レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017年05月27日
- 登録日時
- 2018/03/15 15:35
- 更新日時
- 2018/09/05 11:36
- 管理番号
- 関大総図 17A-14J
- 質問
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夏目漱石の『明暗』35章に「ドストエヴスキがあたったために、多くの模倣者が続出して、むやみに安っぽくしてしまった」という文章がある。
この時代ドストエフスキーの作品がどのように捉えられていたか知りたい
- 回答
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清水孝純「日本におけるドストエフスキー―大正期に見る紹介・批評の状況」『ロシア・西欧・日本 : 木村彰一教授還暦記念論文集』は、大正初期のドストエフスキーの紹介や批評についての論考です。ここでは、ドストエフスキー像が人道主義的、救世主的イメージへと収斂していき、彼が問題にしたニヒリズムやアンチ・キリストが、文学する人の中にまだ深く沈んでゆくことができず、彼らがこれらの問題を捉えあぐねていたのが実状ではないか、さらに、当時の人権意識の覚醒と共に、愛一元論的な民衆的人道主義的把握がはじまる、と論じています(pp.474-475参照)。また、『明暗』の「高尚な情操をわざと下劣な器に盛って・・・」のくだりについて言及されており、民衆的な理解を感じさせる、としています。
上記を参考するに、大正初期のドストエフスキー読者には、様々な見方や解釈が存在していたようですが、それらが平板なままで発酵せず、必ずしも深い理解には到達していなかったようです。この時代のそのような状況が、『明暗』のくだりに反映されているのではないかと考えられます。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 小説.物語 (913)
- ロシア.ソビエト文学 (980)
- 参考資料
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- 木村彰一編. ロシア・西欧・日本 : 木村彰一教授還暦記念論文集. 朝日出版社, 1976. (当館請求記号 *980.4*R2*1, 当館資料番号 300774842)
- キーワード
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- 夏目, 漱石, 1867-1916
- 『明暗』
- Dostoyevsky, Fyodor, 1821-1881 : ドストエフスキー, フョードル
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 大学院生
- 登録番号
- 1000232557