調べ方マニュアル詳細
- 調べ方作成日
- 2023年03月01日
- 登録日時
- 2023/07/07 12:04
- 更新日時
- 2023/11/15 12:35
- 管理番号
- 埼久-065
- 調査テーマ
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完成
不妊症について知る 埼玉県立久喜図書館 調べ方案内 Milestone No.65
- 調べ方
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■今回のテーマ■
不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦は約5.5組に1組で、不妊に悩むカップルの割合は近年増加傾向にある。不妊治療は大変そうというイメージはあっても、なぜ不妊が増えているのか、検査や治療はどのように進んでいくのか、実態をご存じの方は少ないのではないか。
働く女性が増え、晩婚化が進む日本では、若いうちは仕事に集中したいという方もいるだろう。一方で、女性の妊娠しやすさは35歳を超えると急激に下がる。今は仕事優先と考えている人でも、妊娠のしくみや不妊検査について知ることで、仕事と妊活のバランスをとりやすくなる。そこで、今回は不妊症について関連資料や調べ方を案内する。
〈図書館の本の探し方〉
キーワードで検索する。
図書館の蔵書検索システムや、インターネット等で調べる際は、下記のキーワードや用語辞典に掲載されている言葉などを組み合わせて検索を行うと、手際よく情報を集めることができる。
◆キーワード
不妊症 / 妊娠 / 妊活 / 不育症 / 男性不妊 / 一般不妊治療 / 生殖補助医療
(ART) / タイミング法 / 人工受精 / 体外授精 / 顕微授精 / 胚移植 / 卵子凍結
/ 晩婚化 / 晩産化 / 高齢出産 / 生殖医療専門医 / 不妊カウンセラー
日本の多くの図書館では、「日本十進分類法」を用いて本の内容(テーマ)を数字で表している。原則として、この番号の順に本が並んでいるため、分類番号をヒントに棚を探すと関連する様々な本が見つかる。
◆不妊に関連する図書館の分類番号(日本十進分類法)
491.35(生殖・性学・発育) / 494.97(男性性器の機能障害)
/ 495.48(不妊症・人工避妊・人工授精) / 495.6(妊娠の生理・衛生・病理)
/ 598.2(性生活・妊娠・避妊・出産)
1 不妊とは ~ 不妊症は病気なの?
不妊とは、生殖年齢の男女が妊娠を望み、避妊することなく性交しているにもかかわらず、一年経っても妊娠しない状態のことである。「不妊症」は病名ではなく妊娠しない状態を指す言葉で、女性の年齢によっては一年を待たずに病院で検査した方が良い場合もある。ここでは、妊娠のしくみや不妊の原因について、基礎知識を身につけるための図書を紹介する。
『妊活パーフェクトガイド 妊娠しやすい習慣から不妊治療のキホンまでよくわかる』(坂口健一郎著 クロスメディア・パブリッシング 2022)
不妊治療専門クリニックの生殖医療専門医が妊娠のしくみや不妊検査、不妊治療について Q&A形式で解説している。妊活や不妊治療はまだ先の話と思っている方にこそ手にとっていただきたい1冊である。
『名医がやさしく教える最新不妊治療のすべて』(辰巳賢一著 河出書房新社 2022)
不妊診療や生殖補助医療に携わった経験を持つ医師が妊娠のしくみや不妊の原因、不妊治療のステップを解説する。治療にかかる費用や保険適用のメリット・デメリットについても論じている。
『標準産科婦人科学 第5版』(綾部琢哉[ほか]編 医学書院 2021)
医師向けの教科書として書かれているが、豊富なデータが図やグラフでわかりやすく示されている。妊娠に限らず、女性特有の身体の変化や症状が幅広く解説されている。
『名医が教える妊活と不妊治療のすべて』(藤原敏博[ほか]著 あさ出版 2020)
前半は長年不妊治療に携わってきた医師が不妊治療を受けるまでの流れを紹介している。後半は胚培養の専門家でもある不妊カウンセラーが不妊治療のステップを解説している。
〈不妊の原因〉
妊娠には排卵、受精、着床といったプロセスがあり、どこに問題があるかによって不妊の原因はさまざまである。そのため、原因を特定するための検査も多岐にわたる。また、不妊の原因は女性だけでなく、男性にある場合もある。例えば、子宮や卵子の問題は女性側の不妊原因であるが、精子や射精の問題は男性側の不妊原因である。さらに、不妊の原因は 1 つだけとは限らない。不妊の原因究明には、2人で不妊治療に取り組むという意識で、初診時からカップルで通院することが大切である。妊活時の夫婦間のコミュニケーションについて書かれた下記のような本もある。
『不妊治療成功のカギ!夫婦の妊コミBOOK 心・体・お金のダメージを解消する』(鈴木早苗著 河出書房新社 2021)
不妊治療を経験し、コミュニケーションの講師として活躍する著者が不妊治療中の夫婦や職場の同僚、医師とのコミュニケーションの取り方を解説している。
2 さまざまな不妊治療
不妊治療は、体内で受精を促す一般不妊治療と、体外受精をはじめとする生殖補助医療に分けられる。一般不妊治療には、医師の指導のもと妊娠しやすい日時に性交渉を行うタイミング法や、精子を子宮内に注入する人工受精などがある。
生殖補助医療とは、精子1個を卵子の中に注入する顕微授精法や卵子・胚の凍結保存など、医療技術の進歩とともに発展してきた方法である。不妊治療は一般的に、より自然な妊娠をめざすタイミング法から、人工授精、生殖補助医療とステップアップしていく。
(1)不妊治療のキホンを知る
『妊娠の新しい教科書』(堤治著 文藝春秋 2022)
長年不妊治療・生殖医療に携わってきた医師が、妊娠に関する最近の話題や不妊治療、特に生殖医療の最前線を紹介している。体外受精の保険適用による不妊治療の変化についても解説している。
『最新!不妊治療ナビ 赤ちゃんが欲しいふたりを安心サポート』(山下正紀著 主婦の友社 2021)
タイミング法、人工授精、体外受精とステップアップしていく不妊治療の各ステップについて、治療内容や次のステップに移るタイミングを Q&A 形式で紹介している。
『データから考える不妊症・不育症治療 希望に応える専門外来の診療指針 改訂第2版』(黒田恵司[ほか]編 メジカルビュー社 2022)
医師向けに書かれているが、患者への説明にも使えるよう図が豊富に掲載されている。なぜ不妊症になるのかといった基礎知識から疾患別の治療法まで詳しい解説が載っている。
『今すぐ知りたい!不妊治療Q&A 基礎理論からDecision Makingに必要なエビデンスまで』(久慈直昭[ほか]編 医学書院 2019)
不妊治療の研究・診療に携わる医師らが患者からよく受ける質問を Q&A 形式でまとめた1冊である。医師だけでなく患者自身が疑問の答えを探せるよう、簡単な言葉で説明されている。
(2)生殖補助医療の今を知る
『1冊でぜんぶわかる!卵子凍結完全ガイド』(香川則子監修 扶桑社 2022)
卵子凍結技術の研究・開発に携わってきた著者が、他の不妊治療と比較しながら卵子凍結のメリット・デメリットを解説する。卵子凍結経験者の体験談も掲載されている。
『はじめての不妊治療 体外受精と検査、「妊娠率」を高める体づくりを完全サポートします』(森本義晴監修 主婦の友社編 主婦の友社 2021)
体外受精、顕微授精による治療プロセスをくわしく解説している。
〈生殖補助医療が保険適用の対象に〉
不妊治療、特に高度な医療技術を要する生殖補助医療を受けるには多額の費用がかかる。人工授精・体外受精・顕微授精は従来、全額患者の自己負担だったが、2022年4月から保険適用が始まった。これにより、一定の条件を満たせば原則3割負担で生殖補助医療が受けられるようになった。さらに、治療費が一定額を超えると高額療養費制度の対象にもなり、超えた分の費用が還付される。ただし、日本では保険診療と自由診療を組み合わせて治療を受けることはできない等の注意点もあるため、自分に合った治療内容を費用面も含めて医師とよく相談することが大切である。
3 新聞・雑誌の記事・論文をさがす
最新の情報を得たいときは、新聞記事や雑誌論文を探してみよう。
(1)インターネット上で公開されたデータベースでさがす
《J-STAGE》 (https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja 国立研究開発法人科学技術振興機構)
3,000 誌以上の科学技術(人文科学・社会科学分野も含む)のジャーナルや会議録等を収録した電子ジャーナルのプラットフォームである。キーワード等で検索ができ、本文を読むことができる。
【検索例】 キーワード 〈不妊 & 生殖補助医療〉 で検索する。
岸田泰子[ほか]著 「第三者の関与による生殖補助医療の現状と意識:不妊治療経験者男女と不妊治療経験のない女性の比較」(『日本看護研究学会雑誌 2022年45巻1号』 p71-80 日本漢語研究学会 2022.4)
(2)商用オンラインデータベースで探す
《医中誌 Web》(医学中央雑誌刊行会)
国内発行の、医学・歯学・薬学・看護学及び関連分野の定期刊行物、のべ約7,500 誌から収録した約1,500万件の論文情報(書誌的事項や一部の抄録など)を検索することができる。収録される文献には「医学用語シソーラス」に基づき主題に沿ったキーワードが付与されており、キーワードを活用すればより精度の高い検索も可能である。
【検索例】 キーワード 〈不妊 & 卵子凍結〉 で検索する。
中塚幹也著「【生殖医療の倫理的・法的諸問題】未受精卵子の凍結(解説)」(『HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY 29 巻4 号』 p267-271 メディカルレビュー社 2022.12)
《JDreamIII》(ジー・サーチ)
科学技術や医学・薬学分野の文献情報を検索できる、日本最大級の科学技術文献データベースである。記事本文をデータベースから見ることはできないが、一部全文リンクがあるものもあり。海外文献は、日本語による抄録を掲載している。
4 学会の見解・声明をさがす
《日本産科婦人科学会》(http://www.jsog.or.jp/ 日本産科婦人科学会)
〈一般のみなさまへ〉のページ内に以下の情報が掲載されている。
〈産科の病気>不妊症〉不妊の原因や検査方法の簡単な解説あり。
〈公開情報>声明> 倫理に関する見解一覧〉体外受精などについての学会の見解あり。
《日本生殖医学会》(http://www.jsrm.or.jp/ 日本生殖医学会)
〈一般のみなさまへ> 生殖医療Q&A〉検査や治療についての解説あり。
〈ガイドライン・声明〉「未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関する指針」ほか学会の見解あり。
《日本受精着床学会》(http://www.jsfi.jp/ 日本受精着床学会)
〈生殖補助医療技術ARTって何?〉体外受精・顕微授精の方法や副作用についての解説あり。
〈学会について>倫理委員会〉「卵子提供についての見解と提言」ほか学会の見解あり。
《日本不妊カウンセリング学会》(https://www.jsinfc.com/ 日本不妊カウンセリング学会)
〈カウンセラー名簿〉都道府県別の不妊カウンセラー・体外受精コーディネーターの名簿あり。
5 同じ悩みを持つ人をサポートする団体をさがす
《NPO法人 Fine》(http://j-fine.jp/ 特定非営利活動法人Fine)
不妊に悩む人や妊体験者のサポートを目的として、懇親会などのイベント事業や不妊に関する正しい知識の普及・啓発事業、カウンセリング事業を行なっている団体である。体験談などの情報を掲載している。
〈体験談が心の支えになることも〉
不妊に関する本の中には、医学書のほかに、不妊治療の経験者が自身の体験を綴った体験記もある。似たような悩みを持つ人の体験談を読むことで、不妊と向き合うヒントや心の支えを得られるかもしれない。
(注)体験記は個人の主観に基づいて書かれており、古い情報が載っている場合もある。治療法などは医学書を確認しよう。
『子どもを迎えるまでの物語 生殖、不妊治療、親になる選択』(ベル・ボグス著 石渡悠起子訳 サウザンブックス社 2021)
体外受精を経て子どもを授かった経験を持つ著者が不妊治療に踏み切る決断に至った記録のほか、子どもを迎えないことを選んだ人や養子縁組で家族を迎えた人の声を掲載している。
『あきらめない妊活 キャリアと不妊治療を両立させる方法』(笛吹和代著 みらいパブリッシング 2021)
不妊治療のために退職した経験から不妊カウンセラーとして活動する著者が、体験談を交えながら仕事と治療を両立させるためのポイントを解説している。
《TOBYO図書室》(http://www.tobyo.jp/library/index.php 株式会社イニシアティブ)
インターネット上で公開されている闘病記を集めたウェブサイトである。「不妊症」のカテゴリがあり、性別や年代から絞り込んで表示することもできる。
6 相談窓口や医療機関をさがす
(1)相談窓口をさがす
各都道府県、指定都市、中核市が設置している不妊専門相談センターでは、不妊に悩む方に対し、不妊に関する医学的・専門的な相談や不妊による心の悩み等について、医師・助産師等の専門家が助言したり、診療機関ごとの不妊治療の実施状況などに関する情報提供が行われている。また、埼玉県では、各保健所でも妊娠・不妊など女性の健康に関する相談を行っている。
《厚生労働省》(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000181591.html 厚生労働省)
〈全国の不妊専門相談センター一覧〉
《埼玉県》(https://www.pref.saitama.lg.jp/a0704/boshi/sodan.html 埼玉県)
〈不妊治療・不育症に関する県の相談窓口 埼玉県保健医療部健康長寿課母子保健担当〉
(2)医療機関をさがす
まず、単なる産婦人科ではなく不妊治療の看板を掲げているところを探す。その中でも、不妊カップルが多く通う専門の施設、産科を併設する病院で妊娠から出産までをトータルで診る施設、通いやすさや病院の雰囲気など、人により選択の基準は異なる。男性不妊であれば、治療が必要な時には泌尿器科にかかることになるだろう。相性のいい病院を探す参考に、次のウェブサイトを紹介する。
(注)医療機関を受診される場合は、最新の情報を医療機関に直接問い合わせをすること。
〈生殖補助医療(ART)実施登録施設をさがすには〉
《日本産科婦人科学会》(https://www.jsog.or.jp/facility_program/search_facility.php 日本産科婦人科学会)
〈施設検索 地図から検索〉
日本産科婦人科学会が生殖補助医療を行っている施設(注)の検索ページを公開している。
体外受精・胚移植を行っている施設や顕微授精を行っている施設を都道府県ごとに一覧で表示でき
る。
(注)「生殖補助医療実施医療機関の登録と報告に関する見解」(同学会)により、生殖補助
医療(ART)の実施登録をしている施設である。
〈その他 検索サイト〉
《病院検索ホスピタ》(http://www.hospita.jp/ イーエックス・パートナーズ)
病院・医師・病気などを検索〉と書かれた検索窓に「不妊」と入力すると、その下に
「不妊治療専門外来に対応する病院を検索」や「男性不妊症専門外来に対応する病院を検索」などの
検索候補が表示される。選択すると検索画面に移り、地域や診療日を選択できる。
(3)生殖医療専門医をさがす
《生殖医療専門医 都道府県別一覧》(http://www.jsrm.or.jp/qualification/specialist_list.html 日本生殖医学会)
日本生殖医学会が生殖医療専門医として認めた(注)医師の一覧を公開している。「専攻」欄に産婦人科医・泌尿器科医の別があり、男性の不妊治療をする泌尿器科医が分かる。
(注)「生殖医療従事者資格制度」(同学会)による。
〈その他 検索サイト〉
《日本生殖医学会生殖医療専門医のクリニック・病院一覧 ドクターズ・ファイル》(https://doctorsfile.jp/search/ft89/ ギミック)
ページ右側の〈エリアから探す〉や〈沿線から探す〉を使うと、専門医のいるクリニック・病院を
地域ごとに一覧できる。病院紹介のページには、各病院の特徴や医師への取材記事を掲載している。
《病院検索ホスピタ》(http://www.hospita.jp/ イーエックス・パートナーズ)
〈専門医資格から医師を探す>専門医資格の一覧〉内、産婦人科系の中に生殖医療専門医があり。
選択すると検索画面に移り、専門医がいる病院の地域を選ぶと都道府県ごとに表示できる。
7 妊活・出産・育児情報コーナーのご案内
埼玉県立久喜図書館では、2階公開図書室の健康医療情報コーナー内に「妊活・出産・育児情報コーナー」を常設している。
このコーナーは、性別を問わず幅広い年齢層のに活用されることをめざし、妊娠、出産、不妊治療(男女)、育児に関する入門書から専門書までの図書、雑誌、さらに持ち帰れるパンフレット類を取り揃えている。
- NDC
-
- 婦人科学.産科学 (495 9版)
- 参考資料
- キーワード
-
- 不妊症
- 妊娠
- 生殖補助医療
- 備考
- 登録番号
- 2000028325