レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年09月11日
- 登録日時
- 2021/03/07 14:01
- 更新日時
- 2021/03/18 17:47
- 管理番号
- 県立長野-20-104
- 質問
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解決
善光寺仏が、飯田市の元善光寺から長野市の善光寺へ移転した具体的な理由を知りたい。
- 回答
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麻績郷(飯田市座光寺)から水内郡(長野市)への移転理由に関する資料は確認できなかった。
もともと、文献資料の少ない時代であり、政治の中心地である畿内からも離れた地方であるため、正史などの記録となる文書は残っていないと思われる。少なくとも、今のところ発見、公表されてはいない。
また、「善光寺縁起」と呼ばれているものにも、「扶桑略記(ふそうりゃっき)」の内容を基とする古縁起(最初から水内郡に建立される)と、「伊呂波字類抄(いろはじるいしょう)」に記された麻績(おみ)郷に41年間置かれたのち水内郡に移される系列の縁起があるようだ。どちらも、現地に善光寺が建立されてのち成立した年代の作品と推定されており、作意が含まれていると研究者は見ている。
なお、善光寺縁起の位置づけや先行する論説を集約したものとして、小林敏男著「善光寺草創事情1-3」『大東文化大学紀要』 第34, 36-37号(1996,1998-1999)がある。この1が研究史概観になっており、個々の出典をあたりながら論考している。
飯田市の元善光寺から長野市の善光寺までの移転についての文書や善光寺建立時の文書は、現在の元善光寺側にも善光寺側にも残っていないと思われる。正史にも記録がないため、「善光寺縁起」や寺伝、当時の政治的動き、考古資料から検討がされている状況と思われるが、史実として確定できるものは確認できなかった。
長野県にかかわる事象を古記録から集めた『信濃史料』という叢書があり、この時代では、「扶桑略記」「伊呂波字類抄」などの文献を年代順に編集したものになる。ここに所収されている善光寺仏の渡来、信濃行、善光寺建立とかかわる部分は以下のとおり。長野県立歴史館がアーカイブしているので紹介した。
『信濃史料 第2巻』信濃史料刊行会編・刊 1968 【N208/28a/2】
・欽明一三年一〇月一三日 信濃国善光寺仏、百済より渡来すと伝ふ 【最終確認2021.3.9】
・推古一〇 信濃の人若麻績東人、善光寺如来を信濃国水内郡麻績郷に移すと伝ふ【最終確認2021.3.9】
・皇極元年(642) 若麻績東人、水内郡の宅を改めて草堂となす、善光寺是なりと伝ふ【最終確認2021.3.9】
- 回答プロセス
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1 長野県内の古記録については、『信濃史料』【最終確認2021.3.10】に集約されている。長野県立歴史館がアーカイブしているので、これを「善光寺」で検索する。初期の善光寺物伝来等の史料が巻2にあることがわかる。編年で構成されているため、順を追って見ていく。いずれも、仏の託宣、託宣を受けた天皇の宣旨などとしており、具体的な理由は記されていない。
2 郷土分類N181の書棚で、『善光寺史』『善光寺史研究』などを調べる。『善光寺史』p.9で「国史に記載の欠けていること」「中興(江戸)以前の古資料の乏しいこと」をあげている。
3 元善光寺がある飯田市の『座光寺村史』を調べる。元善光寺は、正式の寺号は座光如来寺とわかる。この項目では、善光寺仏の移転についての記述はなかった。
4 書庫の郷土分類N181の書棚で「善光寺草創事情1-3」『大東文化大学紀要』 第34, 36-37号を調べる。1996年までの研究史が概観できるよう記されているため、これを紹介する。
<調査資料>
・『座光寺村史』 座光寺村誌編纂委員会編 座光寺村誌刊行委員会 1993 【N243/156】
・『下伊那史 第4巻』 下伊那史編纂会編・刊 1961 【N243/18/4】
・『長野県史 通史編 第1巻 原始・古代』 長野県編 長野県史刊行会 1989 【N209/11-4/1】
・『善光寺史研究』 小林計一郎著 信濃毎日新聞社 2000 【N181/194】
・『善光寺史 上』 坂井衡平著 東京美術 1992 (1969年長野市教育会の復刻)【N181/63/1】
・『善光寺縁起絵巻 鎌倉・英勝寺蔵』 倉田邦雄ほか編著 龍鳳書房 2003 【N181/199/7】
・『善光寺建立の謎』 杉山二郎著 信濃毎日新聞 2006 【N181/222】
・『伝説の寺、善光寺』 小林一郎[ほか]編 光竜堂 2009 【N181/242】
・『善光寺の歴史と信仰』 牛山佳幸著 法蔵館2016 【N181/292】
・『善光寺信仰』 長野県立歴史館編・刊 2009 【N181/269】
・『善光寺由来記』 中澤興左衛門編 善光寺保存会 1909 【N181/4】
・『善光寺草創考』 黒坂周平著・刊 1990 【N181/300】
- 事前調査事項
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飯田市上郷考古博物館の学芸員に具体的な理由は不明とのこと。
- NDC
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- 各宗 (188 10版)
- 中部地方 (215 10版)
- 参考資料
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小林 敏男 , 小林 敏男. 善光寺草創事情-1-研究史概観. 1996. 大東文化大学紀要. 人文科学 (34) p. 323~341
https://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I3950745-00 (小林敏男著「善光寺草創事情1-3」『大東文化大学紀要』 第34号(1996)) -
信濃史料刊行会/編 , 信濃史料刊行会. 信濃史料 第2巻. 信濃書籍印刷出版部, 1971.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I004895474-00
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小林 敏男 , 小林 敏男. 善光寺草創事情-1-研究史概観. 1996. 大東文化大学紀要. 人文科学 (34) p. 323~341
- キーワード
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- 善光寺仏
- 元善光寺
- 善光寺
- 本田善光
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000294808