レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年3月7日
- 登録日時
- 2023/04/07 17:37
- 更新日時
- 2023/04/15 22:16
- 管理番号
- 県立長野-23-002
- 質問
-
未解決
先祖が関所役人をしていたようだが、どこの関所かわかるか。一族の墓は、しなの鉄道屋代駅の近く小島(おじま)地籍にある。
- 回答
-
先祖の菩提寺が千曲市屋代駅の近く小島地籍とのことから、小島村の住人として調査した。
小島村は『角川日本地名大辞典20長野県』角川書店 1990 【291.03/カド/20】 p.281「小島(おじま)」によると、江戸時代初期は、松代藩領、幕府領、坂木藩領と変わり、元禄16年から幕府領のまま明治維新を迎えた。同じように、『長野県の地名』平凡社 1979【291.03/ニホ/20】p.762「小島村」でも、「江戸時代を通じて坂木・中之条代官支配地であった」とある。このため、中之条代官所の役人だった可能性がある。
『更埴市史 第2巻 近世編』更埴市史編纂委員会編 更埴市 1988 【N216/49/2】p.160-164に、江戸時代の小島村の様子が書かれている。また、p.241-244には、関所の役割を果たした機関に口留番所の記述がある。松代藩が置いた口留番所を列挙しており、
埴科郡 鼠宿・関屋
更級郡 桑原・太田原・橋木・有旅(うたび)・田ノ口・覆盆沢・聖
高井郡 川田・仁礼
水内郡 立屋・宇内坂・日影・桐山・腰・上ケ屋・吉田・小市・橋場
がある。このうち、更埴(千曲市の旧市名)市域の口留番所は、桑原宿(千曲市桑原)の西入口に位置する桑原口留番所と大田原村(千曲市桑原 田原神社近く)に置かれた大田原口留番所。幕府領の番所についての記述はない。
『長野県史 通史編 第4巻近世1』長野県編 長野県史刊行会 1989【N209/11-4/4】p.257-258に、口留番所の役割についての記述があり、たいていの藩にあった旨の記述があるが、松代藩、松本藩のものを紹介している。幕府領の番所がどこにあったのかは、関係市町村の誌史類を調査したが、確認できなかった。
『信濃の関所と番所』 宮坂武男著 長野日報社 2010 【N208/66-1】に掲載のある番所のうち、千曲市周辺にあるものは、千曲市 桑原口留番所、田原口留番所で、松代領の口留番所。
当該地域の誌史類を何件か調査したが、いずれの資料にも幕府領の関所、番所の記述は確認できなかった。記述されている桑原口留番所、田原口留番所は、小島村からは千曲川の対岸にあり、しかも幕府領である小島村の住人の任地であるとは考えにくいと思われる。
山﨑仁著「北国往還鼠宿御番所について」『北国街道研究』 第11号 2010 p.14-31は、埴科郡坂城町にあった鼠宿の番所について書かれている。鼠の番所は松代藩が設けた番所だが、番所役人の仕事や身分、俸禄などが書かれている。
松本史著「松代藩口留番所について」『信濃 第3次』第39巻9号 p.47-62も、上水内郡緒川村にあった松代藩の番所について書かれたもので、番所役人の仕事等詳しく、併せて紹介した。
『更級埴科地方誌 第3巻 近世編上』 更科埴科地方誌刊行会編・刊 1980 【N215/32/3-1】p.67-68,717-722にも、松代藩の番所役人についての記述がある。松代藩では、番所の番人を居村農民から任用し、足軽格で常住させ世襲させていた旨の記述がp.67-68にあった。
なお、菩提寺の過去帳で詳しいことがわかるかもしれない。また、小島村に関しては地域の古文書が区有文書としてある。千曲市の歴史文化財センター(026-261-3210)に所蔵先等を尋ねるとよい。
中沢浅二郎著「小島村三十六軒と満照寺のコタツ」『ちょうま』第2号 p.74-75 に、小島村は明治初期36軒ほどの村で、明治21年の屋代駅の開駅、屋代駅と稲荷山間の道路の開道により急速に人口が増えたことが書かれている。問い合わせの一族が明治以降に、小島村の菩提寺に墓を作ったのであれば、これらの情報からは遡れない。
- 回答プロセス
-
1 『角川日本地名大辞典20長野県』『長野県の地名』で千曲市小島の概略を確認する。江戸時代初期は、松代藩領、幕府領、坂木藩領と変わり、元禄16年から幕府領のまま明治維新を迎えたことがわかる。坂木・中之条代官支配地であったため、中之条代官所の役人だった可能性がある。
2 『角川日本姓氏歴史人物大辞典20 長野県』 角川書店 1996 【288.1/カド/20】で問い合わせの姓を調べる。市部では長野市・伊那市に多く、郡部では小県郡真田町。埴科郡戸倉町に多いとある。7つの系統について記述がある。千曲市周辺では、松代藩士、長野市川中島、更埴市(現・千曲市)中(なか)、更埴市土口(どぐち)の家を紹介している。幕府領の役人の記述はなかった。
3 『長野県史 近世史料編』は、近世(江戸時代)の長野県内に残された史料(文書等)を地域(各領地、知行所)ごとにわけ、分野別年代順にまとめたもの。この「領知」という項目に、分限帳(家臣の名簿・俸給)がある。『長野県史 近世史料編 第7巻(1)北信地方』 長野県編 長野県史刊行会 1989【N209/11/7-1】に、松代領、幕府領の「領知」が掲載されている。p.204-225の松代領の「文久年中 真田幸民家中分限帳」の御平士給人格の中に、問い合わせの姓が2名いる。また、p.232-237「明治元年十月松代藩戊辰戦争死傷者届」に、1名あった。
幕府領関係では、p.863-916の幕府領内の領知に係る文書類について、名前がわかるものを見たが不明。p.909-916に「年代不詳 坂木・中之条御支配代々留書」があり、各陣屋の代官ごとに役人名が書かれている。、問い合わせの姓の人物は確認できなかった。また、この一覧には番所、あるいは口留番所と思われる職名はわからなかった。
4 同様に『長野県史 近世史料編 第7巻(3)北信地方』 長野県編 長野県史刊行会 1982【N209/11/7-3】に、松代領、幕府領の「交通・運輸」が掲載されている。これらの番所関係の文書に、職務上の署名をさがしたが、記載のある文書は、松代領、幕府領ともに確認できなかった。
5 『更埴市史 第2巻 近世編』で小島村を探す。関所の役割を果たした機関に口留番所があることがわかる。
6 代官所のあった坂城町を含め、関係市町村の誌史類を調査したが、千曲市の小島地籍の近くには、口留番所は確認できなかった。
7 当館蔵書を「番所」で検索する。『信濃の関所と番所』ほか、郷土史雑誌の記事を確認する。
<調査資料>
・『ふなやま』 区誌ふなやま編纂委員会編・刊 1978【N216/36】
・『長野県史 通史編 第6巻近世3』長野県編 長野県史刊行会 1989【N209/11-4/6】
・『更級埴科地方誌 第3巻 近世編下』 更科埴科地方誌刊行会編・刊 1981 【N215/32/3-2】
・『埴科郡志』埴科郡役所編 明治文献 1973(明治43年刊の復刻) 【N216/85】
・『近世関所・番所の比較研究』 重松一義[著]・刊 1989【N682/195】
・米山一政著「松代領内口留番所について」『信濃 第3次』第8巻5号 p.1-14
・「北國街道」『歴史の道調査報告書I-V』
長野県教育委員会編 長野県文化財保護協会 1984(1980刊の合冊復刻)【N682/53-1/1】
・『北国街道 矢代宿』 原田孝著 柿崎庸三 1995 【N682/91】
・『新編 姓氏家系辞書』 太田亮著 丹羽基二編 秋田書店 1974 【288/93】
・「信府統記 第2,第3」『信濃史料叢書 上』 信濃史料編纂会 歴史図書 1969 【N208/60/1】
- 事前調査事項
- NDC
-
- 交通史.事情 (682 10版)
- 中部地方 (215 10版)
- 系譜.家史.皇室 (288 10版)
- 参考資料
-
-
更埴市史編纂委員会 編 , 更埴市. 更埴市史 第2巻 (近世編). 更埴市, 1988.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001939548-00 ( 【N216/49/2】) -
長野県/編集 , 長野県. 長野県史 通史編 第4巻. 長野県史刊行会, 1987.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005947140-00 (【N209/11-4/4】p.257-258) -
宮坂 武男/著 , 宮坂 武男. 信濃の関所と番所. 長野日報社, 2010-12.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I058952606-00 (【N208/66-1】) -
更級埴科地方誌刊行会/編集 , 更級埴科地方誌刊行会 , 更級埴科地方誌刊行会. 更級埴科地方誌 第3巻近世編 上. 更級埴科地方誌刊行会, 1980-12.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059339687-00 (【N215/32/3-1】p.67-68,717-722) -
竹内理三 [ほか]編纂. 角川日本姓氏歴史人物大辞典 20. 角川書店, 1996.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002541302-00 , ISBN 4040022009 (【288.1/カド/20】)
-
更埴市史編纂委員会 編 , 更埴市. 更埴市史 第2巻 (近世編). 更埴市, 1988.
- キーワード
-
- 更級郡小島村
- 幕府領
- 口留番所
- 番所役人
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土 人物
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000331843