レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016/08/16
- 登録日時
- 2016/08/17 00:30
- 更新日時
- 2020/07/01 16:46
- 管理番号
- 1000000858
- 質問
-
解決
沖縄で使われているウチカビ(紙銭)について知りたい。
- 回答
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①
『沖縄大百科事典 上 ア~ク』(沖縄大百科事典刊行事務局、沖縄タイムス社、1983)
p296-297「ウチカビ(打ち紙)」の項で、「紙銭のこと。ンチャビ、アンジカビとも。一般に死後の世界の通貨と信じられ、藁や古畳などを原料に漉いた黄色紙(約30×40cm)に、槌などで叩いて銭型をつけたもの。これを焼いて祖先供養する習俗は中国起源で、台湾・香港にもあるが、奄美にはない。」とある。
②
『目でみる沖縄の民俗とそのルーツ』(窪 徳忠、沖縄出版、1990)
p75-83「八、紙銭」の項で、中国・台湾などでの紙銭等も含めて詳しい記述を確認できる。
その中で、p80-82「沖縄県の人たちは、彼岸やお盆、もしくは祖先のご命日、その他の祀りのときには、必ず紙銭を焼きます。(略)いまは店から買ってきますが、以前は紙を買って、主に子供が家で穴あき銭の型を打つのが一般的だったので、ウチカビなどというわけです。(略)ウチカビをいつごろから使い始めたのか、その時期ははっきりしていません。いわゆる「三十六姓」、いまのクニンダの祖先といわれている人たちが伝えたと説く人もいます。一七三六年にまとめられた『四本堂家礼』には、中国ではむかしから「天下の掟」として定められていたのだから、紙銭(ウチカビ)はぜひ焼かなければいけないとかいてあります。ですから、そのころには中国にならって焼いていたのだろうと思います。(略)法事などで自宅で焼くときには、アルミ製のボールなど、とにかく鉢の上に、網か火箸代用の芭蕉の葉柄などをわたし、その上で焼きます。終ると、そこに酒や茶、または水をかけるようです。」とある。そのほか、ウチカビに関係のある民話の紹介がある。
③
『沖縄民俗辞典』(渡邊 欣雄[ほか]、吉川弘文館、2008)
p244の「しせん 紙銭」の項で、「神や祖先を拝むときに使用する紙幣の模型。清明祭の墓参や盆・年忌などの先祖供養、あるいは御嶽などの聖地や屋敷内で神を拝むときに紙銭を燃やす。(略)ウチカビは、グソーノジン(あの世の金)と考えられ、子孫がウチカビを燃やすことによって、あの世の祖先に金を送ることを意味しているといわれる。(略)この風習は、近世に中国人を始祖とする久米村系士族の間に中国から伝えられ、首里・那覇士族の間で用いられていた。明治以降一般民衆にも普及したと考えられる。現在でも、沖縄本島北部ではウチカビを使わないところがある。」とある。
④
『沖縄しきたり歳時記』(稲福政斉、ボーダーインク、2015)
p42-45「地獄の沙汰も金次第 ウチカビ」の項で、「グソーヌジン(後生の銭、あの世のお金)といわれ、ウヤファーフジ(ご先祖様)があの世でお使いになられるお金とされるウチカビは、二つ折りにした黄色い紙に、沖縄の昔の硬貨であるミーフガージン(鳩目銭)をかたどった、丸の中に正方形を入れた形がいくつも並べて型押しされています。(略)ナンカやニンチなどといった法事で供えるウチカビは、あの世の役場に納める税金となり、年中行事に供えるウチカビは、ウヤファーフジのワタクシ(小遣い)になるという説明は県内各地でよく聞かれます。そのため、法事にウチカビを焼かなければ故人の霊はカミアガイ(神に昇格すること)できず、年中行事にウチカビを焼かなければウヤファーフジは手元不如意になるとは、多くのウミシージャカタ(ご先輩方)のほぼ共通したご見解です。」とある。
⑤
『琉球の死後の世界』(崎原恒新、むぎ社、2005)
p46「3.ウチカビ(冥銭)」の項で、「あの世のお金は冥銭である。沖縄では黄色系の紙に琉球王府時代の硬貨の形を押したものである。打って形をつくるのでウチカビという言い方が多い。それをあの世でも流通するように焼却するのをカビアンジーといっている。」とある。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 年中行事.祭礼 (386)
- 風俗習慣.民俗学.民族学 (38)
- 民間信仰.迷信[俗信] (387)
- 参考資料
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- 1 沖縄大百科事典 上 ア~ク 沖縄大百科事典刊行事務局∥編 沖縄タイムス社 1983.5 K03/O52/1 296-297
- 2 目でみる沖縄の民俗とそのルーツ 窪 徳忠∥著 沖縄出版 1990.9 K382/KU11/ 75-83
- 3 沖縄民俗辞典 渡邊 欣雄∥ほか編 岡野 宣勝∥編 吉川弘文館 2008.7 K38/O52/ 244-245
- 4 沖縄しきたり歳時記 稲福 政斉∥著 ボーダーインク 2015.9 K386/I51 42-45
- 5 琉球の死後の世界 崎原 恒新∥著 むぎ社 2005.1 K38/SA42 46
- キーワード
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- 沖縄
- 年中行事
- 民俗
- 民間信仰
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献調査
- 内容種別
- 郷土 郷土
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000195907