レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20230111
- 登録日時
- 2023/07/07 00:30
- 更新日時
- 2023/12/02 11:56
- 管理番号
- 0401005118
- 質問
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未解決
「天然痘」という語の由来について知りたい。
古くは「痘瘡」「疱瘡」と言われていたが、突然「天然痘」という言い方が始まっており、由来が分からない。
- 回答
-
「天然痘」の語の由来については不明。
これまでの調査結果を説明し、参考資料等を紹介することで回答とした。
- 回答プロセス
-
まず、資料①②で「天然痘」を調査。
「疱瘡」「痘瘡」の別名とあるものの、「天然痘」と呼ぶ由来に関する記述なし。
次に、資料①②に参考文献として記載されている資料のうち所蔵している③④を調査。
資料③『天然痘が消えた』p5
「医学用語としては古くから「痘瘡」、中国語では「天花」と言い、「天然痘」といつごろから用いられたかは不明」とあり。
資料④『日本疾病史』p93-166
「痘瘡」の記載があり、名前の変遷もあったが「天然痘」については発見できず。
キーワードを変え、「近世 医学」「疱瘡」「天然痘」で自館検索し、ヒットした資料を調査。
資料⑤『天然痘根絶史』p327
馬場佐十郎がロシア語の種痘書を翻訳し『遁花秘訣』と名づけたとある。
「天然痘はいろいろな名称でよばれていたが、その一つに「天花」がある。すなわち天花をのがれるすぐれた方法、との願いをこめて命名された」とあり。
資料⑥『日本思想大系 65洋学 下』p362-381
「遁花秘訣」で自館検索しヒット。
収載されていた『遁花秘訣』を調査したが「天然痘」は発見できず。記載されているのは「遁花秘訣」という命名に関してであった。
他、参考文献にある資料を調査したが「天然痘」の由来が分かるものは発見できず。
資料⑦『病いの克服』p21-31
「痘瘡の称呼の変遷」によると「天然痘」という呼び名は1849年発行の『牛痘小考』に見られるとあり。国立国会図書館デジタルコレクションで調査。
6コマ目に「天然痘」と記載があることは確認できたが由来については発見できず。
資料⑧から⑭も調査したが成果なし。
調査が行き詰ったため、インターネットで「天然痘 由来」「天然痘 語源」で検索。
ウィキペディアによると「天然痘の語は1830年の大村藩の医師の文書が初出である」とあり。
出典元の『近代医学の先駆者 ハンターとジェンナー』(山内一也/著、岩波書店刊)は未所蔵のため調査できず。
「大村藩」というキーワードが出てきたため、国立国会図書館デジタルコレクションで「天然痘 大村藩」で検索しヒットした資料を調査。
『大村藩の医学』p123-124
大村藩の医師・田中芸育の「天然種痘法」という文書の中に「天然痘」の記載あり。しかし由来については発見できず。
ここまでで調査を断念し、以上の調査結果を回答とした。
【国立国会図書館デジタルコレクション】
『牛痘小考』永続的識別子:info:ndljp/pid/2539159
6コマ目に「天然痘」と記載あり。
『大村藩の医学』永続的識別子:info:ndljp/pid/1049397
p123-124に「天然痘」の記載あり。
【追記】
『近代医学の先駆者 ハンターとジェンナー』を所蔵していた熊本大学附属図書館へ内容の確認を依頼したところ、「天然痘」の初出に関する詳細な回答をいただいた。
後日質問者へ追加情報としてこれを紹介した。ただし、次の記述以外に「天然痘」の由来に関するものはなかった。
【熊本大学附属図書館】回答より抜粋
『近代医学の先駆者 ハンターとジェンナー』p.11
「中国の天行斑瘡、天行豆瘡、天花瘡、天瘡痘瘡といった名前が示すように、この病気が天からの影響と信じられていたことから、天然痘という呼び名が江戸時代末期に日本で生まれたものと推測される。」とあり。
- 事前調査事項
- NDC
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- 内科学 (493 10版)
- 日本語 (031 10版)
- 日本思想 (121 10版)
- 参考資料
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- 日本大百科全書 16,小学館,1987.7 (資料① p414-415「天然痘」の項目あるが語源、由来なし。参考文献として『天然痘が消えた』あり。|0112999164|R/031/ニ/16)
- 国史大辞典 12,国史大辞典編集委員会/編,吉川弘文館,1991.6 (資料② p628に参考文献として『日本疾病史』とあり。|0114761661|R/210/コ/)
- 天然痘が消えた,北村 敬/著,中央公論社,1982年 (資料③ |0110009941|/493.8キ/シュ/029979)
- 日本疾病史,富士川 游/著,平凡社,1969.2 (資料④ 0111086526|/080/ト/(133))
- 天然痘根絶史,深瀬 泰旦/著,思文閣出版,2002.9 (資料⑤ |0118188085|/493.8/フ/)
- 日本思想大系 65,岩波書店,1972 (資料⑥ |0111099065|/121/ニ/65)
- 病いの克服,川村 純一/著,思文閣出版,1999.5 (資料⑦ |0117307058|/493.8/カ/)
- 富士川游著作集 第4巻,富士川 游/著,思文閣出版,1981 (資料⑧ p142-155「痘瘡の話」「種痘術の祖の私考」|0112480942|/490.8/シュ/086784)
- 文学に見る痘瘡,川村 純一/著,思文閣出版,2006.11 (資料⑨ p166に、天然痘なる呼び名は江戸時代の書籍にはあまり見当たらず明治7-8年頃の「痘瘡関係法令」以来公式用語として使用とあり。|0118378777|/493.8/カ/)
- 天然痘との闘い [1],青木 歳幸/編,岩田書院,2018.6 (資料⑩ 0141305235|/493.8/ア/)
- 松本順自伝・長与専斎自伝,松本 順/[著],平凡社,1980.9 (資料⑪ p186「旧大村藩種痘の話」|0110961190|/080/ト/(386))
- 小児を救った種痘学入門,加藤 四郎/編著,創元社,2016.8 (資料⑫ 0140665084|/493.8/カ/)
- 大和心を人問わば,北野 典夫/著,葦書房,1989年 (資料⑬ p162大村藩の医師田中芸育について記載あり|0114371222|/210.5キ/熊日出版賞/90)
- 種痘伝来,アン・ジャネッタ/[著],岩波書店,2013.12 (資料⑭ 0141494815|/493.8/ジ/)
- キーワード
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- 天然痘
- 痘瘡
- 疱瘡
- 種痘
- 牛痘
- 大村藩
- 照会先
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- 【熊本大学附属図書館】https://www.lib.kumamoto-u.ac.jp/
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000335552