レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016年03月11日
- 登録日時
- 2016/03/22 11:25
- 更新日時
- 2018/08/31 17:26
- 管理番号
- 県立K2015-299
- 質問
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解決
土佐在来の伝統作物のうち、 「潮江菜」「弘岡カブ」「下知ねぎ」の3品目について、これらの伝統作物が江戸時代から栽培されていたかどうかを調査している。江戸時代からの栽培歴史が判明する文献の有無を調べてほしい
- 回答
-
※ 高知県立図書館・高知市民図書館合築に伴い、資料に関する情報が現在の情報とは異なる場合があります。 ※
<弘岡カブについて>
■『くらしと農業 第6巻1号』
論文「弘岡カブを語る」(P144-145)によれば、明治の終わり頃に栽培されはじめた「トラカブ」が、大正9年ごろに弘岡産業組合の門田益穂氏らによって改良され、「弘岡カブ」として広まったのではといわれているようです。また、この「トラカブ」は「天王寺カブ」や「聖護院カブ」「潮江カブ」などの交雑後代からの選抜であろうとされています。
また、以下の論文には弘岡カブの成立は明治10(1877)年との記述がありました。
■「四国産地の赤かぶ在来種の特性」(近藤 日出男/著 日本作物学会四国支部紀事 (29), 41-42, 1992-12-25)
CiNii Articlesで閲覧可能です(http://ci.nii.ac.jp/naid/110006442282)
<潮江菜について>
■高知新聞記事「方丈の記 その71 「潮江菜」外伝」(2015年1月24日)
この記事によれば、潮江菜のことを方言で「潮江カブ」と呼んでいたそうです。
これはカブとは言うものの根が肥大化せず、葉や茎を食用とするものだそうです。
このことについては、次の資料にも記述があると紹介しています。
■『牧野富太郎博士からの手紙』(武井近三郎/著)
P164「ウシオエカブ」に、牧野富太郎が武井氏に宛てた手紙が掲載されており、
これに「高知潮江で作り居る方言ウシホエカブ」を送ってくれという一文があります。
また、解説にウシオエカブはミズナの変種との記述がありました。
潮江カブと潮江菜を同一視してもいいなら、
以下の文献が江戸時代に潮江菜が栽培されていたことを示すものになるかもしれません。
■「土佐国産往来」(『土佐国群書類従 第11巻』所収)
江戸時代の土佐の産物を列挙したものですが、このうちP254に「新町潮江ノ蕪」とあります。
「土佐国産往来」の成立年代は不明ですが、巻末の解題(P450-451)によれば、
成立時期は元禄年間と推定されるとの記述があります。
<下知ネギについて>
詳しいことがわかる資料は見つかりませんでした。
参考までに、以下の資料をご紹介します。
■「耕耘録」(『日本農書全集 第30巻』所収)
P130-131に掲載されている「虫送」という行事に関する記述の解説で、下知を「ねぎ、かぶなどの城下への野菜の供給地となった」と紹介している一文がありましたが、典拠等は不明です。
■「高知県農業の指針」(高知県立農業学校同窓会 編、大正15年)
P194に「品種-一、九條葱、【中略】二、下知葱、九條葱に似て居れど白根、葉ともに細い、分蘖力最も強く稍濕地に堪へ且つ強健である、葉葱としてよろしい。三、千住葱【後略】」とありました。大正時代には栽培されていたようです。
この資料は国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧可能です。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/919528(117コマ目)
■『稿本 高知市史』
P200に「蔬菜では大正末期頃までは旭方面の薑・草花、潮江の蕪、下知の葱~略~が有名であったが、大戦以来世相の転変に伴い多少の変動を見せて居る」とありました。
このほか、以下の資料にも下知ネギの名称のみ記述がありました。
■『高知の農業』
P97「⑪ネギ」に、「往年は下知ネギ、今は黒潮小ネギが高知市にある」とあるのみでした。
■『高知市誌』
P208「農産物」の項に「(略)潮江の蕪、下知の葱は最も名あり」とあるのみでした。
- 回答プロセス
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<弘岡カブ>
「弘岡」「カブ」のキーワードで自館の蔵書を検索。
→『くらしと農業 第6巻1号』に弘岡カブの生産の歴史についての記事がある。
CiNii Articleで「弘岡」「カブ」で検索。
→「四国産地の赤かぶ在来種の特性」に弘岡カブについての記述がある。
<潮江菜>
「潮江菜」で自館の蔵書を検索。
→「方丈の記 その71 「潮江菜」外伝」が見つかる。この記事の内容から、以下の資料を確認。
→『牧野富太郎博士からの手紙』
上記の2点の資料から、「潮江菜=潮江カブ」の可能性もあることを踏まえて、以下の史料集を調査した。
→『土佐国群書類従 第11巻』のうち「土佐国産往来」に「新町潮江ノ蕪」の記述がある。また、巻末の解題で史料の成立年代を確認した。
<下知ネギ>
「下知」「ネギ」のキーワードで検索したが、自館の蔵書には見つからない。
郷土資料のうち、農業関係の資料を調査した。
→「耕耘録」(『日本農書全集 第30巻』所収)のうち、P130-131に掲載されている「虫送」という行事に関する記述の解説で、下知を「ねぎ、かぶなどの城下への野菜の供給地となった」と紹介している一文があるのを確認。しかし、典拠等は分からない。
→『高知の農業』のP97「⑪ネギ」に、「往年は下知ネギ、今は黒潮小ネギが高知市にある」とだけある。
市町村史の産業関係の部分を調査した。
→『稿本 高知市史』のP200に「下知ネギ」の名称が出てくる。
→『高知市誌』のP208「農産物」の項に「(略)潮江の蕪、下知の葱は最も名あり」とだけある。
インターネット上の資料を調査した。
→CiNii Articles、JAIRO、J-STAGE等で「下知」「ネギ」のキーワードで検索するが見つからない。
→「国立国会図書館サーチ」で「下知」「ネギ」で検索したが見つからない。「高知県」「農業」で検索したところ、「高知県農業の指針」を発見。117コマ目に「下知葱」が見つかった。
- 事前調査事項
- NDC
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- 食用作物 (616 9版)
- 参考資料
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- 『くらしと農業 21号~24号』(中内 康夫/編 高知県農業改良普及協会/発行 1992.1~1992.10)
- 「四国産地の赤かぶ在来種の特性」(近藤 日出男/著 日本作物学会四国支部紀事 (29), 41-42, 1992-12-25)
- 高知新聞記事「方丈の記 その71 「潮江菜」外伝」(2015年1月24日付朝刊)
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武井近三郎 著 , 武井, 近三郎, 1911-. 牧野富太郎博士からの手紙. 高知新聞社, 1992. (Koshin books)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002222780-00 -
[吉村春峰/編] , 高知県立図書館/編,高知県立図書館/編. 土佐國群書類從 第11巻 教訓部 釋家部 雜部. 高知県立図書館, 2009.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I066339073-00 -
日本農書全集 第30巻. 農山漁村文化協会, 1982.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001598329-00 - 『高知県農業の指針』(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/919528)
- 『高知市史 稿本』(重松 実男/著 高知市役所/発行 1957年)
-
山岡浩 著 , 山岡, 浩, 1927-. 高知の農業. 高知市文化振興事業団, 1997.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002718226-00 - 『高知市誌』(高知市/編 高知市役所/発行 1926年)
- キーワード
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- 伝統野菜
- 蔬菜
- 下知ネギ
- 潮江菜
- 潮江カブ
- 弘岡カブ
- 農業
- 高知
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000189691