レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年07月01日
- 登録日時
- 2022/12/22 10:51
- 更新日時
- 2022/12/22 13:31
- 管理番号
- 市川20220701-03
- 質問
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解決
近松門左衛門の「虚実皮膜の論」とはどのようなものか。
- 回答
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『日本国語大辞典 第四巻』(小学館 2001)p.541「虚実皮膜(きょじつひにく、きょじつひまく)」の項に「(浄瑠璃作者近松門左衛門の芸術論で)芸術は虚構と事実の微妙な間にあるとするもの。穂積以貫の「難波土産-発端」に「近松答曰〈略〉芸といふものは実と虚との皮膜の間にあるもの也〈略〉舞台へ出て芸をせば慰になるべきや。皮膜の間といふが此也。虚にして虚にあらず実にして実にあらずこの間に慰が有たもの也」と紹介され、日本文芸史における虚構論の先駆とされるとの記述あり。
『近松に親しむ』(松平進/著 和泉書院 2001)p.153-156「虚実皮膜論」の項には、「近松自身、系統だてた理論を書き残してはいない。ただ、断片的ではあるが、人に語ったものが、その人により書き留められている。」と記述があり、近松の没後に出版された浄瑠璃注釈書『難波土産』の発端部分がそれであり、近松から直接聞いた自己の演劇観が書き記されているとある。
また、『近松門左衛門』(武井協三/編 ペリカン社1991)p.31「難波みやげ」の項には発端部分が掲載されており、「この近松の文学論、演劇論は近世の芸術論として高い評価をうけ「虚実皮膜論」と通称されている。虚と実の微妙な境目のところにこそ芸の慰みというものがあるのだという、この論は、世阿弥が著した能楽の『花』の論と並ぶ、日本の代表的な演劇芸術論だといえるだろう。」との解説がある。
他に、『近松門左衛門 虚実の慰み』(鳥越文蔵/著 新典社 1991)p.237には、「虚実という考え方が芸能の世界で問題になるのは、近松に始まったことではない。(略)だから芸能における虚実論は近松によって結実したといってよいものであろう。まさに近松の時代(元禄期から享保期の初め)の代表的な芸能論なのである。」との記述があった。
なお、『日本古典文学全集36 芸術論集』(筑摩書房 1962)には、「難波土産発端」が現代語訳で掲載されており、『近松世話浄瑠璃集』(博文館 1928)には「難波土産」の全文が収録されている。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 小説.物語 (913 8版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000326199