調べ方マニュアル詳細
- 調べ方作成日
- 2022年03月09日
- 登録日時
- 2022/03/13 10:48
- 更新日時
- 2022/08/31 16:23
- 管理番号
- 埼久-059
- 調査テーマ
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完成
依存症を知る 埼玉県立久喜図書館 調べ方案内 Milestone no.61
- 調べ方
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■今回のテーマ■
依存症は、本人の意思の弱さや性格の問題だと誤解されがちだが、誰でもなりうる脳の病気のひとつで、生きづらさを抱えた人の病ともいわれいる。自分や周囲の人が依存症になってしまったとき、正しく知って対応するために、基本的な知識から治療法、相談窓口や専門機関などの情報についての調べ方を紹介する。
◆キーワード
依存症 / 嗜癖(アディクション) / 物質依存 / 行動嗜癖 / アルコール依存 / 薬物依存 / ギャンブル障害 / ゲーム障害 / インターネット依存 / 買い物依存 / 食べ物依存 / 窃盗癖 / 自助グループ / 回復施設 / ハームリダクション / 認知行動療法
1 依存症の基礎知識
ある病気について知るためには、まず用語辞典や入門書などで概要を確認する。
(1)依存症とは
ある物質の使用やある種の行為を自らコントロールできず、やめたくてもやめられない状態のこと。物質には、毒物、有害物質、精神作用物質、アルコール、タバコなど、行為には競馬、競輪、パチンコなどが含まれる。国際疾病分類第11回改訂版では「アルコール依存症」「薬物依存症」「ギャンブル障害」「ゲーム障害」が依存症と認められている。
参考:『みんなの精神医学用語辞典』(松下正明著 弘文堂 2009)
《依存症についてもっと知りたい方へ》(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000149274.html 厚生労働省)
《e-learningで学ぼう 依存症の支援》(https://www.ncasa-japan.jp/e-learning/support/01-1.html 依存症対策全国センター)
『精神医学キーワード事典』 (松下正明[ほか]編 中山書店 2011)
現代精神医学の重要な概念や用語を詳しく解説している。依存症については第5章にまとめられている。
『依存症がわかる本 防ぐ、回復を促すためにできること』 (松本俊彦監修 講談社 2021)
依存症の症状やしくみ、回復に向けた取り組みなど、基本的な情報を、イラストを交えてわかりやすく紹介している。
『現代社会の新しい依存症がわかる本 物質依存から行動嗜癖まで』(樋口進編著 日本医事新報社 2018)
アルコール、ギャンブル依存から、食べ物、買い物への依存まで、様々な疾患の概要や治療についてQ&A形式で解説されている。
A より深く知りたい人に
医師や専門家が精神疾患の診療に用いる、2つの国際的な診断基準がある。1つは、米国精神医学会が作成する「DSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)」。もう1つはWHOが公表している「ICD(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)」で、どちらも定期的に見直され、改訂されている。
『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(American Psychiatric Association編 高橋三郎[ほか]監訳 医学書院 2014)
『ICD-10 精神および行動の障害 DCR研究用診断基準 新訂版』(World Health Organization編 中根允文[ほか]訳 医学書院 2008)
(2)依存症についての図書を読む
A 図書館の本の探し方 -キーワードで検索する-
図書館の蔵書検索システムやインターネットで調べる際は、キーワードや用語辞典に掲載されている言葉などを組み合わせて検索を行うと手際よく情報を集めることができる。
B 図書館の棚を見て探す
日本の多くの図書館では、日本十進分類法を用いて本の内容(テーマ)を数字で表している。原則として、この番号の順に本が並んでいるため、分類番号をヒントに棚を探すと関連する様々な本が見つかる。 (例: 〈490〉医学 〈493〉内科学 〈493.7〉神経医学.精神医学)
○薬物
『よくわかる薬物依存 乱用薬物の種類から自分を守る方法まで』 (阿部和穂著 PHP研究所 2017)
子ども向けの内容ですが、薬物乱用による問題の概要をつかめる入門的な図書である。
『誰にでもできる薬物依存症の診かた』 (成瀬暢也著 中外医学社 2017)
依存症治療にあたる人に向けて書かれた本だが、薬物問題の現状や治療法などについてわかりやすく解説されている。
○アルコール
『市民のためのお酒とアルコール依存症を理解するためのガイドライン』(長徹二著[ほか]監修 慧文社 2018)
第1部では飲酒の基礎知識をまとめており、第2部ではアルコール依存症に関するよくある疑問をQ&A形式で紹介している。
『アルコール依存症から抜け出す本』 (樋口進監修 講談社 2018)
アルコール依存の症状や対処法、家族ができることなどを、イラストを交えて解説している。
○ギャンブル
『ギャンブル依存症 当事者から学ぶその真実』(吉岡隆編集 中央法規出版 2019)
当事者と家族、支援者たちのメッセージを通じて、ギャンブル依存症の現状や治療法について学べる。
『ギャンブル依存症から抜け出す本』(樋口進監修 講談社 2019)
わかりやすいイラストとともに、ギャンブル依存症の症状やメカニズム、治療や生活の立て直し方などを解説している。
○その他
『インターネット・ゲーム依存症 ネトゲからスマホまで』 (岡田尊司著 文藝春秋 2014)
ネット・ゲーム依存症の背景や症状、克服法などを取り上げている。
『摂食障害という生き方 その病態と治療』(瀧井正人著 中外医学社 2014)
長年摂食障害治療に携わってきた著者による、経験に基づいた症状や治療法の解説書である。
2 新聞・雑誌記事を探す
最新の情報を得たいときは、新聞記事や雑誌論文を探してみよう。
(1)インターネットで探す
《J-STAGE》(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja 国立研究開発法人科学技術振興機構)
3,000誌以上の科学技術(人文科学・社会科学分野も含む)のジャーナルや会議録等を収録した電子ジャーナルのプラットフォームである。
【検索例】キーワード 〈アルコール依存〉 で検索する。
佐野雪子、巽あさみ著「アルコール依存症者が断酒と就業を両立するプロセス」(『日本地域看護学会誌 22巻2号』p15-24 日本地域看護学会 2019.8)
《CiNii Articles》(https://ci.nii.ac.jp/ 国立情報学研究所)
学協会刊行物・大学研究紀要・国立国会図書館の雑誌記事索引データベースなどの学術論文情報を検索できる。学術論文の書誌情報について、広く調べたい時に便利である。リンク先で公開されているオープンアクセス論文の本文を閲覧することも可能である。
【検索例】 論文検索 〈薬物依存〉 で検索する。
嶋根卓也著「薬物依存症者の理解とサポート」(『法律のひろば 74巻1号』p57-66 ぎょうせい 2021.1)
《PubMed》(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/ 米国国立医学図書館)
世界の主要医学系雑誌の掲載論文を検索することができる、世界最大の医学文献データベースである。(英語)
(2)オンラインデータベースで探す
図書館には図書だけでなく、オンラインデータベースがある。オンラインデータベースとは、ある特定のテーマやジャンルの情報を収集・整理し、オンライン上で検索できるようにしたもののことで、正確かつ専門的な情報を手軽に検索することができる。
《医中誌Web》 (医学中央雑誌刊行会)
国内発行の、医学・歯学・薬学・看護学及び関連分野の定期刊行物、のべ約7,500誌から収録した約1,400万件の論文情報(書誌的事項や一部の抄録など)を検索することができる。収録される文献には「医学用語シソーラス」に基づき主題に沿ったキーワードが付与されており、キーワードを活用すればより精度の高い検索も可能である。
【検索例】 キーワード 〈ゲーム障害〉 で検索する。
大久保善朗著「スポーツ医学 eスポーツの効能と弊害」(『医学のあゆみ 276巻13号』p1194-1195 医歯薬出版 2021.3)
《JDreamIII》 (ジー・サーチ)
科学技術や医学・薬学分野の文献情報を検索できる、日本最大級の科学技術文献データベースである。記事本文をデータベースから見ることはできないが、一部全文リンクがあるものがある。海外文献は、日本語による抄録を掲載している。
《聞蔵IIビジュアル》 (朝日新聞社)
1879(明治12)年からの朝日新聞の記事を、キーワードや発行年月日などから検索・閲覧できる。地方版や、『AERA』、『週刊朝日』、『アサヒグラフ』等も検索することができる。
【検索例】 キーワード 〈ギャンブル障害〉 で検索する。
「(フロントランナー)ギャンブル依存症問題を考える会代表理事・田中紀子さん 「やめる」から「やめ続ける」へ」 『朝日新聞 2018年5月19日 朝刊 週末be 1面』
《毎索》 (毎日新聞社)
1872年創刊号からの毎日新聞の記事を検索・閲覧できるデータベースである。そのほか、『週刊エコノミスト』や英字ニュース等の検索及び閲覧も可能である。
(3)相談窓口・病院を探す
依存症の専門機関を探せるウェブサイトなどを紹介する。掲載内容には変更がある可能性がある。情報の更新日をチェックしたうえで、必ず各機関のウェブサイトにもアクセスして、最新の情報を確認してほしい。
A 埼玉県内の相談窓口・病院
《埼玉県立精神保健福祉センター》(https://www.pref.saitama.lg.jp/soshiki/b0606/ 埼玉県)
埼玉県指定の相談拠点機関である。依存症をはじめとした心の健康問題についての相談を受け付け、状況に応じて他機関の利用を案内する。
《さいたま市こころの健康センター》(https://www.city.saitama.jp/002/001/016/001/p001312.html さいたま市)
依存症などの問題に悩む本人や家族からの相談を受け付けている。(注)さいたま市在住の方対象
《治療拠点機関・専門医療機関(埼玉県)》(https://www.pref.saitama.lg.jp/a0705/seisin/izonsho.html#chiryou 埼玉県)
埼玉県の治療拠点機関「埼玉県立精神医療センター」のほか、依存症の治療を行う指定専門機関を紹介している。
B 全国の医療機関を探す
《全国の相談窓口・医療機関を探す》(https://www.ncasa-japan.jp/you-do/treatment/treatment-map/ 独立行政法人 国立病院機構久里浜医療センター)
厚生労働省の定めた基準を満たした依存症の専門機関を、所在地の都道府県や市町村から検索できる。
C 自助グループ等とつながる
自助グループとは、同じ問題を抱えた人と自発的に、当事者の意志でつながり、結びついた集団のことである。依存症からの回復には、自助グループでの活動が有効であるといわれている。
○薬物
《ナルコティクス・アノニマス日本》(https://najapan.org/ NA日本リージョン・セントラル・オフィス)
1953年にアメリカで誕生した薬物依存症自助グループの日本での窓口機関。12のステップに基づき、メンバーのミーティングを通して回復を支援している。
《NPO法人 埼玉ダルク》 (https://saitama-darc.com/ NPO法人埼玉ダルク)
薬物依存症からの回復を手助けする民間のリハビリテーションセンターである。ダルク(DARC)とは「Drug Addiction Rehabilitation Center」の略で、現在全国で80施設が活動している。
○アルコール
《アルコホーリクス・アノニマス日本》(https://www.aajapan.org/ AA日本ゼネラルサービス)
飲酒問題に苦しむ人たちの自助グループ「Alcoholics Anonymous(アルコホーリクス・アノニマス)」。自身の体験を話しあうミーティングの場を全国に設けている。
《さいたまマック》 (http://www.saitama-mac.com/ さいたまマック)
全国にあるマックグループの施設の1つとして2001年から活動している、埼玉県内初のアルコール専門リハビリテーション施設である。
《埼玉県断酒新生会》 (https://www.saitama-danshu.or.jp/ 埼玉県断酒新生会)
酒害から回復するための自助グループである。県内の各地域で、参加者同士が体験談を話す例会を行っている。
○ギャンブル
《ギャンブラーズ・アノニマス日本》(http://www.gajapan.jp/ GA日本インフォメーションセンター)
ギャンブルを原因とした問題を抱え、自分の力ではコントロールできない「強迫的ギャンブラー」のための自助グループである。
(4)家族、支援者のための情報
依存症は家族を巻き込む病気ともいわれている。当事者だけでなく、家族や周囲の人々に向けたサポートも重要である。
『依存症の人を治療に向かわせるCRAFTの本 家族としての“あり方”“接し方”』(吉田精次監修 大和出版 2021)
依存症患者の家族をサポートする「CRAFT(コミュニティ強化と家族トレーニング)」のプログラムをわかりやすく紹介する一冊である。
『ハームリダクションアプローチ やめさせようとしない依存症治療の実践』(成瀬暢也著 中外医学社 2019)
ハームリダクションの考えを用いた、依存症患者や家族に対する寄り添い方を紹介している。
『薬物依存症の回復支援ハンドブック 援助者,家族,当事者への手引き』(成瀬暢也著 金剛出版 2016)
依存症を取り巻く現状から、実践的な対応方法、実際の症例まで、支援にかかわる人に役立つ情報がまとまっている。
『依存症者を治療につなげる 対人援助職のための初期介入入門』(水沢都加佐著 大月書店 2015)
保健師、看護師、ソーシャルワーカーなどの支援者向けに、依存症患者を治療に向かわせるための「初期介入(インタベンション)」の技法を体系的に解説している。
『親の依存症によって傷ついている子どもたち 物語を通して学ぶ家族への援助』(ジェリー・モー著 水澤都加佐[ほか]訳 星和書店 2017)
依存症患者のいる家庭で育っている子どもたちへの活動を行ってきた著者が、援助の具体的な方法を紹介する一冊である。
『かぞくがのみすぎたら』(リチャード・ラングセン作 ニコール・ルーベル絵 ひさまつのりこ訳 AZホールディングス 2017)
子ども向けに、アルコール依存症の家族への向き合い方を描いた絵本である。
『ボクのことわすれちゃったの? お父さんはアルコール依存症』 (プルスアルハ著 ゆまに書房 2014)
アルコール依存症の親を持つ子どもを描いた絵本とその解説からなり、子どものために、周りの大人がサポートするための情報がまとまっている。
○家族・友人のための自助グループ
《アラノン》(アルコール依存症)(http://www.al-anon.or.jp/ 特定非営利活動法人 アラノン・ジャパン)
《ナラノン》(薬物依存症)(http://nar-anon.jp/ ナラノンジャパン ナショナルサービスオフィス)
《ギャマノン》(ギャンブル依存症)(https://www.gam-anon.jp/ 一般社団法人 ギャマノン日本サービスオフィス)
それぞれの自助グループで、身近な人の依存症に影響を受けている、または、受けてきたと感じている人のために、全国各地でミーティングを開催している。
(5)役立つウェブサイト
《依存症対策全国センター》(https://www.ncasa-japan.jp/ 独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター)
依存症を理解するための情報や治療法、専門機関の紹介、支援者向けの研修情報など、依存症に関する様々な情報を発信するウェブサイトである。
《依存症対策》(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070789.html 厚生労働省)
主な相談先の情報や普及啓発活動、厚生労働省の施策の紹介など、依存症に関する情報がまとまっている。
《こころの健康(埼玉県)》(https://www.pref.saitama.lg.jp/b0606/health/ 埼玉県)
依存症を含む心の病に関する基本的な知識や、治療に関する情報などを紹介している。
《特定非営利活動法人ASK(アスク) (https://www.ask.or.jp/ 特定非営利活動法人ASK)
アルコールをはじめとする依存性薬物や、ギャンブル、インターネット、ゲーム依存などの予防、支援のため、さまざまな情報発信、研修事業を行っている。
- NDC
-
- 内科学 (493 9版)
- 参考資料
- キーワード
-
- 依存
- アルコール中毒
- インターネット依存症
- 病的賭博
- 薬物依存
- 備考
- 登録番号
- 2000027407