県内の図書館振興策については、以下の資料に概要がまとまっています。
・『栃木県教育史 下巻・戦後史編 新版』(栃木県教育史編さん委員会/編 栃木県連合教育会 1990)
「第六章 社会教育の復興」「第三節 青少年の社会教育」「六 図書館活動の発展」に、p.419-421「市町村立図書館の整備」の項があります。
県内の図書館振興策として、栃木県が行った「公立図書館施設整備費助成制度」と、栃木県町村会が行った「図書配布事業」が挙げられています。
どちらも昭和53年度から開始したとありますが、「公立図書館施設整備費助成制度」については、制度化の前の昭和52年度にも部分的な助成を行った旨の記述があります。
「公立図書館施設整備費助成制度」と「図書配布事業」について、記述を確認した資料は以下のとおりです。
■「公立図書館施設整備費助成制度」について
・『栃木県の教育 昭和53年版』(栃木県教育委員会/編、発行 1979)
「〔Ⅰ〕教育行政」のp.1-2「2.教育行政努力目標」に「(2)社会教育の振興」「ア.社会教育施設設備の整備充実」の項に、「図書館,視聴覚ライブラリーの整備充実」とあります。
また、p.3-4「3.予算重点事項」の「(2)社会教育の振興」「ア.社会教育施設設備の整備充実」の項に「市町村立図書館建設促進のための整備費補助」として補助金の金額が記載されています。
なお、「〔Ⅴ〕社会教育」「1.社会教育施設」に「(2)図書館」「イ 市町村立図書館」の項がありますが、設置状況等の説明のみで、振興策に関する記述は確認できませんでした。(p.107-108)
当資料について他の年代の所蔵をお調べしたところ、昭和55年版から昭和57年版までは、掲載項目の名称等の変遷はあるものの、市町村立図書館への図書館建設費の助成金額(予算)を確認することができました。
また、昭和58年版から昭和61年版までは、「3.重点施策」内の表記が「公立図書館の設置促進及び県立図書館の資料等の整備充実」となり、県立図書館に関する予算と合算した金額が記載されています。
上記『栃木県の教育』から、市町村立図書館の建設について県費から助成がなされていたことが確認できたため、県の予算・決算について、昭和53年度の情報が確認できる資料をお調べしました。
・『栃木県の財政 第56~60回』(栃木県/編、発行 1976)※5冊分を合冊製本した資料です。
『第59回 昭和53年6月』の巻に「昭和53年度当初予算の状況」が掲載されています。
「Ⅰ 昭和53年度当初予算のあらまし」「1 本年度の財政方針」に「1 心の豊かさと創造性に富む人づくりの推進」「(3)社会教育の推進・県民文化の育成」の項があり、「新たに市町村立図書館の建設に対する県費助成制度を創設」したとあります。(p.3)
予算額については「4 一般会計歳出予算」のp.26-28「⑨教育費」の項に「公立図書館設置助成費」として掲載があり、「説明」として県内の3町の自治体名が記載されています。
昭和53年度の決算状況については以下の資料に掲載されていますが、「公立図書館設置助成費」に関する項目は確認できませんでした。
・『栃木県の財政 第61~65回』(栃木県/編、発行 1979)
※5冊分を合冊製本した資料です。『第62回 昭和54年12月』の巻に「昭和53年度決算の状況」が掲載されています。
・『栃木県歳入歳出決算書 昭和53年度』(栃木県/編、発行 1979)
■「図書配布事業」について
・『栃木県町村会七十年史』(栃木県町村会/編、発行 1991)
「第三編 栃木県町村会史」「第一章 創立以来の主要会務」の項に、創立から平成元年までの主要な会務が年表形式でまとめられています。
昭和53年の年表はp.199-203に掲載されており、9月から11月の記述の中に「図書配付事業」に関する記述が散見されます。「図書配付事業」は「町村振興共同事業」の中の1つであったようで、評議員会等で事業計画の審議がなされていたほか、町村立図書館・公民館向けの説明会が行われていたこと等がわかります。
昭和54年の年表にも1月から3月にかけて、配布図書の選定に関する審議や、配付事業の実務研修会が実施されていた旨の記述があります。(p.203-204)
上記の記述を参考に資料内の他の項目をお調べしたところ、「第四編 栃木県町村会の活動の現況」「第一章 町村振興事業」「第二節 財政健全化活動」「一 町村振興共同事業」の項に関連の記述を確認しました。(p.386-387)
図書配付事業を行った経緯や、町村振興資金積立基金の設置および同委員会に関する規程が掲載されています。
・『栃木県町村会一〇〇年史』(栃木県町村会/編、発行 2021)
主に上記『栃木県町村会七十年史』以降の活動について掲載されています。
「第1章 70年史ダイジェスト」の項に創立から平成元年までの簡易な年表が掲載されています。昭和53年から平成元年までの記述を確認しましたが、「図書配付事業」に関する記述は昭和53年および昭和54年にのみ見られ、内容は上記『栃木県町村会七十年史』と同様のものでした。(p.33)