消防博物館] [編集] 1995.04 (317/Sh95 閉架一般 060003705)
- 『東京の消防百年の歩み』東京の消防百年記念行事推進委員会 編集 東京消防庁 1980.06 (317/To46 閉架一般 000035706)
- 『昭和館 常設展示ガイドブック』昭和館学芸部 編集・執筆 昭和館 2019.10 (069/Sh97 開架昭和館刊行物 060007837)
- 『防空 第5巻第4号(昭和18年4月)』大日本防空協会 1943.04 (393.6/B63/5-4 閉架雑誌 100029135)
- 『防空 第5巻第10号(昭和18年10月)』大日本防空協会 1943.10 (393.6/B63/5-10 閉架雑誌 100029139)
- 『大日本帝国陸海軍 2』中田忠夫 著 池宮商会 2010.09 , ISBN 9784871800211 (395/N43/2 閉架一般 000063558)
- 『学生の科学 第26巻第10号(昭和15年10月)』誠文堂新光社 1940.10 (405/G16/26-10 閉架雑誌 100017780)
- 『「戦争の民俗展」図録』中村光夫著 中村教材資料文庫 2015.09 (210.75/N37 閉架一般 060005709)
- 『戦争と庶民のくらし 3』仙台市歴史民俗資料館編 仙台市教育委員会 2008.06 (210.7/Se59/3 閉架一般 000050868)
- 『東村山地域をめぐる銃後と前線』東村山ふるさと歴史館 編集・発行 東村山ふるさと歴史館 2015.07 (213.6/H55 閉架一般 060005624)
- 『食の民具たち』平塚市博物館 [編] 平塚市博物館 2004.01 (383.9/H68 閉架一般 000043937)
- 『日本軍の毒ガス兵器』松野誠也 著者 凱風社 2005.02 , ISBN 4773629037 (559/Ma84 閉架一般 000046917)
- 『東京大空襲・戦災誌 第3巻』東京空襲を記録する会 編者 東京空襲を記録する会 1975.03 (210.75/To46/3 開架一般 000018867)
- 『国民防空読本』内務省計畫局 編者 大日本防空協會 1939.03 (391.38/N28 閉架一般 000042364)
- 『今こそ伝えたい子どもたちの戦中・戦後』野崎耕二 絵と文 日貿出版社 2015.08 , ISBN 9784817082121 (382/N98 開架一般 000059794)
- 『十六年式防空用防毒面(甲型)ノ取扱ニ就テ』内務省防空局 [著] 大日本防空協会 (391.38/N28 閉架一般 060003114)
- 『民防空政策における国民保護』大井昌靖 著 錦正社 2016.10 , ISBN 9784764603455 (391.38/O31 閉架一般 000061698)
- 『銃後の記憶』靍毅 著者 元就出版社 2016.12 , ISBN 4861060494 (916/Ts84 閉架一般 000049486)
- 『懐かし新聞広告批評』町田忍 著者 扶桑社 2004.03 , ISBN 4594045448 (674/Ma16 開架一般 000045829)
- 『平和を考える戦争遺物 3』本庄豊 執筆・編集 汐文社 2013.12 , ISBN 9784811389899 (210.7/H51/3 開架児童書 060004954)
- 『写真でみる 太平洋戦争とくらし・道具事典』ワンステップ 編集 金の星社 2016.03 (210.75/W37/1 開架児童書 060005807)
- 『防空の知識と救護』田林綱太 著者 博文館 1942.11 (391.38/Ta11 閉架一般 060007095)
- 『市民防毒面取扱並に保存法』昭和化工編 昭和化工 出版年月不明 (559/Sh97 閉架一般 000052510)
- 『生い立ちの記』松崎公男 筆者 2002.10 (916/Ma92 閉架一般 000064055)
- 『マスク屋60年』重松開三郎 著 産業能率大学出版部 2012.05 , ISBN 9784382056664 (289/Sh28 閉架一般 000057969)
- 『小学生新聞に見る戦時下の子供たち 第1巻』秋山正美 編著 日本図書センター 1991.03 , ISBN 4820540203 (916/A38/1 開架大型 000017580)
- 『戦時下写真ニュース 第2巻』福島鋳郎 著者 大空社 1995.09 , ISBN 4756800866 (210.7/Se66/2 閉架一般 000040523)
- 『小学校に於ける廃材利用の手工』山下俊三著 明治図書 1939.02 (375.7/Y44 閉架一般 000061073)
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『日本紳士録』 - 次世代デジタルライブラリー
https://lab.ndl.go.jp/dl/book/2127189?page=42 (2023/6/15確認) -
国税庁>国税庁等について>組織(国税局・税務署等)>税務大学校>租税史料>NETWORK租税史料>税務署>税務署の巡回時計
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/sozei/network/150.htm (2023/6/15確認) - 『玉屋型録』玉屋商店 1937.01 (535/Ta79 閉架一般 000055044)
- 中田忠夫編『大日本帝国陸海軍』中田 忠夫 製作 サンケイ新聞社出版局 1973.09 (395/N31 閉架一般 000004315)
- キーワード
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- サイレン
- 盃
- 防毒マスク
- 時計
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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『学生の科学 第26巻第10号(昭和15年10月)』誠文堂新光社 1940.10(100017780)携帯用サイレン設計図青写真は製作するための少年技師設計圖。形がちがう。
『精工舎史話』平野光雄 著者 精工舎 1968.10(000011322)精工舎では昭和14年度から陸海軍将校用高級腕時計を生産していたが、直接軍本部に納品されていた。(p289)しかし軍人にかぎり偕行社(陸軍)、水交社(海軍)などで求めることができた旨記述あり。(p.303.304)。
『昭和産業史 第1巻』東洋経済新報社 1950.10(000024592)p441~時計産業について。戦時下の時計の生産実績、輸出入推移等。
『軍装品でたどる太平洋戦争』オフィス五稜郭 編 宝島社 2014.09(000058510)p66.67腕時計や懐中時計の写真が複数掲載されているが、似たものはなし。
『帝国陸軍戦場の衣食住』学習研究社 2002.11(060002018)p40 時計は将校、下士官兵ともに市販品を自弁調達したとの記述あり。腕時計の時計本体が開き式で、底部に何か入れることができた製品の写真あり。
『日本海軍航空隊軍装と装備』佐藤繁雄 著者 モデルアート社 2004.04(060002234)p74.75 航空時計(図)の掲載あり。
『軍装品でたどる太平洋戦争』オフィス五稜郭 宝島社 2014.09(000058510)p66.67 懐中時計、防塵型腕時計の写真あり。
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 団体
- 登録番号
- 1000334528