レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年7月4日
- 登録日時
- 2023/12/23 11:30
- 更新日時
- 2023/12/23 16:34
- 管理番号
- 千県東-2023-0001
- 質問
-
解決
旭市琴田地区と太田地区の道路で、竹に縄飾りがしてあった。どういったいわれの行事なのか知りたい。
旭市琴田(JAちばみどり 農機センター付近):電信柱に竹がくくりつけてあり、その竹にサツマイモや藁で作った丸い輪がつるされている。4月頃見かけた。たまにしか通らない道なので、いつからいつまであったのかは不明。
旭市太田(ファミリーマート 旭東店付近):道の両側の電信柱に竹がくくりつけてあり、その竹に道を横断する形で縄がかけられている。縄には藁でつくられたタコのようなものがつるされている。7月に見かけた。
- 回答
-
以下の【資料1】~【資料6】に記載がありました。ご質問の行事は「辻切り(旭市琴田)」と「お七五三縄(しめなわ)おろし(旭市太田)」であると考えられます。
【資料1】【資料3】【資料5】【資料6】は、千葉県立図書館に所蔵しています。
【資料2】は、国立国会図書館デジタルコレクションで図書館・個人送信限定で公開されています。
【資料4】は、インターネットに公開されています。
【資料1】『災いくるな! 2(平成7年度) 企画展示 境にこめた願い』(千葉県立房総のむら 1996)
p3-5「境をめぐる年中行事-道切りを中心に」に、道切りという行事の形に「太綱(辻切り)タイ
プ」や「綱つりタイプ」があることや、道切りを行う理由、道切りが行われる時期について書かれています。
p11-19「下総地方の事例」道切りの下総地方の事例として、「お七五三縄(しめなわ)おろし(旭市太田)」と「辻切り(旭市琴田)」が記載されています。
p11「お七五三縄(しめなわ)おろし(旭市太田7m)」
「この行事は、太田地区の八坂神社祭礼前の6月30日にむら境4か所に青竹を立て、その間にこの
縄を渡すもので、祭りを前にむらに災いが入らない事を祈る行事といえます。これは、祭りの終わる
7月28日には取り除かれることからもうかがえます。蛸を中心に、左右に徳利を下げます。(徳利の片方
がサイコロにかわることもあります)蛸の吸盤が悪事を吸い取り、徳利とサイコロは酒と博打の戒めと言われています。」とあり、「お七五三縄(しめなわ)おろし」の様子が写真で紹介されています。
p11「辻切り(旭市琴田(1、2組)約3m)」
「毎年2月15日の朝、各組(1・2組は合同で行う)のその年の組長宅に地区の若者が集まり、藁の蛸と酒樽、大根のサイコロを作り、左綯いの太い縄にくくりつけて1・2、3組はとなりの江ヶ崎との境に、4組は新町との境に青竹にむすんで立てます。去年まで道を渡すように張っていましたが、自動車に切られてしまうので、今年から道の片側にまとめて立てるようになりました。蛸は、災難を吸い取り、酒樽とサイコロは飲酒博打の戒めといわれますがさだかではありません。」とあり、「辻切り」の様子が写真で紹介されています。
【資料2】八杉真帆「海匝地区の辻切り」(『西郊民俗』通巻159号 1997.6)p40-48
(https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/6064406)
旭市を含む海匝地区における辻切りについて詳しく書かれています。
p42-43「海匝地区における「辻切り」の実施状況(平成8年10月現在)」では、海匝地区の辻切り(お七五三縄(しめなわ)おろしを含む)の実施状況が一覧表で掲載されています。
【資料3】『千葉県の歴史 別編民俗1』(千葉県史料研究財団編 千葉県 1999)
p250-254「藁蛇と綱吊り」
p251「辻切りと呼ばれる行事は、下総地方では旭市琴田・八千代市上高野・本埜村滝原寺・佐倉市井
野などにみられる。琴田では二月十五日に藁で太い綱を作り、これに藁で作った酒樽とタコ(蛸)、
それに大根で作られたサイコロを結び付け、ムラ境に立てた青竹に取り付ける。タコはムラに来る災
難をその口で吸い取るためであり、酒樽は飲酒と博打を戒めるためだと説明されている。」
【資料4】猪野映里子「紙上展示室旭モノ語リ第十八回 辻切り」(『広報あさひ』2007. 1. 1)
(https://www.city.asahi.lg.jp/uploaded/attachment/11783.pdf)
p16 「道の上にぶらさがっているタコに、遭遇したことはありませんか。(中略)かつては市内の多くの地区に生息していました。残念ながら現在は、その個体数が減少傾向にあり、市内では三川、琴田、蛇園、太田などで生存が確認されています。これは辻切り、道切り、ツヂギリ、オシメナワ、タコツリと呼ばれるものです。(中略)車の交通量が多くなってからは、道路を横断して張ることが難しくなり、竹や生垣にぶら下げるようになったところもあります。」とあり、タコをはじめ吊されているもののもつ意味や行事のいわれについて記載されています。
【資料5】『災いくるな! 3(平成8年度) 企画展示 むら・家・野良 境の諸相』(千葉県立房総のむら 1997)
p36-40「千葉県内の「道切り」行事一覧」
p37「旭市琴田 辻切り 2月15日」
p37「旭市太田 オシメナワ 八坂神社例祭前」
【資料6】『旭市史 第1巻 通史編・近代史料編』(旭市史編さん委員会編 旭市役所 1980)
p1096-1115「民俗行事一覧」
p1105「二月十五日/辻切り/部落の境に竹を立て、しめ縄を張り種々の物を下げ厄よけの行事をす
る/東琴田區」
- 回答プロセス
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1 千葉県の県史と旭市の市史を参照
【資料6】【資料3】を参照。
質問の行事(琴田地区)が「辻切り」であることが分かった。
他に以下の資料を確認したが、質問の行事に関する記載は見つからなかった。
『旭市史 第2巻 近世北部史料編』(旭市史編さん委員会編 旭市役所 1973)
『旭市史 第3巻 近世南部史料編 中世史料編』(旭市史編さん委員会編 旭市役所 1975)
2 郷土資料「C38(千葉県の風俗習慣.民俗学)」の書架を探索
【資料1】【資料5】を発見。
質問の行事(太田地区)が「お七五三縄(しめなわ)おろし」であることが分かった。
実際に道でご覧になったという「藁でつくった丸い輪」は輪の下に藁の束がついており、【資料1】
p11「辻切り(旭市琴田(1、2組)約3m)」で紹介されている写真の酒樽に似ている。
他に以下の資料を確認したが、「辻切り」や「注連縄(しめなわ)」の項目はあるものの、旭市に関す
る記述は見つからなかった。
『千葉大百科事典』(千葉日報社 1982)
3 当館ホームぺージで公開している千葉県関係のデータベース「菜の花ライブラリー」
(https://www.library.pref.chiba.lg.jp/nanohana/)を「辻切」「七五三縄」「しめなわ」で検索
旭市に関するものは見つからなかった。
4 千葉県立図書館ホームページ「図書・雑誌・視聴覚資料検索」を全項目「辻切」「七五三縄」
「しめなわ」で検索
旭市に関するものは見つからなかった。
5 国立国会図書館オンラインをキーワード「辻切」「七五三縄」「しめなわ」で検索
【資料2】を発見。
【資料2】の文中から『飯岡町史』(飯岡町史編さん委員会編 飯岡町 1981)を発見。
内容を確認したが、辻切りに関する記述はあるものの、該当地域に関するものは見つからなかった。
6 Googleを「旭市 辻切」「旭市 七五三縄」「旭市 しめなわ」で検索
【資料4】を発見。
※参考資料末尾の数字は当館の資料番号です。
(インターネット最終アクセス:2023年7月13日)
- 事前調査事項
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実際に琴田地区と太田地区で見た縄飾りを写真に撮って持参された。
- NDC
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- 寺院.僧職 (185 9版)
- 年中行事.祭礼 (386 9版)
- 民間信仰.迷信[俗信] (387 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】『災いくるな! 2(平成7年度) 企画展示 境にこめた願い』(千葉県立房総のむら編 千葉県立房総のむら 1996)(1101652751)
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【資料2】八杉真帆「海匝地区の辻切り」(『西郊民俗』通巻159号 1997.6)p40-48
(https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/6064406)
(国立国会図書館デジタルコレクション国立国会図書館/図書館・個人送信限定) - 【資料3】『千葉県の歴史 別編民俗1』(千葉県史料研究財団編 千葉県 1999)(2101145798)
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【資料4】猪野映里子「紙上展示室旭モノ語リ第十八回 辻切り」(『広報あさひ』2007.1.1)p16
(https://www.city.asahi.lg.jp/uploaded/attachment/11783.pdf) - 【資料5】『災いくるな! 3(平成8年度) 企画展示 むら・家・野良 境の諸相』(千葉県立房総のむら 1997)(2190001571)
- 【資料6】『旭市史 第1巻 通史編・近代史料編』(旭市史編さん委員会編 旭市役所 1980)(2100458967)
- キーワード
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- 年中行事(ネンチュウギョウジ)
- 民間信仰(ミンカンシンコウ)
- 辻切り(ツジキリ)
- しめ縄(シメナワ)
- 千葉県-旭市(チバケン-アサヒシ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000343910