レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2022/06/21 17:43
- 更新日時
- 2022/08/23 12:41
- 管理番号
- 米図20220621
- 質問
-
解決
煮魚の歴史について知りたい。いつの時代から広まったのか、魚をなぜ煮るようになったのか。
- 回答
-
煮魚の起源は縄文時代からあり、「煮る」という料理は調味料や台所道具の変化に応じ、中世以後に普及していったと考えられる。
魚の調理法は魚の種類や地域によっても様々であり、主に1.煮魚の起源 2.調理法別の煮魚料理 3.魚の種類別調理法に分けて調べた。
以下回答プロセスに調査の詳細を記載する。
- 回答プロセス
-
1.煮魚の起源
(1)【資料1】『日本の食文化史 旧石器時代から現代まで』(石毛直道著 岩波書店 2015)8p「土器の使用によって「煮る」調理技術が発達した」とあり、煮物という概念は縄文時代からあったことが考えられる。
(2)「朝日新聞クロスサーチ」(https://xsearch.asahi.com/)でキーワード「煮魚」「縄文」で検索。2015.11.13「火焔型土器で煮魚してた?遊佐で埋蔵文化財公開/山形県」記事がHIT。このほか、「土器」「魚」「世界最古」で検索したところ、2013.4にも魚を煮た痕跡のある土器の発見があったニュースが見つかった。
(3)【資料2】『日本の食文化史年表』(江原 絢子/編,東四柳 祥子/編 吉川弘文館 2011)12p「675年4月17日 天武天皇による「肉食禁止令」発布」とある。
(4)【資料1】70p 「日本人にとってのご馳走は魚となり、魚料理が日本料理の王座を占めるようになったのである。」とあり、675年の肉食禁止令より、魚や野菜が中心の食生活がこの頃から始まったとある。
(5)【資料3】『食の文化史』(大塚滋/著 吉川弘文館 2021) 42p「仏教が盛んになり、優雅な生活が好まれ、平安の王朝が花ひらくにつれて、四つ足の獣を忌みきらい、魚を尊ぶ風潮が日本人の生活に固定してゆく。中略 ただ、奈良朝から平安朝にかけては、都は盆地の中の奈良や京都で海岸から遠く、商業や交通も未発達だったので、海産の鮮魚を口にすることは稀で、ほとんどが塩漬けや干魚として食べられていた。中略 平安朝には調理法も進み、なます、すし、あつもの、あえもの、塩漬け、酢漬け、焼きもの、つつみ焼き、蒸しものなど、現在の日本料理の原型が出揃っていた」とある。
(6)【資料3】94p「古代の貴族の宴会の正式な食事に冷たい料理がおおかったのにたいして、中世になると温かい料理がふえ、鎌倉時代以後の記録には魚や野菜を味噌などで煮た料理の献立がおおくなる。鉄製の鍋、釜が普及するという台所道具の変化に応じて、煮る料理がおおくなったのである。」とある。
(7)【資料3】「アイヌの食生活」162p「魚のなかでもっとも大切なのがサケであり、おおく獲れる時期には主食として食べられ、「神の魚」ともよばれた。直火で焼く、煮るほかに、生食もおこなわれた。」とある。
2.調理法別の煮魚料理
(8)【資料4】『日本古代食事典』(永山久夫/著 東洋書林 1998)272p「煮凝」には、「平安時代の初期に成立した仏教説話集である『日本霊異記』の下巻第十五の「沙弥の乞食するを撃ちて、もって現に悪死の報を得し縁」に「にこごり」が、次のように登場する。中略 『延喜式』にも記載されており、平安時代は高級料理だった」とある。
(9)【資料5】『たべもの起源事典』(岡田 哲∥編 東京堂出版 2003)136p「飴煮」「小魚の保存法として創作されたもの。安土桃山期の天正年間に、豊臣秀吉が陣中見舞として、武将の陣屋に送ったのが始まりとする説がある。その後は、近江商人が各地に広める」とある。また、『同』346Pには「煮貝」の記載もあり、江戸期にアワビを醤油で煮しめたとある。
●『日本料理事物起源』(川上行蔵著 岩波書店 2006)343P「腸煎りの陥穽」に鯉の汁について記述あり。469P「煮凝」、492P「時雨煮」「佃煮」「潮煮」などについて記述あり。
●『日本の食文化4魚と肉』(藤井弘章//編 吉川弘文館 2019) 3p「漁村では魚介の多様な食べ方が発達した。膾・刺身・タタキ・アライ・漬けなどとして生魚を食べてきた。中略 魚のアラやすり身などを使った汁物などもよく食べられてきた。一時的に大量に捕れる魚は一度に食べきれないため、塩漬け・干物・節・かまぼこなどに加工し、保存して食べつくし、周辺地域への販売も行った。」とある。
3.魚の種類別調理法
それぞれの魚によって調理法の歴史も様々で、当館所蔵の法政大学出版局出版「ものと人間の文化史」シリーズより、『鯛』(鈴木 克美∥著 法政大学出版局 1992)、『鱈』(赤羽 正春/著 法政大学出版局 2015)、『鮪』(田辺悟/著 2012)、『鮭・鱒 2』(赤羽 正春∥著 2006)を確認、提供した。この中でも特に『鯛』は調理法の歴史が古代から近代まで詳しく掲載されており、煮つけなどの調理法も特に多く、今回の参考資料として紹介した。
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
- キーワード
-
- 煮魚
- 和食
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 団体 団体
- 登録番号
- 1000317493