レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年08月01日
- 登録日時
- 2023/12/26 16:59
- 更新日時
- 2023/12/26 16:59
- 管理番号
- 市川20230801-01
- 質問
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解決
『流転の海 第一部』(宮本輝/著 新潮社 1990)のp.18に「敗戦までは、名前の下に〈仁〉という字をつけてはならないきまりになっていた。〈仁〉という字は皇室の人間しか使えなかったのである。」という記述があるが、このような事実があったか記載のある文献等を知りたい。
- 回答
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『名前の禁忌(タブー)習俗』(豊田国夫/[著] 講談社 1988)で天皇の名前の規制についての記述を確認。
p.81に「古代では、まず、漢字対象の禁忌令が出された。天平年間、先述の君字とか、天皇名との同字使用などが、その事例である。歴代天皇の仁の字をさけ、国人(くにひと)をクニタミ。世人(よひと)・里人(さとひと)をヨビト・サトビトと濁音に読ませたなどの故実がある。」と記載されている。
p.192に「仁明は、天長一〇年(八三三)の禁忌の詔勅『天下諸国人民の、姓名及び郡郷山川等の号に、諱に触る者あれば、皆改易せしむ』の天皇である。」との記述があった。
また、p.256-257に「明治維新の記録によれば、以上の欠画避諱の制令は、次第にゆるやかなものになり、やがて消滅して行く。『憲法類編』明治元年(一八六八)一〇月九日附の太政官布告には、恵※(仁孝御名字)統※(孝明御名字)睦※(今上御名字)【※は欠画での記載】右の三字は御諱に付、名字等に相用ひ申間布儀は勿論、刻本等には欠画致すべく候こと。とあるが、同五年正月二七日の第二四号布告では、御名陸字、自今欠画に及ばず候事。但し、恵・統の二字は同様となすべきのこと。となり、『法令全書』第一一八号、六年三月二八日の布告では、ついに、御歴代御諱、并に御名の文字は、自今、人民一般相名乗候儀、憚るに及ばざること。但し、熟字のまま相用ひ候儀は、相成らず候こと。として、人民の世となり、欠画令の解除が避諱に及んだ。」との記載があった。
以上の様に、古代においては「仁」の文字をそのまま発音することは禁忌とされていたようだが、戦前まで「仁」という文字を名前の下につけることについて規制があったのかは確認ができなかった。戦前の一時期において、天皇の名前の一部である「恵」、「統」、「睦」や、天皇の名前の熟字のまま使うことが禁じられたが、それ以外の文字は使ってもよいという布告があった。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 系譜.家史.皇室 (288 10版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000344037