■『徳川将軍幕府時代 刑罰図譜』
鈴木鶴子著『江藤新平と明治維新』194頁によれば、明治初頭の監獄は、
「それまでの監獄は、幕府の牢屋をうけついだもので、一度投獄され
れば生きながらえてこの世の地獄に落ちたも同然とされていた。幕
府の牢屋にも「牢役人」の規定があり、石出帯刀という世襲の牢奉
行のもとに牢屋同心と下男がいた。しかしいずれも極めて薄給であ
ったため、いつしか牢内の綱紀がゆるみ、牢内独特の奇妙な自治
の世界が現出した。」
という有様であった。その有様を伝える資料として、神奈川大学図書館では
『徳川将軍幕府時代 刑罰図譜』([出版地不明] : [出版者不明] , 1893)
を所蔵している。絵図には全て英語の解説が付いている。
形態は敢えて“折本”の形を取っている。
西洋を意識したためだろうか。
この資料を開くと“第九世 山田淺右衛門”と“江戸囚獄奉行第九世 石出帯刀直胤”
がそれぞれ文章を寄せており興味深い。
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文面は関連画像参照のこと
■『明治百話』
篠田鉱造著『明治百話』(東京,岩波書店,1996.7-1996.8)は『幕末百話』
の姉妹篇で、古老旧知親懇者から実話を聴取して編纂されたものである。この
冒頭に“首切浅右衛門”こと八世山田浅右衛門吉亮(よしふさ)の話が収録さ
れており、『徳川将軍幕府時代 刑罰図譜』に掲載されている九世浅右衛門
の文章と対比させて読むことで、家業に対する考え方がまるで異なることが
分かり、江戸から明治へと急激に変化する時代が、そこに生きる人々にも大
きな影響を与えていたことが分かる。