レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年06月04日
- 登録日時
- 2023/05/14 18:44
- 更新日時
- 2024/03/02 12:33
- 管理番号
- 9000038346
- 質問
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解決
「穴切遊郭」について書かれている資料があるか。
- 回答
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「穴切遊郭」は、1907(明治40)年2月新柳町遊郭・増山町の妓楼(福伊藤)から出火し遊郭が全焼したため、仮住居の後、同年11月に、まだ周囲が田であった穴切地区(現宝1丁目)に妓楼を移転したもの。終戦後は連合軍が日本に進駐するにあたり、上野原遊郭とともに進駐軍専用の特殊慰安施設となった。1958(昭和33)年に公娼制度が廃止されるまで存続した。詳細については、参考資料をご確認ください。
- 回答プロセス
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1.自館業務システムでの検索は未ヒット
2.地名辞典を調査
・『角川日本地名大辞典 19 山梨県」(「角川日本地名大辞典」編纂委員会/編 角川書店 1984年)〈資料番号0101389591〉p.101「穴切町(あなぎりちょう)」の項に、「明治40年増山町の遊郭が火災で焼失すると、当町の一部を画して遊郭とし、穴切新地とよんだ、同44年には妓楼21・娼妓200・芸妓30。」と記述。
3.『山梨県史』を確認
・『山梨県史 通史編6 近現代』(山梨県/編集 山梨日日新聞社 2006年)〈資料番号0104149695〉pp.179-180「新柳町遊郭と娼妓」に、甲府の遊郭は1870(明治3)年に増山町と元柳町に飯盛女を移転させて公娼としたことが起源(新柳町遊郭)、1907(明治40)年の火災で全焼したことから穴切に移転し、1958(昭和33)年に公娼制度が廃止されるまで穴切遊郭(穴切新地)として存続したことが記述。その他pp.180-182「廃娼運動と娼妓を取り巻く状況の変化」、pp.182-183「人身売買と娼妓の待遇」に関連記述あり。
4.甲府市の歴史に関する資料を調査
・『甲府市史 通史編 第3巻 近代』(甲府市市史編さん委員会/編 甲府市役所 1990年)〈資料番号0104616016〉pp.322-323「新柳町の遊郭街」に、1907(明治40)年2月9日の大火で新柳町遊郭が消失、移転地は穴切町で、1907(明治40)年6月初めから遊郭地の区画割をして楼閣を着工などの記述。pp.674-675には「公娼廃止運動」の項がある。
・『甲府市史 通史編 第4巻 現代』(甲府市市史編さん委員会/編集 甲府市 1993年)〈資料番号0102585551〉pp.58-61「公娼制度の廃止と女性たち」には、穴切遊郭は占領軍の公娼制度の廃止令により業者組合は解散。当時の遊郭は13件、公的に認められていた娼妓は57人だった、とある。参考文献として『山梨県警察史』とあり。
・『甲府の歴史』(坂本 徳一/著 東洋書院 1982年)〈資料番号0101171536〉pp.291-292戦後アメリカ兵専門の慰安所に、穴切町の遊郭から志願した慰安婦18人を配置とある。
・『甲府市制六十年誌』(甲府市/編・発行 1949年)〈資料番号0101944221〉pp.949-952「花街繁昌記」には新柳遊郭の大火により11月に穴切新地に移ったとの記述。
・『甲府街史』(中丸 真治/共著 山梨日日新聞社出版局 1995年)〈資料番号0103110516〉p.181「穴切町」には、1907(明治40)年増山町の遊郭が消失した翌年穴切新地が誕生。当時、妓楼21軒、娼婦200人、芸妓30人。1932(昭和7)年の記録によると営業戸数21戸、娼婦142人。
5.4『甲府市史 通史編 第4巻 現代』に参考文献として記載のあった『山梨県警察史』を確認
・『山梨県警察史 上巻』(山梨県警察史編さん委員会/編 山梨県警察本部 1978) 〈資料番号0101970937〉pp.792-810「芸娼妓・貸座敷の取締り」に、1907(明治40)年2月9日、増山町の妓楼(福伊藤)から出火して遊郭が全焼、一時三吉町に仮住居のあと、同年11月当時まだあたり一帯田んぼであった穴切地区に指定地を移し妓楼を移転(穴切郭、しんち)。最盛期には貸座敷業者25、娼妓200名、郭内には請願巡査詰所が置かれ常時2名の巡査が配置、娼妓の健康診断にあたる県立相川病院などもあった、とある。
・『山梨県警察史 下巻』(山梨県警察史編さん委員会/編 山梨県警察本部 1979年)〈資料番号0101963643〉pp.337-338「特殊慰安施設の設置」には、終戦後、連合軍が日本に進駐するにあたって、上野原遊廓、甲府では穴切遊廓、竜王村榎地内に進駐軍専用の特殊慰安施設を設けた。pp.831-832「公娼廃止」1946(昭和21)年1月21日、連合国最高司令部が日本政府に対し「公娼廃止に関する覚書」を発し、穴切遊郭も娼妓(接待婦)の借金を棒引きし、組合業者が解散。当時業者13、娼妓57名。
6.商工会議所の周年誌を確認
・『山梨県商工会議所五十年史』(甲府商工会議所/編・発行 1960年)〈資料番号0101998193〉pp.106-109「甲府城址と花街の変遷」あり。
・『甲府商工会議所七十年史』(甲府商工会議所/編・発行 1981年)〈資料番号0101977254〉(参考:p.11「明治の産業経済」「観光」甲府の芸妓ははじめ15人、1870(明治3)年、増山町の遊郭に、旅籠屋の飯盛女とともに廓入りしたなどの記述。)、p.21「大正時代の産業」「観光」遊郭は穴切新地に限られ、貸座敷21軒、娼妓180余人。飲食料理屋の主な名前あり。
・『甲府商工会議所八十年史』(芳賀和夫/編 甲府商工会議所 1990年)〈資料番号0102916202〉pp.187-188甲府芸妓の起こりから穴切遊郭への移転までの概要。
7.その他の郷土資料を確認
・『甲府市の昭和:写真アルバム』(樹林舎 2016年)〈資料番号0106739733〉p.180「かつての色街穴切」(昭和30年代の写真)
・『風雪二十年:山梨の戦後史』(雨宮要七/著 昭和書院 1969年)〈資料番号0102032273〉pp.43-49「女守るに女の犠牲」進駐軍のための特殊慰安施設について
8.一般資料について調査
・『近代庶民生活誌 14 色街・遊郭』(南博/責任編集 三一書房 1993年)〈資料番号0104423652〉収載の『全国遊郭案内』(日本遊覧社編 昭和5年)pp.86-87「山梨県の部」に上野原遊郭と甲府穴切遊郭あり。貸座敷21軒、娼妓178人。費用と一等店、二等店の名称あり。
【2024.3.2追記事項】
・『跫 後編」(詫間準造/著・発行 1981年)〈資料番号0101945145〉pp.41-46「九、遊廓の移り変り」に、穴切遊郭について著者が見聞したことが書かれている。
- 事前調査事項
- NDC
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- 社会.家庭生活の習俗 (384 10版)
- 参考資料
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「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編纂. 角川日本地名大辞典 19 (山梨県). 角川書店, 1984.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001702536-00 , ISBN 4040011902 (p.101) -
山梨県/編集 , 山梨県. 山梨県史 通史編6. 山梨日日新聞社, 2006.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I015487530-00 , ISBN 4897108330 (pp.179-183) -
甲府市市史編さん委員会/編 , 甲府市市史編さん委員会. 甲府市史 通史編 第3巻. 甲府市役所, 1990.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005678083-00 (pp.322-323,pp.674-675) -
甲府市市史編さん委員会/編集 , 甲府市市史編さん委員会. 甲府市史 通史編 第4巻. 甲府市, 1993.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005777881-00 (pp.58-61) -
坂本徳一 著 , 坂本, 徳一, 1926-. 甲府の歴史. 東洋書院, 1982.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001786800-00 (pp.291-292) -
甲府市/編 , 甲府市. 甲府市制六十年誌. 甲府市, 1949.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005732193-00 (pp.949-952) -
中丸真治, 楠裕次 共著 , 中丸, 真治, 1949- , 楠, 裕次, 1924-. 甲府街史. 山梨日日新聞社出版局, 1995.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002552334-00 , ISBN 489710999X (p.181) -
山梨県警察史編さん委員会 編 , 山梨県警察本部. 山梨県警察史 上巻. 山梨県警察本部, 1978.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004382209-00 (pp.792-810) -
山梨県警察史編さん委員会 編 , 山梨県警察本部. 山梨県警察史 下巻. 山梨県警察本部, 1979.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004382205-00 (pp.337-338,pp.831-832) -
山梨県商工会議所. 山梨県商工会議所五十年史. 甲府商工会議所, 1960.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001670965-00 (pp.106-109) -
詫間 準造/著. 跫. 後編. 詫間準造, 1981.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I19111009210178188 ( pp.41-46)
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「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編纂. 角川日本地名大辞典 19 (山梨県). 角川書店, 1984.
- キーワード
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- 穴切遊郭
- 穴切遊廓
- 穴切新地
- 遊郭
- 甲府市
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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穴切遊郭の前の新柳町遊郭(増山町)の遊郭について
・「MUH」Vol.4 1995年4月(早野グループ「MUH」編集室)p・24「かつての遊廓の町増山町」(依田弘)
甲府の遊廓の歴史について
・「山梨日日新聞」2004(平成16)年6月3日12面「山梨茶房18 甲府の遊廓」(石川博)
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000333149