レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2023/10/07 15:59
- 更新日時
- 2023/10/10 15:15
- 管理番号
- 千-2023-001
- 質問
-
解決
関東大震災の際、現在の千代田区神田佐久間町、和泉町周辺の一角は延焼を免れたと聞いたが詳細を知りたい。
- 回答
-
1923年(大正12年)9月1日に発生した関東大震災は地震と火災により、
東京・神奈川・千葉・埼玉・静岡・山梨・茨城の一府六県に甚大な被害をもたらした。
千代田区の地域も大半が被災し、とくに旧神田区は94%が焼失している。
一方で、神田佐久間町、和泉町の一角については
燃えやすい看板の撤去、住民によるバケツリレーやガソリンポンプを用いた消火活動などにより、
延焼を防いだとされ、その行動を讃えた石碑が設置されている。
【典拠資料】
今回の件について書かれた資料は数多くあるが、
千代田図書館で利用できる主要な資料として以下が挙げられる。
□一般書
・『関東大震災』(鈴木 淳/[著]、講談社、2016年)
P.78-98「3 地域の自衛はいかにして可能になったか」
後述の『東京震災録』を主な資料として、
「神田和泉町の奇跡」など延焼を防ぐことができた経緯や要因が書かれている。
・『図説関東大震災 ふくろうの本』(太平洋戦争研究会/編、河出書房新社、2003年)
以下で、佐久間町、和泉町一角の様子が確認できた。
P.31-36「浅草区」
P.54-57「本郷区・神田区」
・『資料にみる「関東大震災から国民防空への展開」』(吉川 仁/著、三省堂書店、2023年)
P.229「神田和泉町・佐久間町の事績」の防空活用
関東大震災における和泉町・佐久間町の住民による消火活動は、
美談として語り継がれ、戦時下の防空対策の模範とされたことについて解説している。
・『写真集 関東大震災』(北原 糸子/編、吉川弘文館、2010年)
P.31「佐久間町二丁目附近」
陸軍航空学校により震災の数日後に撮影された航空写真が掲載されている。
・『東京都における関東大震災の慰霊碑・記念碑・遺構 その2』
(武村 雅之/著、東海国立大学機構名古屋大学減災連携研究センター、2020年)
P.159-160「防火守護之地」の碑の写真と碑文の掲載あり。
□地域資料
・『新編千代田区史 通史編』(東京都千代田区(総務部総務課)、1998年)
P.915「佐久間町の奇跡」
千代田区神田佐久間町二~四丁目、和泉町、平河町全体、松永町、
下谷区御徒町一丁目の一部の約1600戸などについては
住民によるバケツリレーなどの消火活動で延焼を食い止めたことが書かれている。
・『千代田区史 中』(千代田区役所/編纂、千代田区役所、1960年)
※国立国会図書館デジタルコレクションの送信サービスで利用可能
https://dl.ndl.go.jp/pid/3010324
P.617「神田区の火災」 337コマ
区内の大半を焼き尽くしたものの、佐久間町の一角が焼け残ったことが書かれている。
P.626「区民の活動」 342コマ
千代田区神田佐久間町二~四丁目、和泉町、平河町全体、松永町、
下谷区御徒町一丁目の一部の約1600戸については
住民によるバケツリレーなどの消火活動で延焼を食い止めたことが書かれている。
・『千代田まち事典』(千代田区区民生活部、2005年)
P.152「材木の流通でにぎわった佐久間町」
「関東大震災協力防火の地」に指定されたことが書かれている。
P.157「医療とのかかわり深い神田和泉町」
「防火守護地」の石碑やその経緯ついて書かれている。
・『千代田史話』(小丸 俊雄/著、ぎょうせい(印刷)、1985年)
P.377-388「奇蹟の神田佐久間町と和泉町」
佐久間町と和泉町の人々による当時の消火活動の様子が書かれている。
・『佐久間小学校 創立70周年記念誌』
(東京都千代田区立佐久間小学校創立七十周年記念出版委員会、
東京都千代田区立佐久間小学校創立七十周年記念会、1973年)
P.31-32
佐久間町・和泉町周辺が延焼を免れたことについて、
国定教科書に掲載されたことが書かれており、
後述の『大正震災美績』が教科書の素材であるとされている。
・『東方見聞録』
(千代田区和泉橋地区町会連合協議会編集委員/作成、
千代田区和泉橋地区町会連合協議会、2008年)
P.63「史跡「防火守護地」」
史跡として認定された記述あり。
P.71「神田佐久間町三丁目町会」
P.73「神田佐久間町四丁目町会」
バケツリレーを行い、延焼を免れた記述あり。
□一次資料
・『東京震災録 中輯』(東京市/編纂、東京市役所、1926年)
※国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開
https://dl.ndl.go.jp/pid/1448401/1/132
P.250-252「外神田警察署」 132コマ
佐久間町青年団在郷軍人団と附近の民衆により、
防火活動に当たったことが書かれている。
・『東京震災録 別輯』(東京市/編纂、東京市役所、1927年)
※国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開
https://dl.ndl.go.jp/pid/1448465
以下、複数個所で和泉町、佐久間町の消火活動に関する記述が確認できた。
「第三章 東京市民の活動 第一節 総動員 第二節 団体の活動」
P.167-170「第一款 町会 (二)神田区」 97コマ
P.237-239「第二款 青年団 (二)神田区青年団」 132コマ
P.318-319「第三款 帝国在郷軍人会 其二 支部の活動 神田区分会第十六班」 173コマ
P.905「第五章 対震美談」 466コマ
・『東京震災録 地図及写真帖』(東京市/編纂、東京市役所、1926年)
※国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開(白黒)
https://dl.ndl.go.jp/pid/1448473/1/106
「震火災火流圖」 106コマ
焼失した区域が赤く塗られているのに対し、
和泉町、佐久間町、平河町と書かれた一角は白いままで、焼け残ったことがわかる。
・『神田復興史並焼残記』(山角 徳太郎/編、山角徳太郎、1925年)
※国立国会図書館デジタルコレクションの送信サービスで利用可能
https://dl.ndl.go.jp/pid/981905
神田区における被害状況や復興に関する記録が書かれている。
ページ付けが各項目ごととなっている。
「神田復興史」 20コマ
P.31「外神田警察署の活動」 35コマ
「佐久間町和泉町の一角千六百三十戸に對する防火成功」の記事あり。
P.52「帝國在鄕軍人會神田區分會各班活動」 46コマ
「第十五班」に防火活動の記述あり。
「燒殘記」 53コマ
佐久間町・和泉町が焼け残った経緯が書かれている。
「神田復興史並燒殘記賛成者略傳」 81コマ
個人の体験記が書かれている。
・『大正震災美績』(東京府/編、東京府、1924年)
※国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開
https://dl.ndl.go.jp/pid/981883/1/123
P.214「和泉町・佐久間町等の防火と其の成功」 123コマ
身を挺した救助活動や防火活動などがまとめられ。
和泉町・佐久間町の事例についても書かれている。
・『東京市公報 昭和14年1月至6月』(東京市、1939年)
P.43 昭和14年1月14日「神田區佐久間町一帯を史蹟に指定」の記事あり。
- 回答プロセス
-
【関東大震災】
まず、関東大震災の概要について書かれた資料を確認した。
国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧可能かも合わせて確認した。
・『関東大震災』(鈴木 淳/[著]、講談社、2016年)
和泉町についての記述で『東京震災録』の引用あり。
『東京震災録』全4巻を確認した。
・『東京震災録 中輯』(東京市/編纂、東京市役所、1926年)
・『東京震災録 別輯』(東京市/編纂、東京市役所、1927年)
佐久間町、和泉町の消火活動に関する記述を確認。
・『東京震災録 地図及写真帖』(東京市/編纂、東京市役所、1926年)
佐久間町、和泉町が焼け残ったことを地図で確認。
また、以下の資料で住民の消火活動を讃えた石碑があることが確認できた。
・『東京都における関東大震災の慰霊碑・記念碑・遺構 その2』
(武村 雅之/著、東海国立大学機構名古屋大学減災連携研究センター、2020年)
昭和14年1月14日に東京府の史蹟に指定されたことが書かれていたため、
当時の公報を確認した。
・『東京市公報 昭和14年1月至6月』(東京市、1939年)
史蹟に関する記事が確認できた。
さらに、以下の資料についても、佐久間町、和泉町に関する情報を得ることができた。
・『図説関東大震災 ふくろうの本』(太平洋戦争研究会/編、河出書房新社、2003年)
・『資料にみる「関東大震災から国民防空への展開」』(吉川 仁/著、三省堂書店、2023年)
・『関東大震災』(北原 糸子/編、吉川弘文館、2010年)
以上から、佐久間町、和泉町が焼け残ったことが確認できた。
その他、一次資料として下記を確認したが、
火災の被害全体や、その後の復興についての記述が主で
焼け残った地域についての記述は見出せなかった。
・『東京府大正震災誌』(東京府、1925年)
・『帝都復興史』全3巻(復興調査協会/編、復興調査協会、1930年)
・『帝都復興区画整理誌』全6巻(東京市役所/編、東京市役所、1932年)
【地域資料】
区史、町会誌、学校誌に書かれている
和泉町、佐久間町の消火活動の記録を確認した。
国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧可能かも合わせて確認した。
□区史
・『新編千代田区史 通史編』(東京都千代田区(総務部総務課)、1998年)
・『千代田区史 中』(千代田区役所/編纂、千代田区役所、1960年)
□町会誌
・『東方見聞録』
(千代田区和泉橋地区町会連合協議会編集委員/作成、
千代田区和泉橋地区町会連合協議会、2008年)
□学校誌
・『佐久間小学校 創立70周年記念誌』
(東京都千代田区立佐久間小学校創立七十周年記念出版委員会、
東京都千代田区立佐久間小学校創立七十周年記念会、1973年)
P.32で『大震災美績録』(※『大正震災美績』の誤り)を紹介していたため、原本を確認した。
・『大正震災美績』(東京府/編、東京府、1924年)
消火活動の具体的な記述が確認できた。
その他、以下の資料でも佐久間町、和泉町に関する記載が確認できた。
・『千代田まち事典』(千代田区区民生活部、2005年)
・『千代田史話』(小丸 俊雄/著、ぎょうせい(印刷)、1985年)
・『神田復興史並焼残記』(山角 徳太郎/編、山角徳太郎、1925年)
以上、地域資料でも、佐久間町、和泉町の消火活動について確認できた。
- 事前調査事項
- NDC
-
- 関東地方 (213 9版)
- 社会福祉 (369 9版)
- 地震学 (453 9版)
- 参考資料
-
-
吉川仁 著 , 吉川, 仁, 1947-. 資料にみる「関東大震災から国民防空への展開」 : 災害教訓の使われ方を再考する. 三省堂書店/創英社, 2023.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I032689563-00 , ISBN 9784879231901 -
武村雅之 著 , 武村, 雅之, 1952-. 東京都における関東大震災の慰霊碑・記念碑・遺構 その2 (台東区・荒川区・中央区・港区・千代田区・文京区). [武村雅之], 2020.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I030595216-00 -
鈴木淳 [著] , 鈴木, 淳, 1962-. 関東大震災 : 消防・医療・ボランティアから検証する. 講談社, 2016. (講談社学術文庫 ; 2381)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I027516710-00 , ISBN 9784062923811 -
北原糸子 編 , 北原, 糸子, 1939-. 関東大震災 : 写真集. 吉川弘文館, 2010.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010832003-00 , ISBN 9784642037945 -
太平洋戦争研究会 編 , 太平洋戦争研究会. 図説関東大震災. 河出書房新社, 2003. (ふくろうの本)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004218755-00 , ISBN 430976035X - 千代田区和泉橋地区町会連合協議会編集委員 作成. 東方見聞録. 千代田区和泉橋地区町会連合協議会, 2008.
-
東京都千代田区. 千代田まち事典 : 江戸・東京の歴史をたずねて. 千代田区区民生活部, 2005.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007711422-00 , ISBN 4902272016 -
東京都千代田区. 新編千代田区史 通史編. 東京都千代田区, 1998.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002708775-00 - 小丸俊雄. 千代田史話. ぎょうせい(印刷), 1985.
- 東京都千代田区立佐久間小学校創立七十周年記念出版委員会. 佐久間小学校 創立70周年記念誌. 東京都千代田区立佐久間小学校創立七十周年記念会, 1973.
-
東京都千代田区. 千代田区史 中巻. 千代田区, 1960.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001227192-00 - 東京市公報 昭和14年1月至6月. 東京市, 1939.
-
東京市. 東京震災録 前輯. 東京市, 1926.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001881557-00 -
東京市. 東京震災録 中輯. 東京市, 1926.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001663734-00 -
東京市. 東京震災録 後輯. 東京市, 1926.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001591134-00 -
東京市. 東京震災録 別輯. 東京市, 1927.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001808918-00 -
東京市 編 , 東京市. 東京震災録 地図及写真帖. 東京市, 1926.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001445752-00 -
山角徳太郎 編 , 山角, 徳太郎. 神田復興史並焼残記 : 大正大震火災帝都復興記念. 山角徳太郎, 1925.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000594042-00 -
東京府 編 , 東京府. 大正震災美績. 東京府, 1924.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000594021-00
-
吉川仁 著 , 吉川, 仁, 1947-. 資料にみる「関東大震災から国民防空への展開」 : 災害教訓の使われ方を再考する. 三省堂書店/創英社, 2023.
- キーワード
-
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- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000339483