レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015年07月22日
- 登録日時
- 2015/12/25 17:43
- 更新日時
- 2015/12/25 17:43
- 管理番号
- tr396
- 質問
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解決
古文献に登場する二荒山神社を指す言葉について、宇都宮二荒山神社と日光二荒山神社のどちらを指しているのか。
- 回答
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二荒山神社に関して、『続日本後紀』(836年)に「二荒神」とあり、『延喜式神名帳』(927年)には「二荒山神社」とあります。
しかし、これら平安期の史料に登場する神社が宇都宮と日光のどちらを指しているのかについては、不明とされています。
なお、『続日本後紀』は『国史大辭典 7』(国史大辞典編集委員会/編 吉川弘文館 1986)p.678-679「しょくにほんこうき 続日本後紀」に、『延喜式神名帳』は『國史大辭典 2』(国史大辞典編集委員会/編 吉川弘文館 1980)p.389「えんぎしき 延喜式」に説明があります。
・『角川日本地名大辞典 9 栃木県』(「角川日本地名大辞典」編纂委員会/編 角川書店 1984)
p.792-794に「ふたあらやまじんじゃ 二荒山神社<宇都宮市>」の項があります。
『続日本後紀』を含む複数の史料にある「二荒神」「二荒山神社」を紹介した後に、次の記述があります(p.792)。
「これらは平安期の史料上に表れる「二荒神」「二荒山神社」が当社と日光二荒山神社のいずれに当たるかについては、明治初期を中心として近世から現代まで論争が行われているが、現状では確定することは困難である。」
p.794-796「ふたらさんじんじゃ 二荒山神社<日光市>」の項においても、『続日本後記』等、宇都宮市の二荒山神社の項で紹介された史料を挙げています。
以下、「「二荒神」という言葉が初めて登場する『続日本後紀』(836年)に関する資料」「『延喜式神名帳』(927年)に登場する「二荒山神社」に関する資料」「その他、宇都宮と日光の二荒山神社に関する資料」をご紹介します。
1 『続日本後紀』に登場する「二荒神」に関する記述
・『宇都宮市史 第3巻 中世通史編』(宇都宮市史編さん委員会/編 宇都宮市 1981)
p.6-7「文献上の二荒山神社」に次の記述があります。
「文献においてこの奉斎するところの二荒山神社が初めて見出されるのは次の記事である。
下野国、従五位上勲四等二荒神に、正五位下を授け奉る。
(『続日本後紀』承和三(八三六)・十二・二五 原漢文)」
・『下野国誌 校訂増補』(河野守弘/著,佐藤行哉/校訂 下野新聞社 1989)
宇都宮の二荒山神社に関する項で、『続日本後紀』の記述について次のとおり考察しています(p.143-153)。
「加階のことは、日光権現のことならんと云う人もあるべけれども、日光権現は、既に弘仁元年(八一〇)正一位勲一等に進みしよし、〔日光山三月会記〕に記したれば、承和三年より、廿七年以前に正一位に進みし権現に、此時従五位上の加階のあるべきはづなし。」(p.148)
・『日光市史 上巻(考古・古代・中世)』(日光市史編さん委員会/編 日光市 1979)
p.842に「二荒山の神に対する叙位の記事が、歴史にあらわれるのは(略)承和三年(八三六)十二月二十三日の『続日本後紀』の記事が初めである。」とあります。
p.842-843に、『満願寺三月会日記』の内容から『続日本後紀』の二荒山神社は宇都宮を指すという考え方について、「この書物の内容は、信憑性に欠ける内容だといえよう」(※「この書物」とは、『満願寺三月会日記』を指しています。)と否定しています。
2 『延喜式神名帳』に登場する「二荒山神社」に関する記述
・『宇都宮市史 第3巻 中世通史編』(再掲)
p.11-12「延喜式内社」に次の記述があります。
「『延喜式神名帳』に「河内郡一座大 二荒山神社 大名神」とあり、これを日光山とするか、宇都宮とするかが議論された。(略)しかしながら『延喜式』には二荒山神社を「河内郡」と明記しており、日光とは祭神も異なると伝えられていて、宇都宮二荒山神社が日光の下の宮の地位にあるものではなく、もともと別のものであることは明瞭であり、式内社を宇都宮とするほうが穏当であろうか。」
・『日光市史 上巻(考古・古代・中世)』(再掲)
p.841に『延喜式神名帳』に関して次の記述があります。
「この二荒山神社がどちらを指すか、後世の郡境をそのまま平安時代中期に当てはめてしまってよいかどうかの疑問もあるので、不明という外はない。」
3 その他、宇都宮と日光の二荒山神社に関する記述
・『日光市史 上巻(考古・古代・中世)』(再掲)
p.834-847「二荒山神社の起源」の項があります。
・『栃木縣史 第3巻(神社編)』(田代善吉/著 臨川書店 1972)
下野史談会昭和9年刊の複製資料です。
p.63-84に「宇都宮二荒山神社」、p.102-109「日光二荒山神社」の項があります。
なお、この資料では『延喜式神名帳』に登場する「二荒山神」は「宇都宮」としています。(p.60)
・『下野国誌 校訂増補』(再掲)
p.139-140に「満願大権現」(二荒山神社、日光市)、p.143-153に「二荒山神社」(宇都宮市)の項があります。
・『栃木県神社誌 神乃森 人の道』(栃木県神社庁/編、発行 2006)
p.166-179に「二荒山神社(宇都宮)」 p.153-165に「二荒山神社(日光)」の章があります。いずれの神社も「由緒沿革」に「続日本後紀」をあげています。
・『宇都宮二荒山神社誌 通史編』(雨宮義人/著,宇都宮二荒山神社/編 1990)
p.42-48に「第二節 加階の記録と延喜式内社」があります。
・『二荒山神社考』(雨宮義人/著 三恵出版貿易 1973)
「第一章 日光山古文書考」に「第一節 二荒神」があります。(p.1-2)宇都宮の二荒神についても若干の記述があります。
その他確認した資料は以下のとおりです。
・『栃木県大百科事典』(栃木県大百科事典刊行会/編、発行 1980)
・『二荒山神社』(二荒山神社社務所/著 1917)
・『日光二荒山神社』(日光二荒山神社/編 1982)
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 神社.神職 (175)
- 参考資料
- キーワード
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- 二荒山神社
- 栃木県
- 起源
- 日光
- 宇都宮
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000186285