レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年08月23日
- 登録日時
- 2024/02/23 10:32
- 更新日時
- 2024/03/11 11:08
- 管理番号
- 中央-1-0021695
- 質問
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解決
現小鹿野町三山(旧三山村)にある白石山(毘沙門山)の山名について調べている。
新編武蔵風土記稿(秩父郡)では、江戸時代末期~明治初期あたりまでは「毘沙門山」とされていた。
その後、いつ頃からどのような理由で「白石山」になったのかがわからない。
何か手がかりになるような資料があったら教えてほしい。
- 回答
-
複数の資料より、「白石山(毘沙門山)」については、古くから「白石山」と「毘沙門山」の二つの呼び名があったことが確認された。
「毘沙門山」から「白石山」に山名が変更されたというよりも、通称・別名として、二つの名が並立していたと思われる。
それぞれの名前の由来について記述のある、回答プロセス○印の資料を紹介した。
- 回答プロセス
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○『日本山岳ルーツ大辞典』村石利夫/編著 竹書房 1997年
p453
「白石(はくせき)山」997m
小鹿野町
〔別名〕毘沙門山
【山名のルーツ】この山の特に山頂部が石灰岩のため灰色をしているということ。また高山のため、冠雪期間が長い山のときにも付けられる山名。
「毘沙門(びしゃもん)山」997m
小鹿野町
〔別名〕白石山
【山名のルーツ】仏教守護の四天王の一神で、十二天の一神、七福神の一神、特に北方の守り神である毘沙門天を山頂に祀ってあることによる山名。
×『小鹿野町誌』小鹿野町誌編集委員会/編集 小鹿野町 1976年
○『角川日本地名大辞典 11 埼玉県』「角川日本地名大辞典」編纂委員会/編 角川書店 1980年
p479「しらいしやま 白石山<小鹿野町>」
解説の中に下記の記述あり。
「郡村誌」に「此山の形勢たるや高山の嶺に数百尺の巨巌聳え、恰も屏風を立たるが如し、中央に猿穴水晶穴等の洞あり、岩質皎白故に白石山の称あり」とある。
○『武蔵国郡村誌 第7巻』埼玉県立図書館 1954年
p188「白石山 高百丈周回廿五町村の北方にあり嶺上より二分し東北は藤倉村に属し西南は本村に属す登路一條あり三ヶ原より上る岩腰まで十三町十五間嶮岨なり此山の形勢たるや高山の嶺に数百尺の巨巌聳へ恰も屏風を立たるが如し中央に猿穴水晶穴寺の洞あり岩質皎白故に白石山の称あり」
×S786.1『埼玉県の山 改訂版』打田鍈一/著 山と溪谷社 2010年
×S462.13『小鹿野町の自然 小鹿野町自然環境調査報告書2 平地・山地の動植物』小鹿野町/編集 小鹿野町 1996年
○『埼玉大百科事典 4 とち~ま』埼玉新聞社 1981年
p178「はくせきざん 白石山」の項に「別名毘沙門山」との記述あり。
p274「びしゃもんのあな 毘沙門の穴」の項に「秩父郡小鹿野町の白石山(通称びしゃもん山、標高九九七メートル)の山頂西方、標高約九〇〇メートルの北斜面に開口している竪穴型の鍾乳洞。(後略)」との記述あり。
●国立国会図書館デジタルコレクションを見る
「白石山 毘沙門山」で検索
すべて個人・図書館送信資料
○『西上州の山』野口冬人/著 朋文堂 1962年
https://dl.ndl.go.jp/pid/2982511(2024.3.1最終確認)
67コマ(p126)「毘沙門山とは、地図に白石山と記入された996.8mの標高を有する山で、地図上でも知られるように南面は切り立った雄大な岩壁になっていて、河原沢川(三山川)にそうバス道から仰ぐと見ごとに聳立している山である。毘沙門山とは、俚人が多く称するものである。」
○『西上州の山と峠』佐藤節/著 新ハイキング社 1982年
https://dl.ndl.go.jp/pid/9642659(2024.3.1最終確認)
60コマ(p110)「標高996.8メートル、5万図には、白石山と記載されるこの山が、かく呼ばれるのは、南懐中段に、毘沙門廟を斎(いつ)くことによるようです。」
○『二泊三日山の旅』中村謙/著 朋文堂 1959年
https://dl.ndl.go.jp/pid/2991270(2024.3.1最終確認)
62コマ(p116)「毘沙門山(九九七米)は地図の「白石山」だ。岩中に毘沙門天が祀ってあるので、その名があるが、通常はこの俗称の方が、かえって通っている。」
○『山を行く』高畑棟材/著 明文堂 1930年
https://dl.ndl.go.jp/pid/1192452(2024.3.1最終確認)
33コマ(p30-31)
「此の山は「武蔵通志」(山岳篇)両神山の條に白石山(シロイシヤマ)として、
白石山 高八百尺三田川村三山村の北倉尾村藤尾村藤倉に跨る山嶺巨巌屏の如く地を抜く數十尺中央猿穴水晶穴等あり、石質皎白故に名く字三ヶ原より巌腰に達する十三町頂に白石神社あり。
の記事があり、陸測五萬の万場圖幅にも白石山(九九六・八米)と書いてあるが、高頭さんの『日本山嶽志』「関東山系、秩父山塊補遺」(第五〇九頁)に、
毘沙門嶽 武蔵國秩父郡ノ北方ニアリ。三田川(ミタガハ)村大字三山(サンヤマ)ヨリ一里ニシテ其山頂ニ達ス。全山秩父古生層及ビ石灰岩ヨリ成ル。標高三千三百二十三尺。
とある通り、土地では現に毘沙門山と稱へ白石山とは呼んでゐない。」
- 事前調査事項
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以下は質問時に、利用者から付記された情報
・『新編武蔵風土記稿』には、この三山村内には山号を白石山という不動院(修験道)があり、不動院は当時の児玉郡傍示堂村千珠院の配下にあったとだけ記されている。このお寺と毘沙門山が何か関係しているのかと思ったが、不動院はすでにないらしい。
・一方で、昭和のころにはこの白石山は秩父セメントの「藤倉鉱山」があり、石灰岩の採掘が行われていたことから、石灰岩の「白」と関係があるのかもしれない。
・地元の方も知らないとのこと。
・レファレンス協同データベース内に白石山の登山道に関する情報はあったが、山名の変更につながるような情報はなし。
- NDC
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- 戸外レクリエーション (786 10版)
- 日本 (291 10版)
- 参考資料
- キーワード
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- 白石山
- 毘沙門山
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000346531